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回想カブトムシ〜カブ太のこと


前回の記事
→回想カブトムシ〜出会いは突然に
https://note.com/maki_nagayama/n/n1978c7caa100

カブトムシたちがいなくなり
土を片付けようとすると
息子が何か見つけた。

「お母さん、白いちいさい虫がいる!」

見ると、
長さ1㎝、幅0.5㎝くらいの
カブトムシの幼虫が4匹。

「あら、いつのまにか赤ちゃん産んだんやね」

・・・ヤダ、
・・・どうしよう
・・・めっちゃ可愛い

一年前なら恐怖の対象だったかもしれない。
可愛いと思える自分の変化に驚いた。

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(息子が描いた、カブトムシのオスとメスと赤ちゃんたちの絵
※実際はこんなに産んでません)

その後、
幼虫たちはもりもり土をたべ
小指サイズから親指サイズに、
最終的には
長さ8㎝、幅2.5㎝ぐらい大きさに育った。

その中の1匹だけ、やたらとケースの天井を
カリカリと引っ掻く幼虫がいた。

土の中の環境が悪いのかしら?
しかし、他の幼虫は普通にしている。

土を綺麗にしてやったり
水分を調整したり
色々ためしたが
それでも上にあがってカリカリしている。

まるで出たがっているみたいに。

好奇心旺盛なのかな。
あ、このこの父親はあの激しいオスのカブトムシだな、きっと。

息子はこの幼虫を『カブ太』と名付けた。

カブ太は一番はじめに蛹になり、
羽化する瞬間まで見せてくれた。

そして、2020年6月7日の深夜23時15分。

虫かごからカリカリと懐かしい音がする。
カブ太が立派な成虫となって、土の上に出てきたのだった!

私は興奮した。
嬉しかった。

「カブ太、よう出てきたね」

私はすでに用意してあったおがくずを
臨時の昆虫ケースに入れ、カブ太を入れてやり
しばらく話しかけた。
(夫はこの時、私が誰かと長電話していると思ったようだ)

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勝手に母の気分だった。

しかしカブ太はあまり動かない。
餌をあげても動かない。

あたらしい世界に出て来たばかりで疲れたのかもしれない。

時計を見るともう深夜1時をまわろうとしている。
もういいかげん寝ることにした。

床に就きしばらくすると
なにやら廊下のほうに気配を感じた。

寝ぼけながら音のする方に向かうと
床に黒い何かが!!!(わたくし視力0.05)

「マぁ”ぁぁぁぁーーーーーーーーッッッ!!!」(低音で)


今まで聞いたこともない
叫び声が出た。

なんと
カブ太が
二層式の虫かごをぶちやぶり
床を歩いているではないか・・・!!!

わたしの気配に気づくと
ものすごい羽音で飛び始めた。

ぶうううううんと
ゆっくり宙に浮かぶカブ太を見て
腰を抜かし
声にならない声で夫を呼んだ。

すると夫は何ごとかと
部屋から出てきてくれたが、
カブ太を見ると「あらら、出てきちゃったの〜」と
いたって冷静だった。

夫はカブ太を連れ出そうとするが
ものすごい力でへばりついているようで壁からはがれない。
「なんてすごい力なんだ・・」
としばらくやりあっていた。

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(天井まで這い上がるカブ太)

数分後なんとか虫カゴへ・・・

わたしはその様を
腰を抜かしたまま
ただ見守ることしかできなかった・・・

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母の気分などと
軽々しく言った自分を
恥じた

自然界は私が考えているよりも
もっと壮大でたくましいものでありました

その後、
カブ太はカゴを出て
もしや私に会いにきてくれたのでは?
と考えると
全然眠れなくなってしまい

しまいには
カフカの『変身』などを読み始める始末・・


カブトムシとの旅は
まだまだ続きそうだ


つづく

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