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めんどくさい人

窓の外にはイルミネーション、そういう季節だ。全面ガラス張りのビストロからはタワーマンションに灯る窓の光をバックに街路樹のライトアップが重なり、さながら天の川を見ているようだった。眺めの良い席を譲ってくれた男子ふたりにお礼を言いつつ、冬生まれの嬉しさを噛みしめる。街全体が、お祝いしてくれているみたいだ。

スパークリングのロゼから始まった時間は白から赤へと移り、夜は更ける。サーモンのカルパッチョにかかっているのはレモンかすだちか。柚子だったら皮がのっているはずだろうね。烏賊をどう使えばこういう食感になるのかな。アヒージョに茄子が入っているっておもしろいね。話題は尽きない。低温調理に話が及ぶと、イルミネーションをバックにしたふたりが「あかりさんも、俺たちと同じでめんどくさい人だ」と笑った。黙って食べてもいいものを、これまで自分が栄養にした記憶とともにとことん、語り合いたい人たち。それが楽しいと思えちゃう人たち。なんてポジティブな「めんどくさい」なんだろう。

占いを生業にしていると「未来は決まっている、そして占い師はそれを読むことができる」と思われがちだ。でも、未来は意外なほど、選ぶことができる。好きなものを好きと言って、嬉しいことを嬉しいと言って、そうできるように物事を選択していくことで、世界はちゃんと応えてくれるのだ。たとえいろいろな人から「めんどくさい」と言われるようなことであっても「好き」を貫けば、めんどくさい勢が自然に集まってとても豊かな時間になる。私たちのように、めんどくさい自分たちがちょっと誇りに思えるほどに。

食べて笑って酔っ払って、じゃあねありがとうねと手を振って、家路につきつつ考える。私は今まで、どれほどの「めんどくさくないこと」を自分に強いてきたんだろう。「いじめられないように」「人の迷惑にならないように」と自分をセーブしながら、言いたいことや好きなことをぎゅっと押し込めてきた。過去を振り返っても詮無いことだ、後悔しても意味がないことだ。私ができることは、これからを作ることだけ。そして自分が好きなことと「俺たちと同じでめんどくさい人だ」と笑ってくれるような人との関係を、守ることなのだろうと思う。

12月、紅葉した桜の葉が風に舞う、風はつめたく頬をさす。でもこういう夜は、ぜんぜん寒くは感じないのだよね。


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