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虚しい。そこはかとなく。

「どうしてつりをしないの?」
「もうやめたんた」
ムーミンパパは答えました。
「それじゃ、ほっとしたわね。あまり長くつづけると、あきちゃうものね」
「まったくだ!おもしろくもなんともなくなったのんさ。そのことに、どうして自分では気づかなかったんだろうな」

新版『ムーミンパパ海へいく』5章

憑りつかれたように魚を釣りまくり、
それがもう、家族に喜ばれてはいないことが
わかって、またもや虚しいモードになったパパ。
「あまり長くつづけると、あきちゃう
おもしろくもなんともなくなった」は
jamigtという単語で表現されている。
そしてこの単語がまた、辞書に載っていない。

どこかでjamigtが使われている文章はないかと
検索しているうちに、この作品についての
ブログを発見した。
筆者はKatarina Lycken Rüterさん、
高校教員であり作家でもある方で
質問を送ったら丁寧にお答えいただけた。

jamigtという語はたぶん、Tove Jansson独自のものかも?
でも語感としてはmjäkigt (これも辞書にない語かもしれないけど)のような感じで、たとえばジュースを薄めすぎておいしくないとか、何か虚しいとか意味がないとか、毒にも薬にもならないとか、そしてご推測のとおり、退屈という意味でいいと思います。

なるほどなるほど!
ジュースを薄めすぎて…っていうのは
言い得て妙だな!パパのせりふは
「何だか味気なくなっちまったのさ」
あたりにしたかったのだが、
漢字表記の制限もあり
「おもしろくもなんともなくなった」に。
(これだって「面白くも何ともなくなった」
としたいところなのだが。)

【未来への引継書】

ほんとうのところ、ムーミンママがなにかひどいことをいったわけではありません。もちろんムーミンパパをきずつけるつもりも、ちっともなかったのです。それなのに、こんなことがありました。

新版『ムーミンパパ海へいく』5章

「それなのに、こんなことがありました」
の原文は Men ändå. と至ってシンプル。
言ってみれば ため息のようなものなので、
本当は説明し過ぎない方よく、
「それなのに、パパったら」とか
「それなのに、まったくもう」あたりの方が
踏んだり蹴ったり感も出てよいかと。

Toveの朗読の "Men ändå." は上記の
Avsnitt 7: Dimma, del 1で!


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