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建築事務所のいろいろ_事務所の文化


働く場の「文化」というのは、その事務所がどんな建築を生み出すかということと同じぐらい大切なことだと思う。社員のモチベーションを上げたり、一体感を生み出したり、職場へのプライドも生まれるかもしれない。

BIGには独特の「文化」がある。黒川紀章やスティーブンホール事務所では彼ら個人がまさに社内の文化であったと思う。先生や(黒川事務所では黒川紀章のことをこう呼んだ)、スティーブンの鶴の一声で社内にルールができ、全てが決定された。だから文化も自然と彼ら自体がそれになった。事務所が100人以下というサイズのせいもあるだろう。ところがBIGではそれとは違う、ビアルケ個人の意思は尊重されつつも彼の意思が独占しない、なにか独特の心地良い文化がある。そしてその「文化」をとてもとても大事にするのだ。

BIGではどんな場でも、楽しいだけじゃなくクリエイティブを追求する。それを象徴する一つが、以前私が「遊んでいる。」と思っていたパーティーだ。これが実は真剣勝負、クリエイティヴなアイデアが問われる場なのだ。例えば年に2度の社内パーティー。日本で言うと忘年会などに当たるものだが、毎回テーマが与えられ、なんと仮装での出席が義務付けられている。最初はなぜ!?めんどくさい!と思ったが、みんなの真剣さに驚いた。日常の忙しい時間をぬって試行錯誤し、当日に控えるのだ。もちろんビアルケを始め、BIGのトップたちも仮装。これはまさに日々のプロジェクト外で自分のクリエイティヴを売り込むチャンスなのだ。ある時のテーマは「近未来」だった。私はオンラインで銀色のテーブルクロスを購入し、そこから反物を作り「近未来着物」を作り参加。これは大好評で、ビアルケからも大絶賛を獲得した作品となった。

あと他の事務所と違うのは、オープンで平等ということだと思う。例えば事務所内で誰一人として個室というものを持たない。ビアルケやCEOでさえ例外ではない。建築家も人事部も皆が間仕切りのない一つの空間で仕事をするのだ。席替えもプロジェクトの進行によって頻繁に行われ、事務所内がかなり流動的と言える。打ち合わせ室も例外でなく、壁は全てガラス。だれが何をしているかが一目瞭然なのだ。隠し事が少ない事務所と言える。( Dezeen や、Designboom , Azureなど多くのデザインサイトで事務所が紹介されています。)

黒川紀章建築事務所の場合は、先生の事務所は大奥の様な誰も踏み込むことのできない空間にあった。私は面接の時に先生専用の打ち合わせ室に通されたが、そのさらに奥の部屋には足を踏み入れたことはなかった。
スティーブンホールは彼の個室があったが、こちらは先生よりもはるかに開けてはいた。隔てていたのは木製のドア一枚で鍵すらもなかった。外部の人を招待して行われるクリスマスパーティーではそのドアは開放され、外部からのゲストも自由に彼の部屋へ入ってパーティーを楽しむことができた。

BIGが開放的なのは今時の働き方によることもあるだろう。携帯があれば充分にある程度の仕事ができる時代。何も固定された個室がなくてもいいだろう。

さて、サマーパーティーが来月に近づいている。今回のお題が先週発表された。「ウォーターワールド」。アイデアが降りてくるのをしばらく待つとします。

つづく

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