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畑の冷泉

(畑の冷泉とは、福岡県豊(ぶ)前市にあり、九州3名水に数えられる)
食堂をしたいと思った私は、福岡県豊前の農家が出したメッセージに目を止める。
「ここは、湧き水のある過疎の村です。近くの食堂が春でやめることになりました。そこで、誰か食堂をしたい人はいませんか?」といいうものだった。
ただ、そのメッセージは、〈田植えの手伝いを求む!〉の募集に添えられたものだった。
しばらく考えて、5月30日から6月10日まで手伝いにいくことにした。田植えは、一つ一つ手植えだった。
印の付いた棒を持ちながら、均等の幅で植えていく。田んぼは、足に吸い付くようにして私の動きを封じた。雨の中田植えをしたが、太陽光で温まったシャワーのお湯はぬるかった。食事は、米と野菜と鹿肉を家族で分け合って食べた。田んぼに川から注ぐ水の音とカエルの鳴き声を聴きながら田んぼの小屋で夜を一人で過ごした。
募集の食堂は、広く設備も整っていた。とりあえずは土曜だけ
店を開ける計画が進んでいた。農家の奥さんが食堂のことで私に助けを求める一方で、農家の長はハッキリしない様子だった。その様子や発する言葉の端々から彼はきっと自分の奥さんに食堂をして欲しいのだろうと推測した。ボランティアでの滞在で、私はこれ以上の関わりを考える事ができなくなった。
息をのむ辛さは、もういらない! 成り行きで物事が運ぶ軽さがいい。
私は、心が喜ぶ場所を見つけようと畑の冷泉をあとにした。
                          2018年5/31~6/10

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