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Case 16-2022: A 55-Year-Old Man with Fevers, Night Sweats, and a Mediastinal Mass

CASE RECORDS of the MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL

Case 16-2022: A 55-Year-Old Man with Fevers, Night Sweats, and a Mediastinal Mass
David C. Fajgenbaum, M.D., Reece J. Goiffon, M.D., Ph.D., Jacob D. Soumerai, M.D., and Cynthia K. Harris, M.D.
N Engl J Med 2022;386:2036-48.

PRESENTATION OF CASE
Dr. Jessica L. Logeman (Medicine): 55歳の男性が縦隔の腫瘤(それは変動する発熱、寝汗、倦怠感の性差中に見つかったものであるが)の評価のために当院に搬送された.

男性は当院受診の3ヶ月まで健康だったが、その後倦怠感と一過性の掻痒を伴う丘疹が前腕に出現した.その後の6週間で、前腕の皮疹は改善し倦怠感が残った.男性は次第に日中に昼寝をする(take naps)ようになり、仕事(建設業)に一日中従事することができなくなった.男性はさらに寝汗と発熱(37.8度)を自覚するようになった.

受診の27日前、男性は倦怠感のために仕事ができなくなったので、他の病院の救急部門で診療を受けた.血液中のアナプラズマとバベシアの核酸定量検査は陰性だったが、ライム病のスクリーニングと確認検査でIgMとIgGが陽性だった.ライム病の診断で、ドキシサイクリンが開始になった.しかし胃腸障害の副作用のため、ドキシサイクリンが中止になり、アモキシシリンが残りの14日間処方された.

 当院受診の16日前、男性は胸部不快感を自覚するようになった(男性は左胸部の下方にソフトボールのような感覚があると表現した).胸部不快感のため呼吸しづらくなったため、男性のプライマリケア医は男性を他院の救急外来に紹介した.診察で、男性は疲労や倦怠感、寝汗、発熱が悪化していると訴え、びまん性の関節痛、筋肉痛、頭痛、視覚的な閃光を伴う羞明、労作時呼吸困難、浮腫、腹部膨満と不快感、水様性下痢(1日3回)も伴うことを話した.

 身体所見では、体温36.8℃、血圧145/84mmHg、心拍数61/分、SpO2 99%室内気だった.体重83.9kg、BMIは28.1だった.前胸部に淡いびまん性の斑状紅斑を認めた.腹部は軽度鼓腸しており、全体に圧痛があった.血液検査ではALT、AST、ビリルビン、リパーゼは正常だった.他の血液検査結果はTable 1に示す.血液培養も採取された.心電図は正常だった.生理食塩水と経口アセトアミノフェンが開始され、経静脈的にピペラシリンタゾバクタム、ヒドロモルフィン、オンダンセトロンが開始になった.男性は他院に入院した.

Table 1 (N Engl J Med 2022;386:2036-48より)

Dr. Reece J. Goiffon: 当院受診の15日前、胸部〜骨盤部の単純C T検査が施行され、二葉の不均一な軟部組織の腫瘤(6.1cm*2.8cm)が前縦隔に指摘された.気管分岐下と縦隔の複数のリンパ節腫脹(短軸で15mm以上)、複数の腸管膜リンパ節腫脹(最大短軸で11mm)、腸管膜脂肪織濃度上昇、少量の腹水を認めた.

Dr. Logeman: 腹部不快感は継続し、ピペラシリンタゾバクタムは中止され、セフトリアキソンが投与された.2日後、腹部の単純CT検査が行われ、新たな肺うっ血と新たな少量の両側性胸水、腹水の増加を認めた.男性は更なる評価のために2番目の病院へ転院となった.

  身体診察では、軽度の腹部圧痛と膨満、下肢浮腫が特記すべき異常だった.血液中のALT、AST、ビリルビン、尿検査は正常だった(Table 1).PDF-PETでは、軽度だがFDGの取り込みが、前縦隔の腫瘤にあり、 胸水と縦隔リンパ節も軽度陽性になった.

 その翌週も、呼吸困難感と腹痛は持続した.浮腫は腹部、足、顔にまで広がり、体重は93.0kgになった.経静脈的なセフトリアキソン、メトクロプラミド、ヒドロモルフィン、ラクツロースがはじまった.更なる血液検査が行われた(Table 2).

  2番目の病院に入院し8日目にvideo-assisted thoracic surgery(VATS)が行われた.縦隔は炎症所見があるとの結果だった.男性は胸水の除去術、縦隔の脂肪織の生検と気管分岐下のリンパ節((level VII)の生検を受けた.生検検体の病理所見の検討では、縦隔軟部組織は線維性結合組織と脂肪組織の繊維化を伴っており、軽度の炎症所見と脂肪壊死、著明な毛細血管の増殖と鬱血所見があった.リンパ節は病理検査で軽度異常と報告された.生検材料の微生物学的評価では、白血球が散見されるものの、抗酸菌や真菌の所見はなかった.生検材料のフローサイトメトリでは、縦隔軟部組織は細胞集団の偏りはなかった.リンパ節はポリクローナルのB細胞と不均一なT細胞集団を含み、悪性リンパ腫の所見はなかった.検体の細菌、真菌、抗酸菌培養は陰性だった.胸水の細胞診検査では、反応性の中皮細胞、リンパ球、組織球を認め、悪性細胞はなかった.

  処置の後に、クレアチニン値は2.93mg/dLに上昇した(基準値 0.5-1.30).尿沈渣では硝子円柱と顆粒円柱を認めた.フロセミドの点滴が開始され、2番目の病院での15日目に、男性は当院へ転院した.

  到着時、男性は倦怠感の持続、軽度の呼吸困難、腹部の張り、浮腫、食欲不振を訴えた.嘔気、嘔吐、下痢、胸部の皮疹は改善した.発熱と寝汗は増悪と寛解を繰り返しながら数週間続いた.間欠的な羞明と頭痛があったが、項部硬直や音声過敏などの他の神経学的症状はなかった.

  男性には既往歴がなく、成人するまで定期的な医学的ケアを受けていなかった.男性はイブプロフェンとアセトアミノフェンを頓用で内服しており、薬剤アレルギーはなかった.建設現場での仕事では粉塵に暴露していた.男性は妻、子供、ペット(犬と猫)とニューイングランドの海に近い木々に覆われた地域に住んでいた.男性は仕事やゴルフのために、しばしば屋外で過ごしていたので、ダニに噛まれることもあった.男性は過去に地中海やオセアニアに旅行し、最近は米国南西に旅行した.喫煙や違法薬物の経験はなく、飲酒も滅多にしなかった.男性の父親は前立腺癌と大腸癌に罹患したことがあった.

  入院時体温 36.8℃、血圧 148/82mmHg、心拍数 78回/分、呼吸数 18回/分、SpO2 93%(室内気)だった.体重91.7kg.神経学的所見は異常なかった.左肺に吸気時にラ音を聴取した.腹部は軽度張っており、びまん性に圧痛があった.手術した部位である右胸部に軽度の変動を認めた.頸部、鎖骨上、顎下、オトガイ下、腋窩、鼠径に触知できるリンパ節はなかった.下肢に2+の圧痕を残す浮腫を認めた.

  血液検査ではAST、ALT、ビリルビン、セルロプラスミン、フィブリノーゲン、葉酸、グロブリン、ハプトグロビン、ビタミンB12は正常だった.他の血液検査所見をTable 1に示す.尿検査では外観は混濁した黄色の尿であり、蛋白尿 2+、赤血球 3-5/HPF(基準値 0-2).ECGは正常だった.

Dr. Goiffon: 胸部〜骨盤部の造影CT検査では、前縦隔腫瘤は6.1cm*1.9cmで、前回のCTより僅かに縮小していた.血管周囲、気管支下、気管分岐部、大動脈-肺動脈縦隔リンパ節は不均一の増強効果を伴い腫大していた(最大短径12mm).肺鬱血所見の増強、中等度の両側胸水、中等度の腹水、軽度の脾腫、複数の数cmの腸管膜リンパ節の所見があった.

Dr. Logeman: 入院3日目と4日目に、頭部MRIとTTEがそれぞれ施行されたが異常はなかった.フロセミド点滴とアセトアミノフェンが開始された.髄液穿刺では無色透明な髄液が採取され、初圧は測定されなかった.髄液所見はTable S1に示す.5日目に行われた腹部エコーでは腎サイズは正常で水腎症はなかった.腹水穿刺が行われ、腹水分析結果はsTable 1に示す.

Dr. Goiffon: 13日目に胸部MRIが計画されたが、仰向けに姿勢で呼吸困難が出現したため検査を終了できなかった.検査が完了する前に得られた画像では、前縦隔の軟部組織腫瘤は定常のgradient echo imagingで低信号を示した.腫瘤は当院に転院になる前に撮影された胸部CTより小さくなっていた.さらに、腫大した縦隔リンパ節、大量の両側胸水、腹水、手術部位の血腫を認めた.

Dr. Logeman: 更なる血液検査を施行し(Table 2)、診断を下した.

Figure 1(N Engl J Med 2022;386:2036-48より)

Table 2 ((N Engl J Med 2022;386:2036-48より)

Table S1=Table 2(N Engl J Med 2022;386:2036-48より)

DIFFERENTIAL DIAGNOSIS

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