見出し画像

British Hillsが引き出す、子どもたちの本気

私立小学校で英語を教えていた頃、British Hillsでの宿泊学習を導入した。そのことについては以前、記事にしたのだが、自分のなかでいろいろな選択肢のなかからBritish Hillsを選ぶ理由を、改めて言語化しようと思う。それは「British Hillsは、子どもたちを本気にさせた。」という事実だ。

以前の記事はこちら。

わたしが小学生のEnglish Campで子どもたちに得させたいと思っていたのは、How toではなく、子どもたちが本気で英語を使おうとするmindを引き出すことだった、と考える。

その目的に適っていたのがBritish Hillsだった。

事前学習のときから、「スタッフの方々は英語しか話さない」「通貨も円は使えず、British Hills Pondに両替の必要がある(本当はどちらも使えるけど)」など、そこで2泊3日過ごすためには、自分から英語を話さなければならないという覚悟を持たせる。

そして、本当に自分から英語を話さなければならないしかけをいくつも用意できる環境が、British Hillsにはあったのだ。

本気でチェックインする子どもたち

チェックインを教員がまとめて行うことは当然できるのだが、部屋ごとに児童にやらせることにしていた。

「つまり英語でチェックインできなければ、部屋の鍵はもらえないということです」と伝えると、悲壮感漂わせて「じゃあ、カマクラを作ってそこで寝ます!」などという冗談が飛び出したりもしたが、もしかすると日本語ですら自分自身でチェックインの経験などない児童たちは、鍵を入手するためににわかに本気な顔をする。(ここが小学4年生の素直さ)

同じ部屋の子たちで力を合わせて(ちょっと大げさか笑)チェックインに挑む。鍵を手にした児童たちがちょっと誇らしげに見えたのは、気のせいではないと思う。


本気で両替する子どもたち

本当は円も使えるのだけれど、施設内は、共通通貨British Pondしか使えないと伝えていた。(円も使えるよね、と気づいている子ももちろんいたが、おそらくポンドしか使わせないというこちらの覚悟も伝わっている壮大なゲームだ)

施設内で使ってよいお小遣いとして2000円持たせていたが、まずは両替しないと使えない。お土産を買うこと以外に使い道はないのだが、子どもたちはもちろんどうしてもお土産を買いたいわけで。

両替できるのはレセプションだけ。しかも両替できる時間も限られている。英語を使うだけでなく、時間のやりくりも必要だったりして、どれだけの学びがここに生まれているかわからない。


本気で買い物をする子どもたち

British Hillsには、お土産を扱う売店の他に、Tuck Shopというお菓子を量り売りするお店がある。外国人の先生が売り子になって、子どもたちとやりとりをしながらお菓子を売ってくれるのだ。

Tuck Shopの利用は子どもたちにお任せ。自由時間は限られているので、そこで買い物をするかどうかも彼ら任せ。(別に雪遊びしてたっていい)

店が開いている時間はわずかなため、雪道を歩いてShopのある棟まで出向き、さらに量り売りなので、英語で交渉しないとお菓子は買えない。本気で取り組まないと達成できないミッション。

(この「選択」の自由を子どもたちにどれくらい持たせられるか、も教育の責任かと思う。)


本気で砂時計を売っている唯一のカフェを探す子どもたち

事前指導で、以前British Hillsで買ったもの、をいくつか紹介したのだが、ことのほか人気があったのがオリジナル砂時計だった。しかし、この砂時計、施設内のはずれにあるとあるカフェにしか売ってない代物。

こちらが、児童たちに人気の砂時計

それすら内緒にしておいたら、いつの間にかそれをどこかで聞きつけた児童が。(おそらく英語で聞き出したと思われる)「あのSand Glass(あ、英語になっている笑)、カフェにしかなくて、しかも空いてる時間が14:00からなんだって。もう、僕たちいない時間なんだけど!」と騒いでいる。笑

それは残念だったね…と思っていたら、ここからがすごい。「お土産やさんにその時間には買いに行けなくて、と話したら、カフェから取り寄せて売ってくれるって!ほしい人いるーーー?」と募ってるではないか。「えーーーー?!」

しかも「先生、他にもほしい人いるかもしれないから、ロイロでみんなに連絡してくれませんか」と頼まれる始末。(この時、施設内にはWiFiが完備されており、子どもたちの宿泊棟はそれぞれ離れていたため、連絡はロイロノートやクラスルームに随時上げることにしていた)

どうやら10人強が砂時計を手にしたらしい。しかも私が見せたのは赤だったが、ほかの色もあったそうで。

たしかに砂時計は素敵なんだけど、それを手にするための子どもたちの本気が引き出されたことが本当に素晴らしかった。開いてない店を開けさせるとは恐るべし。


How to ではなく、mind

小学生がたかが3日、英語漬けで過ごしたとて、英語が喋れるようになるわけではない。

English Campの候補は、違う施設での実施やホテルでの企画など、ほかにもたくさんあった。しかし、子どもたちがいちばん心を動かされる体験ができるところは、British Hillsだと感じていた。

子どもたちの、本気を引き出してくれる環境とシステムが揃っていた。


残念ながら私が退職したのち、このBritish Hillsへの宿泊学習はなくなり、代替の場所でのEnglish Campになっているようだ。それはそれで、ねらいや場所や、いろいろなことを検討しての選択なのだと思う。

しかしあの数年間、British HillsでEnglish Campを経験した子どもたちが、なんとかして自分のやりたいことを英語で伝えるというmindを得たという事実は変わらない。

それはきっとかけがえのない財産になっていると思う。きっと一生忘れられない想いを、それぞれが得ただろうと思う。(わたしの願望も含まれているかもしれないが)

ちなみに、British HillsのHPはこちら。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?