Bortkomlingenのために
『ムーミンパパ海へいく』に
登場する、謎めいた「漁師」
ムーミン一家が移り住んだ
灯台のある小さな島の
西のはずれにひっそりと暮らし
一家との関りを持とうとはしない。
ちびのミイは「漁師」を
面白がり、彼のことを
bortkomlingenと呼んでいる。
このbortkomlingenという
言葉で思い出すのは
Bo Carpelan(スウェーデン語系
フィンランド人の詩人・作家)の
インタビュー(1964年)で
誰のために物語を描いているのか?
と問われた際のトーベの答えだ。
Bortkomlingenというのは
bortkommaが語源と思われる
トーベの造語で
「はぐれ者」「はみ出し者」
「落ちこぼれ」「(精神的に)迷う人」
「臆病な変わり者」
といったニュアンスの言葉だ。
他者との距離を置きまくる
「漁師」のことをbortkomlingen
と言い表すちびのミイ。
そして8章では
ムーミンママも漁師のことを
bortkomlingenと呼ぶという……。
しかし、物語の終盤
borgkomlingenは
それまで逃げ回っていた
自分自身と対峙する。
『ムーミンパパ海へいく』
(原題『パパと海』)は
パパだけではなく
語られる者たちそれぞれの
レジリエンスの物語と
評されることが多い。
本土から遠く離れた小さな島の
灯台守に戻ることに対して
「めでたしめでたし」と
安易には言えないだろう。
それでもトーベは
borgkomlingenに向けて
物語を紡ぐのだ。
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