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本は売れないと絶版になっちゃう……!

Boel Westin著のトーベ・ヤンソン評伝
"Tove Jansson : ord, bild, liv" は
2014年のトーベ・ヤンソン生誕100周年に
日本語版が刊行された。


数々の偶然とご縁によりこの本の
共訳者として関わらせていただいた。

評伝制作チームのムーミン愛を燃料に
超タイトなスケジュールをクリアして
刊行された
『トーベ・ヤンソン 仕事、愛、ムーミン』
制作者一同、自信を持っておすすめ!の
1冊で、1回重版もかかったのだが
2020年12月に絶版となってしまった。

「この本が出たとき、トーベ・ヤンソンファンが
喜んだのはもちろん、トーベの親族や身近な
人たちがどんなに嬉しそうにしていたか。(略)
トーベに近い人たちは、やっとこれで
トーベのことをちゃんと知ってもらえると
安堵した」
共訳者・森下圭子さんの
あとがきにあるとおり、この評伝は
「今後、トーベ・ヤンソンを研究したい、
ムーミンの世界やその背景を知りたい
という方にとって、欠かせない一冊になるはず」

だったのだが……!

新版ムーミンの刊行も完了していたので
まさか評伝が絶版になるとは想像もしておらず。
でも、売れていなかった。
採算が取れないので、版権の更新は不可。
新版ムーミンの担当編集者さんは
評伝の重要性を強く訴えてくださったのだが
どうにもならなかった。

更に、他の版元で出し直す場合
既訳をそのまま使ってはならない
という。

絶望しながら、2020年の年末に
Twitter_Xに復刊をしてくださる
版元さんをダメモトで募ったところ
何と!フィルムアート社さんが
手を挙げてくださった。

フィルムアート社さんはトーベ短篇集の
翻訳本の刊行を春に予定されていたこと、
そして秋には映画『TOVE』の公開が
決まっていたため、トーベ評伝の復刊に
興味を持ってくださったのだった。

トーベ・ヤンソン自選短篇集
『メッセージ』が久山葉子さんの翻訳で
刊行されるのと同時に、評伝復刊プロジェクトが
本格的に始動した。

既刊評伝の訳をそのまま、表紙を替えて……
ということは許されないため
イチから訳し直し。
大変は大変だが、前回の刊行から7年、
森下さんも私も手を入れたい箇所が多く、
また、頁数の関係で泣く泣く削除した部分も
復刊本では入れることができた。

そして2021年10月、トーベ評伝は復活を遂げた。

絶版決定から1年足らずでの復刊は
かなり稀なことだろう。
様々なご縁とタイミングがもたらした
奇跡と言えるかもしれない。

そして復刊評伝本出版から2年半。
――売れて……おりません。
656頁もあるし、そうなると
それなりにお値段も張るし。

読んでみたいけど、価格が……
と思われたら、まず図書館へ。
公共図書館や学校図書室に蔵書がない
場合は、蔵書購入のリクエストをする
という方法もあります。

更にはそもそも、この本の存在が
あまり知られておりません。
知られない本が売れる訳はない。
つまり知って頂かないと始まらない!

新版ムーミンと共にトーベ評伝のことも
ぼちぼち書いていこうと思います。
どうぞご贔屓に。


原書は漬物石本だけど、日本語版は約1/2の重量です。
そして森下さんの訳者あとがきは評伝18章のような充実ぶり!

評伝本の装丁は大島依提亜さん。


表紙カバーを外すと、”パパ・レンブラント” が…!!

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