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駆け出しエンジニアブーム時の未経験・微経験フリーランスのその後と、エージェントの異変

「契約したフリーランスの単価がスキル見合いしない」というご相談を多くいただくようになっています。私自身も顧客先で業務を任せられるフリーランスを探しているのですが、どうにも違和感が確認されましたので整理していきます。

月単価が80-100万円程度と高単価な一方、自分一人ではプログラミング上の問題解決をできない(自走できない)フリーランスエンジニアが多数見受けられます。実装上で詰まった際の解決方法として「MENTAを利用」と話す方も居られます。入場後のトラブルとなり、1-3ヶ月の短期退場に繋がっています。そのため、スキルシートが経験年数の割に非常に長い傾向があります。

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フリーランスエージェントからの紹介が厳しい

過去には下記のようなnoteを記しましたが、未経験・微経験エンジニアが目立つようになり、より状況が悪化している印象です。現在起きていることを整理していきます。

スキルに対して単価が高い

2018-2020年に起きたプログラミングスクールの過激なLPにより、未経験ながらもフリーランスを目指す人たちがまとまって流れ込みました。この頃はプログラミングスクールが過激なLPを展開しており、プログラマになろう系の情報商材が拡がりました。そこで出てきたのが「Web系フリーランスでイッセンマン」です。この界隈は年収と年商を混同して扱うことが多いのですが、月単価を自由に決定できるが故に月単価が90-100万円だったりします。ここにエージェントフィーが載ります。

面談では誰の意見を信じてエンジニアになったのか、どこのプログラミングスクールに通っていたかを頑なに言わないように対策されているケースもあります。相応のパフォーマンスがあれば別に構わないのですが、どうにも自走できずジュニアの範疇を出ないケースが非常に多いです。スキルに対して単価が見合わないため、お見送りになります。

週3日程度の案件を探している

そこで起きているのが週3日などの稼働です。稼働時間は減りますが、発注者側の金銭的なインパクトは下がるのでコミュニケーション力が高かったり、事業共感がなされるなどのスキル以外の項目があると契約する企業があります。

週2日だとプログラマーでは何もできないため週3日であれば契約に至ることがあります。フリーランスエージェントから提示された条件をよく見ると「フルリモート必須」とした上で、「MTG以外はフレックスで働きます」「土日も稼働します」と書かれていたりします。

発注者からすると本当に週3日分働くのかという確からしさは稼働報告書を拠り所にするしかないのでリスクがあります。実際のトラブル事例の多くは「合意して居たようなアウトプットが見られない」というものですが、契約書上の確保工数があるので発注者側は支払わざるを得ないことが殆どです。

フリーランスエージェントとしても、週5日稼働より週3日案件を2本、合計週6日で稼働してくれた方が実入りが良いため、発注者側にフルリモートやフレックス、週3日稼働といった条件緩和を迫ります。

市場に溢れるフリーランスイメージ

単価が高くても戦力として長期案件に関われれば結構なことですが、バリューが伴わないと短期終了を繰り返すことになります。上図のように週3日の案件のみ契約できたものの、実入りが少ない人も居られます。

事業共感に関する主張が正社員候補者より高いものの、求めているのはそこじゃない

面談をしていると見られるのですが、フリーランスから現場に対する質問の際に技術的なことではなく、事業共感に関するものが見られます。正社員の候補者よりもしっかりと会社や事業のことを調べています。面接官を始めて12年目ですが、感動するほど事業について調べて来られる方も居られます。

しかしエンジニアのような専門性が求められる業種のフリーランスは、手練れの傭兵のようなところを期待されます。事業共感は無いよりは良いことなのですが、あくまでもフリーランスについてはオプショナルです。

業務委託の面談での振る舞いについて何かしらの情報商材を見たのではないかと勘繰っているのですが、それよりはスキルを磨いていただきたいところです。正社員面接に臨まれる場合は非常にお勧めできます。

国外に住んでいるが日本の案件を探している

「いつでもどこでも働ける」を体現した結果、海外に住んでおられる方が居られます。永住権の取りやすさから選んだと思われるカナダなどに住まわれているケースがあります。

為替の都合もあって日本円で仕事を貰いたいという気持ちは理解しかねますが、スキルレベルによっては色々と邪推してしまいます。

発注企業としては、セキュリティ事故があった時の管轄国の法律問題と、時差の都合で優先的に契約されることはまずありません。

ビッグネームなスタートアップでの就業経験はあるが、日本語コミュニケーションはできない海外籍

個人的にはフィリピン開発拠点のEMをやっていたこともあり、海外人材との協業は非常に思い入れがある項目です。積極的に取り組んで頂きたいということですが、実態としてはかなり雑な現場が多いので悪戯にお勧めはできません。

エンジニア不足のため、楽天などに倣って海外籍に入社してもらうスタートアップが多く見られました。きちんとコミュニケーションを取って戦力化しているところもあれば、社内に日本語が溢れており、英語話者も居ないので浮いている人材も居ます。よく聞くトラブルは「インド人は数学ができる」「インド人はプログラミングが凄い」という謎のステレオタイプな理由でインド人採用戦略を打ち出し、実行するケースです。間には意識の低い人材紹介も確認されており、実に香ばしいです。上場済み企業も含めて何社かが散っていきました。

こうした流れに伴って来日した海外人材がフリーランスにも流れてきています。レジュメ上はビッグネームの正社員だらけなので目を引きますが、上記のような経緯があるのでハロー効果を差し引いて注意深く面談する必要があります。場合によっては社内で英語コミュニケーションができる方を巻き込んで、一緒に仕事ができそうかのジャッジも必要でしょう。

もっとも、「社内は日本語なので日本語話者のみ」という条件を伝達した上でこうした片言の人材を紹介してくるケースもあり、単純にフリーランスエージェントが面談したのか疑わしい話でもあります。

人材紹介に流れていく未経験・微経験フリーランス

決まらなすぎるフリーランスの場合、フリーランスエージェント部門から人材紹介部門へと流れていることが確認できました。現在ジュニア層であっても積極採用中となると、大手SESやSIerへの紹介に繋がっているようです。偏った情報でSIerやSESを敵視する人たちも居る層なので、あれだけ嫌ったSESに着地するのは随分と皮肉な着地だなと思うばかりです。SESも会社を選べば悪くないですよ。

持続可能なキャリア形成を

特定の年収を目標に業務を頑張るのは結構なことですが、中長期的なキャリアを想定するべきです。

週3日の案件を終了して週5日で案件を取り直したり、正社員に回帰して改めてスキルを培うことも検討することをお勧めします。短期の案件が続いていたり、一社目がフリーランスになることを目的に3カ月~2年弱で退職していると「どうせ長く続かないだろう」という色眼鏡と戦わねばなりません。数年先を見据えてしっかり残ってください。

意識の低いフリーランスエージェント

特に免許も不要で気軽に始められることから新興のフリーランスエージェントも増加しています。

自社で正社員エンジニアを抱えているSESの場合、彼らをアベイラブル(待機・案件未アサイン)にすると売上も粗利も悪影響になるため必死に営業する傾向にあります。しかしフリーランスエージェントでは、自社に正社員という在庫がないため、営業職が売上を上げる以上の必死さはありません。勢い、プログラミング言語のキーワードマッチと、経験年数、年齢あたりのデータベース検索クエリを作成しては、ヒットする人を適当に企業に紹介するだけのため、雑さが目立ちます。エンジニア界隈の事情について学ぶ姿勢のある方も少ないです。

こうした傾向は自社に正社員エンジニアを抱えておらずBP(ビジネスパートナー)を頼って案件の紹介マージンだけ頂くタイプのSES企業でも同様の問題が見られます。いずれの場合も、エージェントの介在価値を考えると不健康な業態だなと感じています。

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