やつら、きっと手を回すからな
元はといえばスナフキンが引っこ抜いた
公園の看板を夏至のかがり火にして燃やしたため
投獄され、何とか脱走したものの、警察に身を
追われることとなったムーミントロール。
スナフキンは今後の作戦をムーミントロールに
言い聞かせる。
この後のせりふが旧版では
「ぼくは、みんなを知っている。
とちゅうで、ぐずぐずするなよ。
こわがることはない。六月の夜は、
おそろしくないんだ」
となっていて、太字部分が謎だった。
意味が通じないのだ。
ここは原書を参照すると
Jag känner dem. つまり
I know them. ではあるが、何しろ
話し言葉なので、単語は簡単だけど
訳すとなると、なかなか難しい。
ムーミン谷に帰りたい人を全員連れておいで、と
言っているということは
「ムーミン谷に帰りたい人=劇場の舞台にいた人」
であり、
スナフキンは芝居を観ているので、出演していた
ミーサやホムサも知り合いじゃないけど
顔はわかるし、
彼等は一家と一緒にいたのだから敵じゃない、と
わかってるから大丈夫ということなのか。
それとも
ムーミントロールは芝居を殆ど観ておらず、一方、
洪水からの経緯をスナフキンは知らないので
スナフキンとしては
【君は舞台にいた人たちの顔を知らない人たち
だろうけどぼくはわかるから】
大丈夫だよ、ということなのか。
ん?これはもしかして前文の
「ヘムルたちが劇場の見張りを立てないうちに」を
受けているのでは?でもそれならば
demではなくてdet(it)になるのでは?と思い
皆の顔はわかってるから、で進めていたのだが
ゲラの段階になって、やっぱりここは違う!
と思い直し
残り時間があとわずかとなっていたこともあって
native3人に3つの選択肢を挙げて
解釈を訊いてみた。
すると、3人とも解釈は③だった。
「知っている」ならJag känner demではなく
Jag känner igen demというのが自然だし、
demはhemulernaだと思う、と。
となると"Jag känner dem."のdemはそうか、
「知覚動詞+目的語+原型不定詞」の目的語で
更に原型不定詞が省略されているということか!
つまりここは
「ヘムレンたちなら劇場に見張りをつけるはずだと
(その予測される行為を)わかっている」
ということになる。
最終的には
「あいつらのことだから、
きっと見張り役を呼ぶはずだ」
となったが、ここは
「あいつらなら、きっとそうするから」
「あいつらのことだから、きっとだ」
とか、ここは思い切って
「やつら、きっと手を回すからな」
あたりにしたかったな。
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