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ドイツの驚くべきコロナ対策

ドイツに行ってきました。半分は仕事でしたが、半分は好奇心から。ドイツはEUの中でも特に、変異株の流行を上手にコントロールしているから。実際はどうなのだろうと、興味があったからです。

一言でいえばそこは、コロナを乗り越えた、アフターコロナの世界でした。自由で安心できるけど、細かい規則がありました。個人の自由と引き換えに、以下の書類のいずれかを粛々と提示する、という習慣を浸透させることに成功していたのです。

- ワクチン証明書
- 回復証明書
- その日の抗原検査の結果

いつまでもコロナ禍から抜け出せない混沌とした日本とは対照的でした。

みなさんの参考になればと、詳細をご紹介します。長文です。

↓私が持ち歩いたワクチン証明書。石垣市福祉センターにて取得。2回目接種から2週間で有効化。欧米では中国製とロシア製ワクチンを認めていない。日本ではファイザーを主軸としていることに感謝。

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■数字が語る「ワクチン政策だけでは十分ではない」

素人計算ですが、ざっくりと数字を出してみます。ドイツを訪れた時点(8/20)のデータです。

ドイツのワクチン2回接種率は60%。人口は8300万人。新規陽性者数は平均7000人/日。10万人あたり8.4人。
日本のワクチン2回接種率は50%。人口は1億2500万人。新規陽性者数は平均23000人/日。10万人あたり18.4人。
石垣市のワクチン2回接種率は70%。人口は4.5万人。新規陽性者数は平均20人/日。10万人あたり44.4人。

石垣市はリゾート地のせいか、ウイルスが入って来やすく、人口あたりの陽性者数が恒常的に全国トップレベル。インド並みとかマレーシア並みとかよく言われたりもします。今回のピークでは頼みの基幹病院も外来を閉鎖、いわゆる「医療崩壊」状態になり、既にしばらく経ちます。

沖縄県は東京よりも長く、開始日が記憶にないほどずっと緊急事態宣言中です。自粛を求めるだけでは、そしてワクチン接種率を高めるだけでは、現在流行中のデルタ株の流行はコントロールできないことを、石垣市は実体験により数字で示しています。この点に日本政府は気付いているのでしょうか。

ではどうすればいいのか。ドイツは、あらゆる「習慣」を変えています。「手指消毒とマスクの徹底を」と唱えるだけでは不十分だということがわかっています。

■ドイツの対策1:徹底した検査

まず、検査の徹底。「市民テスト」という抗原検査(15分で結果が出る)が、無料で受けられます。地域によって違うようで、ベルリンでは毎日、私が滞在したブレーメンでは週2回まで無料。

そのため、レストランやバーの屋内エリアで飲食したり、ワークショップやヨガに参加したりする時、つまり「自由」を享受するために、その日の朝に受けた市民テストの結果を持参する義務が受け入れられている。中には毎日受け続ける人もいるでしょう。これにより雇用主はスタッフを守ることができるし、スタッフも安心して仕事ができる。

現在は移行期で、ワクチン証明書あるいは回復証明書でこれを代用することができる。私もホテルのチェックイン時と外食の時に、証明書のいずれかを見せてくださいと要求されました。

↓レストランでスタッフたちと共にドイツワイン&ドイツ料理❤️ いまの日本ではなかなかできない贅沢。めっちゃ美味しかった!

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■ドイツの対策2:市民テストの有料化によるワクチンの推進

上記の市民テストは、10月から有料になります。つまり、「ワクチンを打て」という無言の圧力です。ワクチン集団接種も9月中には終わらせる目処があるのでしょう。

もしワクチンを打たない選択をする人で、それでも自由な社交や交友を続けたかったら、市民テストを日常的に受け続ける、そのための出費への覚悟を持たねばならない、ということです。ドラッグストアでも抗原検査キットが最安で1ユーロ以下(130円以下)で買えるようです。学生たちがパーティに行く時などに使っている手段です。でもこれはオフィシャルではないから、世間的にどこまで通用するかは不確実。いずれにせよそ社会に生き続けたかったら(山暮らしで社交もない生活なら別ですが)、ワクチンを選択せざるをえないようになっています。

■ドイツの対策3:マスク着用プロトコルの徹底

市民テストとワクチンを武器とした上で、屋内でのマスク着用が厳格に守られています。公共の場所(機内や電車やトラム、教会、小売店などにおいて)では、その種類も制限されています。ウレタンや布マスクは認められていません。不織布マスクもNG。FFP2マスクという、聞いたこともないマスクをつけないといけないと言われ、私は美術館から支給してもらいました。

在ドイツ日本大使館のページ:
https://www.de.emb-japan.go.jp/itpr_ja/konsular_coronavirus200313-1.html#masukuchakuyo

私はドイツ行きのフライトに乗る時に、わざわざ正絹の着物地で自作したおしゃれな布マスクをつけていました。これぞジャパニーズの誇り!とばかりに(笑)(海外で仕事をするときは、見下されないように、あらゆる手段を使うものです)。でも、早々と羽田空港で注意されました。ギリギリ不織布マスクを許容してもらえましたが、見回すと欧州人は堅苦しいマスクをつけていました。

それがFFP2マスクです。ブレーメンでトラムに乗ることが多かったので、これをつけるのに慣れねばならなかったのですが、気密性がとても高く、吐く息が横に逃げず、上に昇ってしまう。つまりメガネが曇ってしまう。そのため、鼻部分のワイヤーの折り方までレクチャーしてもらいました(笑)。

↓FFP2マスク着用。ディナーからの帰りなので、外気も15度、メガネが曇って危うく転びそうになりました。スタッフたちにも笑われた必死のワンショット。

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FFP2マスクは、防塵マスクのようなものでしょうか。もう日本に戻ったら笑い話ですね。でもこれが案外、とても大切なコロナ対策なのかも。つまり、日本の若者がよく使っているウレタンマスクは、ファッション的に見た目は良いけど、感染予防対策としては非科学的だということです。

私はこのFFP2マスクを取っておいて、大事な場面で使おうと思います。

■ドイツの対策4:消毒の徹底

例えば、ペンも共用しないように使い捨てにしたり消毒したり、電車やトラムにも消毒スタッフが乗っているなど、こまめな努力が目立ちます。

この習慣に慣れると、羽田に戻った瞬間、生温さが目立ちます。羽田の検疫では、10回くらい対面式の面接があり、それだけで感染リスクが高いのに、その度に書類の記入漏れを修正するためのボールペンを渡されたり、、、使い回しなのです。ぜんぶ非接触でデジタルとかオンラインでできないの?って思ってしまいます。しかも、アプリインストール時に検疫官がわたしのスマホを平気で触ったり。ちょっとちょっと、やめてよ!と叫びたくなりました。

■ドイツの対策5:チェックイン・アウト用アプリの徹底

美術館訪問時などには、入り口のQRコードをLUCAというアプリでスキャンして、チェックイン・アウトをするように言われます。このアプリは、クラスター発生時に連絡がくるようにするためのものだそうです。

じぶんの証明書も登録するようになっているので、人口あたりの感染者数が増えたときには、この証明書を頼りに入館許可が出たり出なかったりなされるものと思われます。

↓ブレーメンの現代美術館 Kunsthall カフェでのオーガニックシードル。今でもよだれがでます。。。

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■根本となる思想

上記のあらゆる対策の根本となる思想は、「強い者が弱いものを守る」という福祉の思想です。高齢者と子供を守るために、中年層や若者が進んでワクチンを打つという「道徳」が日本よりは浸透している。つまり、国民みんなが安全に暮らせるように努力している。

そして、従業員(個人事業主なら事業主)を守るため、とも考えられます。真面目に仕事して罹患するということは、あってはならない。国民が安全に健全に仕事できてこそ、税金を納めることもでき、国家も成り立ちます。

こう見ると、日本は、果たして国家なのだろうかという疑問さえ抱いてしまいます。

日本には、マスクと消毒さえしていれば、あるいは免疫力を高めていれば、良い気を保っていれば、許される(=自由に行動しても良い)という風潮があります。聞こえはいい。でも、これがもう現実的ではないことは、そろそろみんなが気付き始めているのではないでしょうか。

■ドイツの対策まとめ1:自分を守るためには、確率論で計算を

感染リスクをゼロに、なんてあえません。確率を減らしていくのみです。

ワクチンを打てば感染する確率を90パーセント減らせ、さらに適切なタイプのマスクを適切に装着すれば感染する確率を60パーセント減らせるとすれば、感染する確率は単純に計算すると;

(100%-90%) x (100%-60%) = 4% 

となる。こうやってひとつひとつ地道に減らすことができることは、もう科学的にわかっています。ワクチンは、この確率論において、特に強力な武器であることはわかっています。

そのため、ワクチンを接種しない選択をするということは、体に有害とわかってる量のタバコや飲酒を摂取することと同じ、「自己選択」であるとみなされるようになっています。とすると、もし今後パンデミックで命の選択をしなければいけなくなったら、ワクチン接種者を優先していく風潮になるのではないかと思われます。

なお、ワクチン接種は12歳以上とされています。それ以下は、ほとんど軽症あるいは無症状で済む、風邪のようなものだからという根拠に基づいています。

■ドイツの対策まとめ2:他者を守るためには、証明書を提示する習慣を

ワクチン接種者が多くなればなるほど、感染ルートをブロックする確率が高まる。ただその政策は、みんなが自主的に、他者のために、証明書を提示することが習慣化した時にはじめて、効力を持ちます。ドイツでは既に、証明書をIDカードのように提示する習慣ができています。私も持ち歩きました。

ワクチンも打たず、人に会う前にテストも受けない自由な行動は、既に問題視されています。社会の一員としての責任を果たさず、自由だけを享受しようとする「ずるい」行動であることを、子供でも理解しています。

昨年クリスマス前のメルケル首相の力強い演説が、多くの人たちの心に刻まれた結果ではないでしょうか。

「自由な行動により、クリスマス後にたくさんのお年寄りが死ぬ。これは私には耐えがたいのです。」

メルケル首相の演説全文:
https://www.j-cast.com/kaisha/2020/12/11400816.html?p=all

ともに敗戦国のドイツと日本。日本のように、国家や体制を信じることができない体質は、ドイツにもあります。ドイツはナチスの禍根も抱えている。けれどもコロナ禍を力強く乗り越えている姿は日本とは対照的でした。

↓1年前のパリ出張時は、陽性反応が出たら帰国できない恐怖があったから、外食もできず友人にも会えず苦い思いをした。今回は現地のスタッフたちと夕食をともにすることができた。インタビューのスタッフも含め、関わった人は全員ワクチンを打っていたので、安心。アフターコロナは、ワクチンにより実現可能であることを実感。

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↑白ビール、ドイツのヴァイツェン! このために頑張ったの!笑 幸せの瞬間でした。

■私見

コロナ禍での海外展示のための出張は、これで3度目です。1度目はまだコロナが日本にあまり入ってなかった頃の台湾(FB上でも70シェアされた記事です)。2度目は1年前、感染爆発中のパリ。台湾へ行った当時は、誰もがもうすぐこの悪夢は終わると思っていましたが、まだ終わる兆しがありません。

日本ではとくに正論は嫌われますが、もう嫌われる覚悟で厳しいことを述べましょう。日本の縮図として、石垣市がわかりやすいでしょう。石垣市ではワクチン大規模接種受付は終了しているから、数字を根拠に述べやすい。

石垣市の陽性者の9割以上は、非接種者とのことです。つまり問題は、ワクチン接種を拒みつつ、自由に行動し、人に会ったりする、社会的に無責任な行動です。今やマスクと手指消毒で頑張るというのは、言い訳になりません。こういう無責任な行動の結果、現実に石垣市の医療崩壊が起きています。このパンデミック状態がいつまでも終わらないと、廃業に追い込まれる事業主が出てくる(その結果、自殺などの可能性も)のが現実です。

ワクチンを選択しない若年・中年の方にはまず、ドイツのように、他者への思いやりとして、抗原検査を日々続けていく覚悟があるのかを問いたい。抗原検査キットは日本でも数千円で売られるようになりました。より信憑性の高いPCRテストは1万円前後だし、結果取得まで1〜2日かかり、せいぜい旅行時のパスポート代わりでしょう。なので、信憑性低くとも、市民が気軽に使えるのは、抗原検査となります。なので、ぜひそれを続ける覚悟を持って欲しい。

ドイツはこの「検査のための出費の覚悟」をうまく使って、ワクチン接種へと促してしています。

そして社会も、ワクチンを選択しない人の罹患や重症化は、飲酒やタバコのように、自らの選択であると捉える風潮になった方が良いのではないでしょうか。なので新規陽性者数と重症者数の内訳に、非接種者を数字で出した方が良い。もう少しで治療薬もできると期待して、そろそろコロナをインフルエンザのように捉え始めてもよい頃です。

生きるには、ゼロリスクはありえません。ワクチンを打ったって、リスクだらけ。ワクチン反対派の言う「3年後に死ぬ」説などは極端ですが、実際にワクチンを打っている人たちも、将来のこうした不確実な健康被害もリスクの一つとして捉えています。けれども、現実に目の前にいる人を守る、という大きなメリットを選択しています。(100%自ら進んで注射を打ちたいなんてのは、マニアかフェチしかいないです笑)。ワクチン接種は、強い者が弱い者(お年寄りと子ども)を守るための、最大の愛。ワクチン反対なんて、「私は自分のことしか考えてません」と言っているようなものではないでしょうか。

正直いうと、私も、ほんとうは、怖かったですよ。でも、呑み仲間たちがこんなふうに笑い飛ばしてくれたおかげで、私も腑に落ち、清々しい気持ちで打つことができました。

「仮にその信憑性のない噂のように、ワクチンのせいで3年後にみんな死ぬのであれば、みんなで一緒に死にましょうよ。じぶんひとり生き残ったって、なんにも楽しくないから。」


コロナの流行は厄介で、日本だけあるいは石垣市だけで取り組んでも終わらず、世界で終わらないとどうせ終わらない。まず恵まれた国の私たちが率先して、私たちの闘いをとりあえず乗り越えることで、恵まれない国にできることがある。ちょっと極端に聞こえるかもしれませんが、見ず知らずの地球の裏側の人たちのことを思いながら選択するのも、気持ちを晴れやかにします。だってみなさん、ほんとうはまた、自由に海外旅行したいでしょ? パリでワイン飲みたいでしょ? ニューヨークでショッピングしたいでしょ? タイでパッタイ食べたいでしょ?

でも、海外旅行の壁は未だ高く、しばらくは消えないかもしれない。海外側ではなく、日本側の構造的な問題です。これについては、また別記事で。





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