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42年振りに「新・汽車のえほん」が出たー!

手元に横長A5変形判の絵本がある。
『ほんとうにやくにたつ機関車』クリストファー・オードリー作・クライヴ・スポング絵・金原瑞人訳・ポプラ社刊
表紙の水彩画は、手前におそらく世界で一番有名な青い機関車、車体にナンバー1を付けたトーマス、奥には4を付けたゴードンが並ぶ。
自身もしくは我が子が夢中になった、幼年時代ちょっとだけかすった、好きだった、苦手だった、等々、人それぞれとは思うが、世界中に大勢のファンのいるキャラクターなのは間違いないだろう。

タイトルの上に、「新・汽車のえほん27」の文字がある。
1巻~26巻は、英国では1945年からおおよそ毎年1冊のペースで刊行されてきた。
日本では1巻~6巻が1973年、7巻~15巻が1974年、というように、英国と同じペースとはいかないが、桑原三郎氏・清水周裕氏の名訳を得てポプラ社から刊行、広く子ども達の支持を得てきた。
図書館に行って巻末の重版回数や表紙の擦り切れ具合を見ればその支持度を実感して頂けると思う。(もっともその後新装版が出ているので、図書館の本も装い新たに迎えてくれるかもしれない)

1巻~26巻の著者は、麻疹にかかった息子クリストファーのため、意思をもつ機関車たちの物語を語り聞かせたことにはじまり、やがてソドー島の世界観を創り上げるに至ったウィルバート・オードリー牧師である。
物語とキャラクターの豊かさはここに書くまい。
会話の楽しさ、子どもが読んでもわかりやすい顛末と、そこに社会状況への指摘を盛り込む手腕など、言い始めたらいキリがないだろう。

さて、ウィルバート・オードリーの手による最終巻である26巻が英国で出たのは1972年、日本では1981年であった。
1冊の中に物語が4編(6巻のみ5編)、それが26冊。
様々な機関車たち、それからディーゼルやバスやヘリコプターや…更には人間も含めた感情豊かなキャラクター達が、ソドー島で繰り広げる物語世界を堪能した人々は沢山いるだろう。
また、絵本には触れずとも、TVで放映された映像作品を楽しんだり、模型や玩具等で遊んだりコレクションしたり、更には日常の中でキャラクターグッズを愛用したり、という人も大勢いる。
もしかしたら、トーマスのお話はもう十分にあって、今ここにある105の物語を繰り返し楽しむことができれば幸せだと納得していた人も多いのかもしれない。

だが。英国では前作から間をあけること11年で、27巻が出版されたのだ。
作者はウィルバート・オードリーの長男にしてトーマスの名付け親であるクリストファー・オードリー。
彼もまた新刊を出し続け、2011年の42巻でシリーズを完結させた。
それを知っていたら、クリストファー作品の日本語版を見たい読みたい!と欲する人は多かったのではないだろうか。
何せ、1巻~26巻は世代を超えて繰り返し読み継がれているし、今なお映像作品は新しくなって放送され、模型も関連グッズも、多くのファンの手に渡り続けているのだ。

そして42年ぶりに刊行された新・汽車のえほんである。
金原瑞人氏の名前の通り瑞々しい翻訳を得て出版された『ほんとうにやくにたつ機関車』にはいろいろと驚かされる。
「ふとっちょのきょくちょう」ではなく「トップハム・ハット卿」として現われた彼が、泥棒捕獲の役に立ったトーマスを賞賛する言葉には、確かな「歴史」が感じられる。
ソドー島の機関車たちが、時にはいたずらしたりうっかりしたりしながらも懸命に支線本線を走り回っていた日々から、否応なしに時間が経過したことを感慨深く思わずにはいられない。
そうかと思うと、ブリット・オールクロフトのテレビシリーズでは比較的早い時期に放送されたエピソードが、本作で書かれていたりして、嬉し恥ずかし久しぶり!と挨拶したくなったりもする。
伝統通り4編からなる本作のラストを飾る1編では、パーシー・ダック・トーマスが三重連を成す。
まさに彼らの声が聞こえるような本文はもちろん、三台の機関車が連なるさまを描いた挿絵もたまらない。
プラレール等を持つ子であれば、きっと我が手でこの三連結の姿を作って悦に入ることだろう。

長々と書いてきたが何を言いたいのかというと。
英国既刊28巻のJames and the Diesel Engines(1984年)、29巻のGreat Little Engines(1985年)、30巻のMore About Thomas the Tank Engine(1986年)、それからそれから……!!!
どうか日本語版も出版されますように。
日本の隅々で待っている昔からのファン達、そしてこれからファンになるであろう沢山の子ども達のために。

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