黒井真

ネットの片隅で物書く犬人間。わん。 読んでいただけると喜びます。応援していただけると舞…

黒井真

ネットの片隅で物書く犬人間。わん。 読んでいただけると喜びます。応援していただけると舞い上がります。

最近の記事

ハヤカワ春のロートル祭り

「ヤ○ザキ春のパン祭り」みたいなノリでタイトル付けてみました。早川書房非公認の推し企画。ワタクシが勝手に小説をお勧めする企画です。 春はロートル 四月ってね、出版業界の皆さん、「新社会人応援」とか謳って、明るくてポジティブな気持ちになる小説をどうぞ! なんて言ったりするけど、ぶっちゃけ、新社会人ってそんなに余裕ないですよね?  自分が就職したての頃、そんな余裕ってありました?  社会人として必要な実用書みたいなものを読んで、実務レベルの知識を付けるのに必死だったし。ってい

    • 読了メモ『小さな黒い箱』

      アマゾンの紹介文 謎の組織によって供給されるその金属の黒い箱は、別の場所の別人の思考へとつながっていた……。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』原型短篇である表題作、タイムトラベルをテーマにした後期の傑作「時間飛行士へのささやかな贈物」、近未来アメリカを描く政治風刺連作「待機員」「ラグランド・パークをどうする?」、書籍初収録作「ラウタヴァーラ事件」をはじめ、政治/未来社会/宗教をテーマにした全11篇を収録。 「小さな黒い箱」 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のマーサ

      • 読了メモ『変数人間』

        『変数人間』 アマゾンの紹介文↓ すべてが予測可能になった未来社会、時の流れを超えてやって来た謎の男コールは、唯一の不確定要素だった……波瀾万丈のアクションSF中篇の表題作、奇妙なゲームに明け暮れる地下シェルターに暮らす人々を描く中期の傑作「パーキー・パットの日々」、同名映画原作のSFアクション「ペイチェック」をはじめ、短篇集初収録の掌篇「猫と宇宙船」ほか、ディック得意の超能力アクション&サスペンス全10篇を収録した傑作選。 以下、読了後の感想メモ。 「パーキー・パットの

        • 『歌われなかった海賊へ』読了メモ

          『歌われなかった海賊へ』読了。  前作に引き続き、素晴らしかったので、思いついたことなどメモしておく。メモなので文章としてあまりまとまっていないがご了承いただきたい。  まずは、ネタバレにならない程度に前半部分の内容。  舞台は敗色濃厚な第二次世界大戦末期のドイツのある地方。ナチズムによる思想統制に反抗する若者たちがとあるきっかけで知り合い、「エーデルヴァイス海賊団」を名乗り、喫煙したり、禁止された外国のラジオを聞いたり、ナチの思想統制によって創設された「ヒトラー・ユーゲン

        ハヤカワ春のロートル祭り

          表現の自由か検閲か

          「私はあなたの説には反対である。 しかしあなたがそれを発言する権利は命をかけて擁護する。」 "民主主義の、そして言論の自由の大原則としてしばしば引用される言葉だ。  KADOKAWAの出版中止の件で、この言葉をつぶやいている出版業界内の人を見かけたのだが、ちょっと違和感を覚えたので、意見を書き留めておく。  そもそもこの言葉は、1906年にS・G・タレンティアにより書かれた『ヴォルテールの友人』のなかの一節だ。  1906年である。  当然、パソコン・スマホもインター

          表現の自由か検閲か

          「ペドフィリア差別に反対します」なるタグに反論してみる

          「X」を見て驚いた。「ペドフィリア差別に反対します」なるタグがあるらしい。  このタグを作った人によると、「チャイルドマレスターとペドフィリアは違うし、行動に移さなければ内心の自由だー、だから差別するなー」ということらしい。  そもそも、SNSで声を大にして叫び、タグを広めている時点で内心の自由ではないだろう、というツッコミをしたくなるが、それに加えて複数の理由から問題があると思うので、このクソタグに反証する理由を挙げていく。 被害にあった児童が混乱する、傷つく、声を上げに

          「ペドフィリア差別に反対します」なるタグに反論してみる

          実家の片づけシリーズ~謎の和装小物

           母から受け継いだ、珊瑚で出来たっぽい<何か>。  中心部から端に向けて細くなっていき、端はS字の金具になっている。濃いなす紺のベルベットの箱の中には、有名和服店のブランドロゴ、「伊呂京可」という単語、¥2500の文字が書かれた紙がある。  母曰く「何か、和装小物らしい。帯飾りか何かじゃないか」とのことなのだが、普段和服など着ない自分には、どのように使うのか皆目見当がつかない。 「伊呂京可」でググると、同じような形状で、おそらくは象牙で出来ていると思しき物体の画像が出て来

          実家の片づけシリーズ~謎の和装小物

          実家の片づけシリーズ~20代の頃履いてたデニム

           先日、実家から引っ越しの手伝いで呼び出された時の話。   「アンタが置きっ放しにしていた荷物、袋にまとめておいたから」  姉に言われた通り、部屋の隅っこには大きめの袋があった。中には大昔の服と下着類。帰省したときに部屋着として着るため、いくらか残しておいたものだ。  記憶の彼方から時空を超えてやってきた、酸化した脂の臭いを放つパジャマや下着と共に、大昔に買ったデニムが出て来た。  確かこれは、まだ20代の頃に買ったものだ。しかし、あまり傷んではいない。  とりあえず、

          実家の片づけシリーズ~20代の頃履いてたデニム

          実家の片づけシリーズ~祖母のルーペンダント

          「ちょっと手伝いに来い」と、実家から呼びつけられた。  母がサービス付き高齢者住宅に移るので、今住んでいるマンションを引き払う、ついてはモノの処分とその他もろもろの雑事を手伝え、ということだ。  モノの処分とは言え、もともと私が生まれ育った一軒家は随分前に処分している。その時にかなりのモノを整理して今のマンションに引っ越したのだから、そう多くはないはず……と思ったのが甘かった。  よくぞここまで、というほどに溢れかえった服と、<コレクション>として集めた陶磁器やらガラス器

          実家の片づけシリーズ~祖母のルーペンダント

          買ってよかった本

          『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬氏  言わずと知れた、直木賞ノミネート&本屋大賞受賞作。  発売時のポスターに並ぶ、そうそうたる顔ぶれによる推薦コメントに興味を引かれたのですが(特に桐野夏生氏のコメント)、https://twitter.com/NAKAMAshinbun/status/1461277626111184898/photo/1  いや、実際素晴らしかったです。もう私ごときが何か言うのもおこがましい。しいて言うなら、こちらのポスターの三浦しおん氏の言葉が、私が思

          買ってよかった本

          #2000字のホラー参加小説「トモダチ」

          「ちゃんと持ってきた? カネ」  私が無言で俯いていると、胸のあたりを小突かれて、私は土の上に倒れ込んだ。それでも、土が柔らかく受け止めてくれたのでそれほど痛くない。 「アンタみたいな根暗なコミュ障に声をかけていじってやってるんだから、こっちが困っている時にトモダチとして金ぐらい出してくれっつってんの。とっとと言われた通りに金出し……うわっ!」  顔を上げると、彼女の身体が半分土に埋まっていた。もう一人は、びっくりしすぎて棒立ちになっている。あの時と同じだ。 「いやっ

          #2000字のホラー参加小説「トモダチ」

          #2000字のホラー参加小説「排水口」

          「ねぇ、なんで長袖? 暑くない?」  ノートでハタハタと顔をあおぐ敦子の言葉に、瑞恵は困ったような顔をして答える。 「うん……暑いんだけど。半袖は、ちょっと」 「何? まだ出してないの? 今週、これからドンドン暑くなるらしいから死ぬよ?」 「いや、出してるんだけど……着れなくて」  もじもじと制服の袖口をいじっている瑞恵に、敦子は遠慮のないツッコミを繰り出す。 「なに? あ、ムダ毛処理? ダルいよねー、あれ。あたしも昨日お風呂場で慌てて剃ったんだけど、ちょっと残ってる

          #2000字のホラー参加小説「排水口」

          #2000字のホラー参加小説「オンラインゲーム」

           コンビニで買ってきた弁当を腹に収めたら、PCの電源を入れて、部屋の電気を消す。それから、いつものサイトにログイン。  俺は社畜のゲーマーだ。  最近のお気に入りは、うっかり広告バナーをクリックして、偶然見つけたオンラインゲーム「エンカウンター・アンド・バトル」。  初めて見たときは、「ゲーム紹介サイトでもSNSでも聞いたことがないゲームだし、どうなんだろ」と思ったけど、実際にやってみたらめっちゃ面白くてすぐにハマってしまった。  一番いいのは、ログインごとの強制ガチ

          #2000字のホラー参加小説「オンラインゲーム」

          #2000字のホラー参加小説「祖母の老眼鏡」

           最近、祖母が宙に向かって話し始めた。まるで、誰かがそこにいるかのように。私はそれを気味悪く感じたけれど、父も母も、知らん顔をしている。  私は思い切って、祖母に「誰と話しているの?」と尋ねてみた。  祖母は、自分がかけていた老眼鏡を私に見せて、こう言った。 「内緒だけどね、この新しい老眼鏡をかけるとお爺さんが見えるの」  祖父は何年も前に他界している。  祖母はしっかりしていると思っていたのだけど、認知症になってしまったのだろうか、と悲しく思った。  そうして、父と母

          #2000字のホラー参加小説「祖母の老眼鏡」

          #2000字のホラー参加小説「コワーキングスペース」

           携帯を確認すると、妻からのショートメッセ―ジが入っていた。 「帰り、何時頃になりそう?」  目の前のパソコン画面には作りかけの資料。もう午後八時に近いが、仕事の方はまだ、しばらく終わりそうにない。  メールの文面から「早く帰って来て欲しい」という妻の言外の催促の匂いを感じ取り、続きは家に持ち帰ってやろうかとも思うが、息子の甲高い声も頭に浮かぶ。  ――こっちでやった方が、集中できて効率がいいんだよなぁ。静かだし。  俺は辺りを見回した。  コロナ以降、急速に増えた

          #2000字のホラー参加小説「コワーキングスペース」

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