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【小説】 翡翠の御石

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記事一覧

翡翠の御石 (第23話 最終話)翡翠の合わせ鏡

試しに。姫は、旅商人から貰った 更紗眼鏡の筒をコジ開け、 翡翠や貝や金銀を、入れてみる。 …

負手勝世
4年前
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翡翠の御石 (第22話)石の御相手

石は... 石のまま、其処《そこ》に在る。 のが、ありがたい。 あるがままで、変わらない。 …

負手勝世
4年前
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翡翠の御石 (第21話)絵筆色の翡翠

翡翠石の色は、白、緑、紫、青、黒。 古い翡翠《いし》になると、茶、などの種類《イロ》があ…

負手勝世
4年前
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翡翠の御石 (第20話)ニカワを創る

岩絵具は砂状、粉状なので、 そのままでは、筆や紙からサラサラ、さらりと零《こぼ》れ落ちて…

負手勝世
4年前
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翡翠の御石 (第19話)こころ絵具

自分自身の心の具合や、動きですら、 よく解らない、のに。 他者の。 しかも、ころころ移り変…

負手勝世
4年前
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翡翠の御石 (第18話)強欲の味

そういえば ―― 昔、幼い姫が、石の種を植え、育てだした頃。 周囲は、大笑いの種にし、誰も…

負手勝世
4年前
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翡翠の御石 (第17話)雀の渦

周囲の者達を放っておく、と。 たちどころに。 やれ、襖や屏風に翡翠で絵を描けば 「高値で売れる」だとか、 どうにか転写の技を得て 「大量にこう、刷れないものか」だとか。 手の空いてる者達を集め、「大勢に模写させよう」だとか。 翡翠の岩絵具ともなると、「高値で取引される」だとか。 「江戸や大坂、京で売ろう」だとか。 「財政難の御救い」だとか。 雀のように群がっては、おのおの、それぞれに、 好き勝手な持論《こえ》で、チュンチュチュチュンと鳴いている。 皆、嬉しそうだし、楽

翡翠の御石 (第16話)評価の身勝手

姫が、翡翠石を砕き始めた当初 ―― 城の者達は、 「大切な石を」 「わざわざ砕いてまで」 「…

負手勝世
4年前
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翡翠の御石 (第15話)石の旅

何も考えず。考えない。 誰からも、うるさい事を言われず。 一言も指示されず。 世界に打ち込…

負手勝世
4年前
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翡翠の御石 (第14話)咲く石

翡翠石を、叩き、割り、砕き。 磨《す》り、潰す。 時には粗く、時には細かく。 石の個性に合…

負手勝世
4年前
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翡翠の御石 (第13話)失った先

あれから ―― 星々と月と陽が、更紗眼鏡のように幾度も ゴロゴロと晄り。好き勝手に廻ってい…

負手勝世
4年前
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翡翠の御石 (第12話)鏡の筒

いよいよ、別れの気配。 別れの刻。 姫は、大切にしている翡翠石を、 旅商人に手渡しながら..…

負手勝世
4年前
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翡翠の御石 (第11話)翡翠鉢

旅商人が藩に滞在している間 ―― 姫は、旅商人に懐き。 旅商人も、姫に懐いた。 姫は、何度…

負手勝世
4年前
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翡翠の御石 (第10話)粘って探して

半日近く ―― 頑張って、探したものの。 翡翠石は見つからなかった。 陽も暮れ始め ―― 供の者が、 「そろそろ、戻りましょう」 などと真顔で言い出したので。 姫は、 「見つかるのに」 「ホントは、すぐ、見つかるのに」 と、悔しさのあまり、旅商人を前にして、泣いてしまった。 ブワッと溢れた涙の滝が、塩辛く頬を滴り落ちる。 本当に、すぐ見つかるのに。 湿った鼻をズズズビッと啜る。