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21.オタワで81歳の音響詩人と遭遇

オタワは、カナダの首都である。ビクトリア女王が気まぐれにピンをさして場所が決まったという話もあるカナダ第4の都市。ワシントンDCと違い政治のみの機能の町と言うわけではないようだが、それでも住んでいる大多数が連邦職員か、大学で働いているらしく、若者というのをほとんど見かけない。
オタワでは、詩人のマックス・ミドル氏が待っていた。定期的に詩のイベントをやっていて、ぼくその一環で招聘されていた。前回はボロット・バイルシェフと佐藤正治とでオタワに来た。今回はようやくヒカシューと一緒なので、ヒカシューそのものをやりたいとマックス・ミドル氏に提案した事で、ツアーのひとつに組み入れることができた。
今夜の会場の国立芸術劇場は、街のゆるやかな坂の上にあり、しばらく行くと国会議事堂がある。その手前に何故かオスカーピーターソンの像がある。
「ここで写真を撮ろうよ」
「彼はここの出身なの?」
「うーん、モントリオールだと思う」
多くの人がやるようにピーターソンと写真を撮りまくり、
何を思ったのか、
「芸名はオスカーピーターパンはどう?」
「いいね」
と清水さんもまんざらでもない。
何がいいのかわからないが、旅は人をハイにするようだ。

公演にはもうひとりゲストがいた。トロント在住のNobuo Kubota氏。音響詩のベテラン81歳だ。エフェクターをマイクに繋ぎ、その場で紡ぐ音声の詩を次々にエコーしたり、瑞々しいパフォーマンスを繰り広げる。81歳で、ベロクチャ、ピーとか、ドロロナピコテーとか、プクプクトトトトトトトトとか、もう凄すぎる。ヴォイスパフォーマンスは、年取るほどかっこいい。そう確信させてくれるものだった。ぼくも目標ができた気がした。このままずっと突き進もう。話しかけに行くと、Nobuo Kubota氏は、バンクーバー生まれの日系人。会話は英語だったが、気持ちは伝わったと思う。

そして、いよいよヒカシューだが、会場はけっこう年配の通な人たちで埋まっている。たいていはマックス・ミドル氏の友人たちで、詩の朗読会の常連なのかもしれない。日本大使館の文化担当官の方も来てくれた。
しかし、この街にはほんとうに若者がいないのか。
マックス・ミドル氏は、八面六臂の活躍で、ずっとツイートしていたり、リハーサルの時間にラジオ番組インタビューをいれてみたり、無謀だけど必死に宣伝をしていた。ぼくもリハもそこそこに違う場所でテルミンの短いワークショップまでしたっけ。ほんと必死なスケジュールだった。
演奏後、たくさんの人がCDを買いに来てくれたから、オタワの人たちは、きっとヒカシューを気に入ってくれたんだろうと思う。

巻上公一
2013.5.15



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