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原書バージョン騒動②それでいいのか⁈英語版

原書バージョン騒動①で書いたように
新版『たのしいムーミン一家』では
原書バージョンの違いによって
訳が異なっている箇所がいくつもある。

1948年版原書でradioとなっている箇所が
最終版である1968年の原書では
speldosa(オルゴール)となっているため
7章ではパーティーの準備の場面と
パーティーの最中でこんな違いが生じている。

パーティーの準備の場面では
スナフキンが旅に出てしまったので
音楽がなくて残念、と言うスニフに対して
パパの答えは
【旧版】では
「なに、ラジオを使えばいい。」だが
【新版】では
「あの古いオルゴールを鳴らせばいい」
となっている。

そしてパーティーが始まると
【旧版】では
「それからムーミンパパが、
ラジオを庭へ持ちだして、アメリカから
放送されてくるダンス音楽に、
ダイヤルをあわせました」

となっている箇所が【新版】では
「するとムーミンパパが、
庭にオルゴールを持ち出して、
大きなスピーカーにつなぎました」

となっている。

(ちなみにオルゴールをスピーカーに接続することは可能なのか?友人のミュージシャンに訊いてみたところ、できない話ではないらしい)

このように、日本語版は
最終版原書に基づいた訳に
改めることができたのだが、
英語版は基本的に初版のままだ。
(だから英語版と日本語新版とを
つき合わせて読むと、単語レベル
のみならず、大きく異なる箇所に
出くわす筈……)

2010年以降版ではパーティーの場面でwirelessがradioになっているが原書はあくまで1948年版
(Puffinペーパーバックは各頁上部にあらすじ見出しが付いているという…!)

英語版いつまでも改訂しない問題は
『ムーミン谷の彗星』も同様で、
英語版で登場する小さな生きものは
猫ではなくキヌザルのまま。

英語版しか読めない読者にとっては
ムーミンマグ等々のグッズの
モチーフにも使われている猫ちゃんと
物語との関連もわからないという……。
英語版の放置っぷり、凄すぎる。

日本語版の『ムーミン谷の彗星』は、旧版も最終版原書に基づく翻訳で出版されていました。

ちなみに、Puffin版ペーパーバックには
ムーミンママからの「直筆」メッセージが掲載されている。
Square Fish版には載っていないけど、
Puffinの電子版には引き継がれている模様。

"moomins go to school only as long as it amuses them"
15歳で学校をリタイアしたToveらしい表現だな……。

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