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旅に出る:韓国の場合⑤

実は40000ウォンなんて楽勝で持っていた。
4人でお金を出し合って、換金し、一番お金にシビアな友人をお財布係さんにし、全て渡していた。

換金したばかりだったから、70000ウォンはあったはずだ。

命が惜しければとっとと払っておけばよかった。でももう遅い。



そうこうしてるうちにも、タクシーはどんどん進んでいく。

明らかに繁華街を避け、郊外に向かっているようだ。
ここで降りてももう元の場所は戻れない。

私はここで初めて後部座席の3人をみた。

小声で話しかける。


「どうする?降ろしてくれないよ?」
「ぼったくりタクシー、他にどうしたらいいって言ってたっけ?」
「えーと、なんか泊まってるところに頼んで交渉してもらうとか。。」
「あーそっかそっか。。」


と、ふいにかけられる急ブレーキ。
ブレーキにまた体が前に持っていかれる。

すると、




「20000ウォン!」


あ、下げてきた。
どうやら彼も早く終わらせたいようだ。



下げてきたけどどうしましょう?と、いう顔で私は後ろを見てみる。

しかしながらお財布係の友人はがんとして首を縦に振らない。

シビアだ。


ここで一言こう言った。
「ホテルに電話して話してもらおうよ」




と、その時、

「ホテル、ノーーーーーー!!!」


あ、「ホテル」なんか地雷だったらしい。

運転手はまた急発進し、あからさまな蛇行運転で脅してくる。
いよいよヤバくないかと緊張感が増す。


そして、またしばらくいくと急ブレーキで止まり

「10000ウォン!!」


ガンガン下がるなオイ。


またどうする?と目くばせするも、
お財布係の答えは「ノー」



いやもう本当に危ないと思うからどうにかして降りたくなってる私は
「いや、このままだとどこに連れてかれるかわからんよ。払って落ち着かせた方が。。。」

というと、誰かがふと
「というか、ナンバー控えた方が良くない?
と言った。


あ、嫌な予感。。

「ナンバーーー!ノーーーーー!!」


地雷多いなおい。
また急発進。


おそらく彼は通報を恐れているようだ。


タクシーはどんどん細い道へ細い道へ進み、
ついにやっと1台車が通れるかくらいの細さの道に入った。
あからさまに場末のバーの看板が見える。
が、すべての店は閉まっていた。


道の真ん中で急停止した運転手は
かなり疲れた表情で

「・・・5000ウォン!」と言った。


わかった!もう終わらせよう!
どこかわかんないけどとりあえず降りないと!お財布係を見た。すると一言、


「5000ウォンならホテルまで行ってくれたらいいやん」



・・・
いや絶対無理やから!

お財布係を説得し、運転手に
「オッケー!5000ウォンオッケー!降ろしてください!」

というと、お財布係はしぶしぶ財布からお札を出した。


その額、10000ウォン。

おつりの5000ウォンを渡す運転手。

いや、お釣り渡すんかい!


心の中で総ツッコミを入れながら大急ぎでタクシーを降りる私たち。
だが、恐ろしい量の買い物があり、なかなかスムーズに降りられない。


もらうものもらった運転手は
一刻も早くここから離れたくて仕方ない。

早く発進したくてエンジンをふかす。
その瞬間、すこしタクシーが前進した。

びっくりして全力でタクシーの窓や車体を叩いた。だって友達がまだ体半分乗った状態だったから。

一生のうちで車を全力で殴る経験は後にも先にもこれきりだ。



そして今後もない方向でお願いしたい。





転がり落ちるように全員が降りたその瞬間、運転手は猛スピードでその場を立ち去っていった。


タクシーが去ったその道は、街灯も何もない、真っ暗な道。

どっちが来た道なのか、どっちが帰る場所なのかもわからない。


言葉も通じない異国の真夜中の場末のバーの前で

私たちはただただ呆然とした。

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