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言葉にならない想いのはざまで

まずは引き出し一段からからでも、と、コツコツ、息子の部屋の片づけをしている。

高校生の頃にはじめてアルバイトをしようと思って書いた履歴書にぷっと吹き出し、その後に出てきた就活の際の自己紹介シートに少しは成長がみられるのを感じたものの、
志望理由に「雨の日も通いやすいので」など、実に正直に書いてある履歴書はとても私には書けない代物で、彼の性格をよく現わしている気がしたので、これは取っておくことにした。

本当に彼はおもしろい。


ふと、クレジットカードの暗証番号の通知はがきが出てきた。

4桁の数字は父親の誕生日になっていて、胸がきゅーっとなった。


彼が生まれた時に作った口座の暗証番号を父親の誕生日にしていたので、めんどくさがりだし、そのまま同じに設定した、ってことなのかもしれないけど、

自分で選べる年齢で、その数字の意味も知っていて、あえてそれにするって、、、話題にはのぼらないけどいつもその存在は胸の中にあるんだろうな、と感じた。


東京に旅立つことも、「言ってないよね?」と訊かれて「うん」と答えたけど、そのあとなんだかもやもやして、一応父親に伝えてみた。
なんの返信もアクションもなかった。
高校卒業の時も、成人の時もそうだった。
それを息子に伝えることがやはり私にはできなくて、辛い。

養育費が振り込まれていた口座はちゃんと4月には振り込みがストップしていたのを、5月になって落ち着いてから記帳して確認した。

止める手続きをしないと止まらないようになっていたので、
そういう事務的なことはめんどくさがりの彼だったが、ちゃんとタイミングを覚えていて止めたんだと思うと、何とも言えない気持ちになった。

ちゃんとわかってるんだ、卒業するって。
そこはアクション起こしたんだって。

通帳を見ながら、ぐっと口惜しい気持ちが沸き起こった。

そしてこの現実をしっかり受け止めようと肚におさめた。



言葉にしない二人の、互いの存在への想いが、
あまりにすれ違っているように感じて、

息子を想うと、苦しくて、切なくて、

いつだって涙があふれて、仕方がないんだ。(今もボロボロ泣きながら書いてる。)


本当に無力なんだよね。

あんな父親でゴメン、っていうのも違うし、
私が恨みをぶつけたところでなにも始まらないし解決しない。

あぁ、もう、どうしたいんだ、私。

って、何もできないんだよ。本当に切なくてたくましいよ、わが息子は。


とにもかくにも、息子が幸せになってほしい。
少なくとも「帰ってきたいと思う実家」になれていることが、私にしてはよくがんばった。私は親元に帰りたいという郷愁のようなものがほぼないので。そんな私がよくやったよ。


できることはそんなにない。
ただ心の支えになることにこの20年以上を注力してきた。

そしてこれからも、絶対的な応援者で在り続けようと思う。

それくらいしかできないな。


どうぞ、彼が幸せな父親になりますように。







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