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中原中也「酒場にて」

本日は中原中也「酒場にて」を朗読しております。

「今晩あゝして元気に語り合つてゐる人々も、実は、元気ではないのです」で始まるこの一編。
酒場に集う人たちそれぞれの、表向きとはまた別の、隠されている人生が、うっすらと透けて見えるような気がします。

私の父は、お酒の好きな人でした。
晩年、からだをこわし、医者に止められても、家族に隠れて飲んでいました。
といっても父と母で商店を営んでいましたので、家で飲むのはむずかしい。

店が休みの日に、「絵画展に行く」といって外に出ます。
実際、父は絵が好きでした。
父の弟は画家になりました。父もほんとうは、そうなりたかったのかもしれません。
自分でも、ユトリロの模写などをよく描いていました。ユトリロも大酒のみです(^^;

「絵画展に行く」これは本当です。行くたびに買ってくるカタログが、家にわんさかありました。で、その帰りに、酒場に寄ってきちゃうんですね。
はじめは一杯のつもりなのでしようが、そのうちどんどん杯を重ね…うちに帰ってきたときにはすっかりアルコールのかおりに包まれているのですから、バレないわけがありません笑

お酒そのものが好きだったのか、それとも、なにかを忘れるために飲んでいたのか…父は寡黙な人でしたが、若い頃によく観ていた好きな映画のことになると饒舌で、いろいろ話をしてくれたことをおぼえています。
お酒についても、一度ちゃんと聞いて、話をしてもらえたらよかったなあ…と、いまになって思います。

中原中也の作品はほかに、「夜汽車の食堂」「星とピエロ」「七銭でバットを買って」「サーカス」「都会の夏の夜」「曇った秋」「雨の日」「別離」「初夏」「夏の夜の博覧会は、かなしからずや」も朗読しております。
あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。