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違う、そっちじゃない!

(これはきっと、なにかが起きるぞ)
ムーミントロールはそんな予感がして、身ぶるいしました。そして、そのなにかが起こったのです。

新版『ムーミン谷の冬』3章

いつもならぐっすり冬眠している筈の真冬に
目が覚めてしまったムーミントロール。
見たこともない冬の世界にひとりだけ
放り出され、戸惑いと怒りが渦巻く中
救世主が現れる。

ちびのミイ、登場!
洞窟で姉のミムラと一緒に冬眠していた
ミイも目を覚ましてしまったのだ。

さて、ミイが防寒着に着ている
薔薇模様のコレ。

英語版でこれがegg-cozyと誤訳されたのがそもそもの間違いだろうけど。

旧版では「たまごいれ」となっていて
確かに卵型に見えてしまうのだが、
原書を参照するとkaffepannsmössanとあり
コーヒーポットのカバーのことなのだ。
少し前の頁でムーミン屋敷から
なくなってしまったと言及されていた
「ばらの刺繍がついた、コーヒーポットの
カバー」がこれである。

物語の終盤、このカバーをミイは
繕おうと奮闘するが……。
kaffepannsmössanというのは
こんな感じ↓のもの。
カバーから、ちびのミイの大きさが
想像できる……けれど、物語によって
ミイの大きさの描写も違ってくるので
あくまでもこの物語では、ということで。

https://silmanilo.wordpress.com/2013/08/14/tuliaiset-mokille-3/

そして「たまごいれ」はというと
別の場面で登場する。
原書表現はäggvärmaren
英語でいうところの egg cosyのこと。

https://sofiambdesign.com/2020/03/21/aggvarmare-2/

でも、あたいが本当に必要なのは、マフ(毛皮)よ。あんたのママのゆでたまごカバーで作ろうとしたけど、どうやってもマフにはならなかった。

新版『ムーミン谷の冬』3章

「ゆでたまごカバー」は
エッグウォーマー推奨なるも
残念ながら採用されず。そして
「マフ(muff)」は円筒状の毛皮等で
手を入れて温めるもののこと。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%95

「マフ」は「手袋」でよいのでは、という
意見もあったが、手袋だと思い浮かべる
イメージが違ってくるだろうし、
ミイはこの後、子りすのしっぽで
「小さくてかわいいマフをこしらえようと」
するのだ。となると、モフモフな語感からも
ここは「マフ」じゃないとね!

ちなみにミイが加工しようとした
ゆでたまごカバーはぼろぼろになってしまい、
水あび小屋のストーブで燃やされてしまう。

äggvärmarenというと帽子スタイルのものが
多く、「ゆでたまご帽子」という訳もいいかも。

https://ullcentrumblogg.se/2016/march/aggvarmare.html


https://pysseldrommar.wordpress.com/2014/03/20/virkade-aggvarmare-gratis-monster/

ムーミン家のカバーは一体
どんなものだったのか
それは永遠の謎なのだ……。

「この世界には、夏や秋や春には居場所のないのが いっぱいいるのよ」
トゥーティッキの言葉にムーミントロールは戸惑うばかりだったが……。

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