黙示録解釈…「七つの頭と十の角を持った獣」

◼︎17章「七つの頭と十の角を持った獣」 

大淫婦がエルサレムを意味するとすると、この大淫婦が乗っている「七つの頭と十の角を持った獣」とはなんだろうか。 これについては、御使さんによる解説が黙示録に付けられている。 

"すると、御使はわたしに言った、「なぜそんなに驚くのか。この女の奥義と、女を乗せている七つの頭と十の角のある獣の奥義とを、話してあげよう。あなたの見た獣は、昔はいたが、今はおらず、そして、やがて底知れぬ所から上ってきて、ついには滅びに至るものである。地に住む者のうち、世の初めからいのちの書に名をしるされていない者たちは、この獣が、昔はいたが今はおらず、やがて来るのを見て、驚きあやしむであろう。ここに、知恵のある心が必要である。七つの頭は、この女のすわっている七つの山であり、また、七人の王のことである。そのうちの五人はすでに倒れ、ひとりは今おり、もうひとりは、まだきていない。それが来れば、しばらくの間だけおることになっている。昔はいたが今はいないという獣は、すなわち第八のものであるが、またそれは、かの七人の中のひとりであって、ついには滅びに至るものである。あなたの見た十の角は、十人の王のことであって、彼らはまだ国を受けてはいないが、獣と共に、一時だけ王としての権威を受ける。彼らは心をひとつにしている。そして、自分たちの力と権威とを獣に与える。彼らは小羊に戦いをいどんでくるが、小羊は、主の主、王の王であるから、彼らにうち勝つ。また、小羊と共にいる召された、選ばれた、忠実な者たちも、勝利を得る」。御使はまた、わたしに言った、「あなたの見た水、すなわち、淫婦のすわっている所は、あらゆる民族、群衆、国民、国語である。あなたの見た十の角と獣とは、この淫婦を憎み、みじめな者にし、裸にし、彼女の肉を食い、火で焼き尽すであろう。神は、御言が成就する時まで、彼らの心の中に、御旨を行い、思いをひとつにし、彼らの支配権を獣に与える思いを持つようにされたからである。あなたの見たかの女は、地の王たちを支配する大いなる都のことである」。" ヨハネの黙示録 17:7-18

この中で、わかりやすいヒントとして以下が挙げられる。 

・大淫婦(=エルサレム)がそれに乗っている。

・「七つの山」で象徴される。

・小羊(=イエス・キリスト)本人に戦いを挑む。 

・大淫婦(=エルサレム)を喰らい、焼き尽くす 

「七つの山 seven mountains」という言葉から想起されるのは、最も素直には、ローマ市を呼ぶ呼び方の一つである「七つの丘 seven hills」であり、エルサレムを滅ぼしたことから考えて「獣 = ローマ帝国」の解釈が成り立つ。  

ローマを「七つの山 SEPTEM MONTES」と結びつけて言及する仕方は紀元前から存在する。 

キケロ(BC1c)"to Atticus" 6.5

ウァロ(BC1c)"On the Latin Language" VI.24

ローマ帝国は紀元前1世紀のポンペイウスによるシリア・パレスチナ征服以来ユダヤの地を属州として従えており、ユダヤの政治や法については帝国の本国ローマとの二重の支配体制であった。これを「大淫婦が獣の上に乗っている」ということの意味として解釈できる。 

また十字架刑はローマ帝国の死刑方法であって、イエスに手を下したのはローマ帝国であるとも言える。 

 ただしエルサレムも「七つの山(שבעה הרים)」の上にある都市としての言及が紀元後ではあるもの確認できる。該当箇所の議論はわかりにくいが、箴言9:1, ヨナ2:6-7(KJV)を参照すると良い 

ラビ・エリエゼル(AD 9c)"Pirkei de-Rabbi Eliezer" 10.9

「大淫婦エルサレムが七つの山に乗っている」という言明の素直な解釈として、「大淫婦」もエルサレムの何らかの側面、「獣」もエルサレムの何らかの側面、という解釈も成り立つ。実際、ユダヤ戦争の経過を見ると、エルサレムの破滅の原因はローマ帝国による侵攻こそが決定的な要因であるが、内乱による自滅の側面も非常に強い。

また、イエスを殺したのはユダヤ人である、とも言える。また、エルサレムは他の都市で表現されることもあることが黙示録著者によって示されている。

"彼らの死体はソドムや、エジプトにたとえられている大いなる都の大通りにさらされる。彼らの主も、この都で十字架につけられたのである。" ヨハネの黙示録11:8

 ここでは、 七つの頭を持った獣の解釈として、 ①ローマ帝国である という解釈と、 ②エルサレムの、大淫婦に象徴される側面と別の側面である という解釈のどちらも棄却しないでおく。 この獣は13章にも登場するのでまた触れることにする。 


 

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