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第10話「つながり」


前回 第9話「自覚」


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オフィスにて


社へ戻ると、亜衣と伊丹のコンビがモニター保育園決定の〝既成事実”を作ったという電話を先に受けて、開発課内がざわついていた。

課長に会議スペースに呼ばれ、

「お前たち、やってくれたな!前代未聞だぞ! 社の承認が降りる前にモニターを決めちまうなんてな! いや、俺は怒られるだろうけど、これでもう予算を組むしかない流れに持っていけるぞ!よーし、よぉーし!」

課長はそう言って拳でもう片方の手の平を2、3回叩きながら喜んでくれた。

「あ、僕は今回足を引っ張ってしまいまして。。全部岡村さんの手柄です、はい。。。」

伊丹が頭を掻きながら言った。

「そんなことないわ!伊丹君が居てくれなかったら、、、トルコの話をしてくれなかったら、私自分と向き合おうなんて思えなかったもの! 本当感謝してるわ!」

亜衣は息を弾ませながらお礼を言った。

「そ、そうか? ならええけど。 俺もものすご勉強になったわ。今までは、たぶん勢いとかフレッシュさとかそういうので偶然うまく行ってただけで、ホンマの心通わせる営業が出来てたかというと、実際のところは怪しいってことが分かったわ。

自分の〝気持ち”が先行して、肝心の先生方の気持ちを解ろうともしてへんかったしな。いやー、未熟未熟の未熟者やー。たはは。。」

伊丹も今回の件を通して、いったん立ち止まって足元を見据えることができたようだった。

「え、自分の気持ちが先行って?」

亜衣が首を少し傾げながら聞いた。

「ん?いやまあそれはええやんか。。。
ひゃーw

というか課長、課長がえらい熱を入れてはるこの企画、実現に向かいそうでんな。これで次長に昇進でんな。」

伊丹が話を逸らすように言った。

「ん、、いやぁ、昇進なんかはいいさ。俺はこの課が好きだし、ずっと現場で開発の仕事に携わってたいからな。

でも今回の岡村君の保育園でのモニター決定は本当に嬉しいよ。あとは最終プレゼンだな。」

亜衣は課長に対して先週までの小言を言う嫌な上司のイメージはもう一切なく、なぜ自分の企画にこんなに肩入れしてくれるんだろうと、前向きな興味を抱くだけだった。

「あのぅ、喜んでいただけるのは嬉しいんですが、課長はなんで私の企画にそんなに熱くなってくださるんですか?」

他の社員の企画だってたくさんある。すでに進行中のプロジェクトだってある。その中で亜衣の園児管理システムにこだわっているようにも見える課長のことが不思議だった。

「ふーっ。。。」

課長が神妙な面持ちになった。

「・・・岡村君、伊丹君、、、俺はね、今年になって車通勤を辞めたんだけどね。。それは息子が関係しててね。。。」

課長がそばに置いてあるコーヒーサーバーのボタンを押しながら言った。

「今年の春にね、息子を保育園に入れたんだ。いくつも見学して、割と遠目だけど息子が『ここが良い』って言う所に決めたんだ。けっこう評判も良い所で、ここなら安心かなと思って入園した矢先のことで。。。」

言い難い気持ちを紛らわすようにコーヒーを飲む課長。

「入園してまだ3日目だったよ。春先で新しい先生もいて不慣れだったのかもしれない。

嫁がね、その日はたまたま買い物で保育園の近くに行ったついでに直接迎えに行ったんだ。ちょっと早めの時間だったらしくて、「すみません。もう引き取れますか?」って嫁が聞いたんだよ。

そしたら職員の1人が『息子さんは今日来てませんよ。』って。

送迎バスに乗せたのは嫁だから「そんなはずはない。今日の朝私バスを見送ったんですよ?」と言ってしばらく沈黙の後、、、

課長は唇を噛みしめた。

「その職員が慌てて駆け出した後を嫁が付いていくと、駐車場のマイクロバスの座席で泣き疲れてグッタリしている息子がいて。。。」

わなわなと震える課長。
手で口を抑える亜衣。

「春だったからな。たまたま気温が高くなかったから大事には至らなかったけど、これが夏だったらと思うと。。。」

課長は起こり得たかもしれない最悪の想像をかき消すかのように首を振った。

「息子はそれ以来な、車に乗れなくなってしまったんだよ。それどころか少し狭い所も極度に怖がるようになってしまって。。

その保育園の先生達はね、誠意を持って謝ってくれたけど、それ以降息子が怖がっちゃってね。

それで転園したんだ。近所の保育園は定員いっぱいで途中からなんて入れる所はなくて、、、何とか通える範囲で受け入れてくれる所を見つけてね。

息子は大型の路線バスなら付き添って乗ってあげれば大丈夫だから、毎朝新しい保育園まで送ってから、また俺は会社行きのやつに乗り直してるんだ。」

課長は片手をポケットに入れながら「暗い話を聞かせてしまったな」という感じで「ふーっ。。」とため息を吐いた。

「岡村君、君の園児管理システム、あれは本当に秀逸だ。何としても早期に世の中に普及させないといけないと思う。それが子を持つ親としての願いだ。」

課長が亜衣の目をまっすぐ見て言った。

亜衣は口元に軽く当てていた手を、今度は頬を強く掴むようにしながら

「か、課長、課長、わたしは課長のこと。。。」

亜衣は、おそらくはこれまで何度も本気のテンションでぶつかって来てくれていただろう課長のことを、〝新人のノリ”で疎ましく思っていた自分を恥じた。

「はははっ、俺も器用なほうじゃないからな。たくさん説教めいたことをしてしまったな。『採用試験でぶっちぎりの高得点で入社したホープ』が自分の課に配属されてさ、気負ってたのかもしれん。許してくれ。」

課長は緩んだ表情になってそう言ってくれた。

「けど君も怒られている時には、口を膨らませて明後日のほうを向くのは辞めたほうがいいぞ。『この昭和世代のパワハラオヤジめ』っていうのが顔に出てたぞ。」

そう言われて亜衣は、
(本当は「昭和世代のパワハラ〝クソ“オヤジ」なんだけど、それはこの際言うまい。。)

と思いながら、軽く握った拳を口元にやって「プッ」と吹き出してから、

「課長!私めはこれからも課長殿の下で勉強させていただきます!伊丹君にも負けないわよ!」

っと横目で伊丹のほうを見た。

結局〝既成事実“が効いたのか、保育園との契約書をいち早く作らねばならないということもあってか、部内会議でのプレゼンはなしで亜衣の企画はプロジェクト化されることになった。

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会話


〝偉業達成“ということもあって、この日は早めに帰社した亜衣は、例の保育園を覗きながら商店街で名物のつくねが入った串焼きセットをテイクアウトし、家で祝杯をあげようとルンルン気分で帰宅した。

「レオー!ご主人様のお帰りよー! ちょっと高めの缶詰買ってきてあげたわよ!」

レオナルドが「にゃーご!」と言いながら駆け寄ってきた。鼻をスンスンさせながら亜衣が持っている焼き鳥入りのビニール袋を嗅いでいる。

「これはダメよ。あんたはこっち。」

レオナルドに缶詰の蓋を開けてあげてから、自分は冷蔵庫から買い置きの酎ハイを取り出し、つくねをかじりながらグビグビっといった。

「ぷは〜っ!最高!」

商店街の焼き鳥の味が良いのはあるとしても、美味しい物を食べて素直に「むふふ〜、おいひ〜。」となったのは久しぶりだった。

「あ、Miky先生からメッセが来てる!
 なになに、、、

『昨日教えた水平線基準のトレードポイント、忘れないうちに体に染み込ませるんだし! でも、気が充実している状態でやるんだし! それには〝禅“が良いんだし!分からないなら遠慮なしに聞くんだし!どしどし聞くんだし!』

だって。

禅? 禅ってお坊さんが修行でやる座禅のこと? たしかに精神集中のためには良いって聞くわね。でも、実際どうやるんだろう? ヨガとはまた違うのかしら?」

食べ切ったつくねから鳥皮に切り替えて、モグモグしながら検索する亜衣。

ー禅とマインドフルネスー

「マインドフルネス? 聞いたことはあるけど、何だっけ? スピリチュアルな感じの、、、脳波の研究の時に聞いたのは覚えてるけど、お座なりにしてたのよね。」

焼き鳥と酎ハイを平らげてから、椅子にしっかり座り直し、本格的に調べ出す亜衣。

「どうも『禅は悟りのため』、その悟りの為の『集中を日常に活かす』のがマインドフルネス、、、みたいね。」

ピロン♪

メッセージの着信音が鳴った。
Mikyさんからだった。

「今日も少し話せるんだし?せっかく水平線トレードの核の部分をつかんだタイミングだし、ここで一気に〝マインド“を固めるんだし!」

Mikyさんからタイミングの良いお誘い。

「はい、ぜひお願いします!聞いてほしい話もありまして♪」

亜衣は仕事のこと、保育園のこと、自分の目覚めのこと等、Mikyさんに先生として同年代女子として聞いて欲しい気持ちだった。

「もしも〜し? お疲れサンガツ!
今日は早めに仕事を上がったンゴねー?」

(やっぱり変な喋り方w でも、可愛いw )

「Mikyさん、そうなんですよぉ。今日はちょっと仕事で大きな壁を越えたというか、人生の岐路で良いほうへ進めたというか。」

亜衣は弾んだ声で話し始めた。パソコン越しであるのが逆に何でも言いやすく、まして尊敬するMikyさんには自分の人生を知って欲しいという感じだった。

「それは良かったンゴねー。何があったか教えてクレメンスよー。」

そんな亜衣の気持ちを悟ってか、Mikyさんが話すように促してくれた。

亜衣は上司のこと、同期のこと、企画のこと、そして保育園のことを嬉しそうに報告した。

「それでその理事長さんっていうのが、当時のエンチョー先生で!」「ふぁっ!?」

「あの課長がすごい喜んでくれて!」「ぐう聖 課長ニキ。。。」

Mikyさんは都度リアクションをしてくれ、亜衣もその言葉のニュアンスは分からないまでも、Mikyさんが自分ごとのように聞いてくれていることでテンションが最高潮になった。

缶酎ハイの酔いも手伝ってか、成長を自分でも噛み締めたくてか、亜衣は今日の出来事を一気に話した。

「本当に良かったンゴね。。。『人は見たいようにしか見ない』けど、亜衣は勇気を出して本質を見るように頑張ったンゴね。」

Mikyさんが少しばかり真面目なトーンで言った。

亜衣はハッとした。

(〝流れ“が変わったのはいつ。。。?)

今朝バスの中で課長を見かけた時、昨日までの亜衣なら「お年寄りを助けるなんて格好つけちゃって。」という思いが1ミリも起きなかったと言えるだろうか?

出社後すぐに他の社員達の目がある中で、遅刻した課長を庇うかのように自分から相談を持ちかけただろうか?

その課長に保育園のことを聞かれ、自分から「訪問します」と言えただろうか?

意味不明男子だった伊丹が、社会人の顔になっていることに気付けただろうか?

そして保育園でも。。。

「ま、Miky先生、、、わたし、、、」

すべては前日のMiky先生の言葉がきっかけとなっていたことに亜衣は気付いた。

「ふふふ、オープンマインドが大事ンゴねー。」

そんな亜衣の心を見通すようにMiky先生が明るく言った。

(・・・すごっ!この人すごっっ! 自分と同い年?いやいや人生何回目なのよ! 
いったいどういう人なんだろう??声は可愛いけど、中身はもう仙人じゃん。いや、本当に仙人が可愛い子に乗り移ってるのかも。。。)

「ま、Miky先生って、もしかして〝視える人“ですか。。。?」

亜衣はもはや神通力のようなものを感じていた。

「ぶほっ、ちょっw、待っっw 草ww」

Miky先生が極めてスラングに、いやフランクに笑った。

「ワイはそんなんじゃないンゴよー。ただ、亜衣と違って、物心付いた頃から興味のあるものは何でも与えられてきたンゴねー。

日本のサブカルチャーが好きで、日本語もネットで覚えたンゴよー♪」

(ああ、それでちょっとアイドルを意識した喋り方とか女子高生が使ってそうな語尾とか、そういうスタイルなのね。可愛いw)

亜衣は続けて尋ねた。

「Mikyさんがお近くだったら、いつか女子同士でお茶でもしたいです♪ 私は都内住みですけど。。。」

実際に会ったらもっと魅力的な人に違いないと思いながら亜衣はMikyさんの気持ちを探るように言った。


「ん? 亜衣。。。ワイ、日本人じゃないンゴよ?」


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対話


「・・・え〜〜〜〜っ⁉️ 」

(へっ、はっ!? 外国の人? アイドルのコスプレ好き的な? ネットで日本語覚えたってマジで覚えたってこと!? そういう人たしかにいるけど!! 寛子だって「ジュラシックシリーズ」で英語覚えてたし。。。

でも、えっえっ?)

亜衣は思い返した。

(そういえば3歳くらいからチャートの規則性に惹かれて没頭していたって言われてたけど、トレード云々だけじゃなくて私なんか及びもしないガチの凄い人なのでは。。。)

確かに言語能力が高い人の中には、独学というまでもなく言語の仕組みを理解して短期間で何ヶ国語もマスターする人もいる。そしてそういう人は得てして複数の分野で他の秀才達と一線を画していたりする。

ましてMikyさんはチャートの規則性をおそらくは幼少期から自分で興味を持ってある種の法則に気づいていただろう天才である。

数学を始め、すでに体系化された学問を習得するという意味では亜衣も優秀な部類に入るタイプだったが、それとは全く違う質の凄さをあらためてMiky先生に感じたのだった。

「ま、Miky先生って、、、大学とかは、、、日本の大学に留学されたりしてたんですか?ま、Miky先生だったら飛び級で、、とかですか?」

亜衣は若いながらも何とか「日本人である自分」のキャリアの中で共通点を無意識に探そうとしたのか、具体的なことを聞いてみた。Miky先生ならば、国費留学生でもおかしくないなと思いながら、、、

「ん?日本の大学?いや、行ってないンゴよ。そもそもワイ、大学行ってないンゴねー。」

Mikyさんがあっけらかんと答えた。

亜衣は「優秀であれば大学に行っているはず」という思い込みで聞いてしまったことにまたもや自分でショックを受けた。

「え、あ、ごめんなさい。。。でもそんなに聡明でいらっしゃるのに、、、何かの研究をしたいとかは思われなかったんですか?」

この質問なら失礼ではないよなと思いながら恐る恐る聞く亜衣。

「ん? 研究? 研究なら自分でやってるンゴよ♪ 大学施設の中だと好きなことができないンゴねー。今は自由に出来るから最高の環境ンゴねー。」

「⁉️」

自分で研究って、それもう歴史上の人物じゃん。。。と思いながら、

「もうMikyさんはご自分で研究というより、その能力を世の中に広めたほうが良いと思います。歴史上の偉人みたいに!」

と進言した。

「ぶほっw  歴史上の偉人w たしかにレオナルドみたいに皇帝の目に止まって宮殿に呼ばれたら嬉しいンゴねーw」

とMikyさんはおどけるように言った。

「レオナルド!うちの猫、レオナルドっていうんですけど、あっ、それはディカプリオから取った名前で。 Mikyさんの言われるレオナルドっていうのは、、、ダ・ヴィンチのことですよね!」

と亜衣はやっと話が合って嬉しいという感じで言った。

「ん? ダ・ヴィンチも凄いけど、レオナルドといえば、、、」

Mikyさんは当然知ってるよね?という感じで、

「レオナルド・フィボナッチのことンゴよ!」

と返した。

※レオナルド・フィボナッチ

https://onl.la/jyFh8ed


「ああっっ、 フィボナッチの名前、たしかにレオナルドだ! わぁ〜、何か凄い!」

亜衣はミーハーな理由から名付けた愛猫の名前と、自分が物心付いてすぐに虜にされた数の神秘であるフィボナッチ数とがつながっていたことでテンションが上がった。

とはいえ、Mikyさんとの会話をことごとく外している亜衣は、「ああ、もう常識の範囲内の自分がこの人に何を聞いても想定外の答えが返ってきて会話にならないな。」と思い、

「ご、ごめんなさい。私、野暮なことばかり聞いてますね。。。で、では、ま、Mikyさんはどんな子どもだったのか、お聞かせ願えますでしょうか?」

別に聞き取りする義務もないのだが、流れ的に何とか情報を引き出そうとする亜衣。

「ぶほっw インタビューが始まったンゴ? だったらそこは『ワタクシメにお聞かせください。』って言ってほしいンゴねw」

Mikyさんがからかうように、また、和ませるように言った。

「ワイは、、、亜衣なら分かるかもしれないけど、施設育ちだったンゴよ。 」

亜衣は小6の時、うっかりIQが高いことをバラしてしまい校長室に呼び出され、「施設送りになるのか」と心配したのを思い出した。自分程度でそんな心配をするのだから、本当に凄い人は実際にそういう研究施設に。。。

いやむしろMiky先生ほどの人なら研究施設で生まれ育ったのかもしれない。。と都市伝説ばりの境遇もMiky先生ならあり得るような気がした。

※ギフテッド教育https://miraii.jp/others-21

※アメリカの例https://en.m.wikipedia.org/wiki/Davidson_Academy_of_Nevada

いや、Miky先生と実際に話して凄さを実感している亜衣にはもうそうとしか思えなかった。

(そういうエリート創出の取り組みがあるっていうのはテレビの特集で見たことがあるけど、Miky先生がそうだったとは。。。)

Miky先生は言葉を選びながら話を続けた。

「ある時父親代わりの人に『お前は日本の精神文化を学ぶことが向いてる』と言われたンゴね。

それでネットを通じて日本語も覚えて交流もして、「禅」の素晴らしさに出会ったンゴね。それはおそらく多くのトレーダーにとって〝不可避“なメンタルコントロールとつながることでもあるンゴよ。」

Mikyさんの口から「禅」という語が出たことで亜衣は思い出した。今日はそれを聞こうと思っていたのだった。

すぐに出来ちゃうノリで、何でもマスターしてそうなMiky先生が「禅」の修行をしている? Miky先生ほどの人でも精神修行をしないとトレードでは勝てないの? マジ。。。

「Miky先生、外国の方っていうのでビックリしましたけど、、、日本の文化に興味があって、日本人より日本に精通している留学生、たしかに大学の時も少なからずいました。

そういえばキャンパス内でも和服姿の留学生達が茶道部の勧誘をしてました。『ニッポンのワビ・サビをダイジにしましょう』って感じで。

Miky先生は留学もせずに独学で日本語もマスターして、普通の日本人が経験したことのない禅までやってらっしゃるんですか? 凄いな。。。」

亜衣は仙人のような、柔らかいのだけど絶対的に芯が通っているような雰囲気のMikyさんが禅の修行をしていると聞いて、何か腑に落ちるものがあった。

「禅、、、かぁ。知ってはいるけど、知らなかったなぁ。。」

亜衣はもっと早くそういうものに触れていれば、少しは短気な性格も今頃マシになっていて人生も芯のあるものになっていたかもしれないと思った。

「私でもまだ、、、間に合いますか?」

亜衣はもう後押ししてほしい感を丸出しで聞いた。

「逆に子どもの時からやってる人なんてそうそういないンゴよ!  鎌倉に誰でも参加できる座禅会をやっているお寺があるらしいから次の休みにでも行ってみるンゴよ!」

(Mikyさん、海外にいながら日本のことに詳しい。何か嬉しい。)

亜衣はそう思いながら

「はい、行ってみます! 
〝ゼンは急げ“って言いますし!」

と答えた。

「ぶほっ!! 大草原www」

2人はこの日お互いの境遇を確認しあい、「また明日ね〜。」と昔からの友達のような雰囲気でリモートを終えた。

次回 第11話「岐路」


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