一般基準 4 不正と違法行為

監査人は、財務諸表の利用者に対する不正な報告あるいは資産の流用の隠蔽を目的とした重要な虚偽の表示が、財務諸表に含まれる可能性を考慮しなければならない。/また、違法行為が財務諸表に重要な影響を及ぼす場合があることにも留意しなければならない。

一般基準4

監査人は、職業的専門家としての懐疑心をもって、「不正及び誤謬により財務諸表に重要な虚偽の表示がもたらされる可能性」に関して評価を行い、その結果を監査計画に反映し、これに基づき監査を実施しなければならない。

実施基準一5

監査人は、職業的専門家としての正当な注意を払い、懐疑心を保持して監査を行わなければならない。

一般基準3

監査人は、監査の実施において不正又は誤謬を発見した場合には、経営者等に報告して適切な対応を求めるとともに、適宜、監査手続を追加して十分かつ適切な監査証拠を入手し、当該不正等が財務諸表に与える影響を評価しなければならない。

実施基準三6

監査人は、虚偽の表示が生じる可能性と当該虚偽の表示が生じた場合の金額的及び質的影響の双方を考慮して、固有リスクが最も高い領域に存在すると評価した場合には、そのリスクを特別な検討を必要とするリスクとして取り扱わなけばならない。/特に、監査人は、会計上の見積りや収益認識等の判断に関して財務諸表に重要な虚偽の表示をもたらす可能性のある事項、不正の疑いのある取引、特異な取引等、特別な検討を必要とするリスクがあると判断した場合には、そのリスクに対応する監査手続に係る監査計画を策定しなければならない。

実施基準二5

監査人は、専門家の業務を利用する場合には、専門家としての能力及びその業務の客観性を評価し、その業務の結果が監査証拠として十分かつ適切であるかどうかを検討しなければならない。

実施基準四2

◆不正
不当又は違法な利益を得るために、経営者、取締役等、監査役等、従業員又は第三者による他者を欺く意図的な行為をいう。

◆誤謬

◆違法行為

重要な虚偽の表示の多くは、財務諸表の利用者を欺くための不正な財務報告や、資産の流用などの不正行為を隠蔽するための意図的な記録の改竄などによって行われると考えられる。

◆不正な財務報告
財務諸表の利用者を欺くために財務諸表に意図的な虚偽表示を行うことであり、計上すべき金額を計上しないこと又は必要な開示を行わないことを含んでいる。

不正は意図的であるがゆえに、
・文書の偽造
・取引を故意に記載しない
・意図的な不実表示
内部統制の無視
の行動が想定され、不正を隠蔽するための巧妙かつ念入りに仕組まれたスキームを伴うことがある。
そのため、誤謬を発見するのに有効な監査手続も、不正による重要な虚偽表示のリスクとの関係では適切でないことがある。
不正による重要な虚偽表示を発見できないリスクは、誤謬による場合よりも高い。

■論点整理
二  3 監査の役割 (2) 
★財務諸表の重要な虚偽記載の主要な要因
・ 資産の流用
・ 証憑書類の偽造・改竄
・ 会計記録からの取引の隠蔽・除外
・ 架空の取引記録
・ 会計基準の不適切な適用等を意図的に行う行為
これらの行為を発見する監査の姿勢をより重視していくことを明記することが適当と考えられる。ただし、監査による不正や違法行為の発見には一定の限界があることも同時に理解されるようにすることが必要である。
なお、違法行為に関しては、それが会計処理に影響するものである場合には不正と同様に考えられるが、会計処理には影響しないものもあることを考慮する必要がある。

■監査基準の改訂2002
財務諸表の虚偽の表示は、経営者による会計方針の選択や適用などの際の判断の誤りのみならず事務的な過誤によってももたらされるが、/重要な虚偽表示の多くは、財務諸表の利用者を欺くために不正な報告(いわゆる粉飾)をすること、あるいは、資産の流用などの行為を隠蔽するために意図的に虚偽の記録や改竄等を行うことに起因すると考えられる。
そこで、監査人はこのような不正等について特段の注意を払うとともに、/監査の過程において不正等を発見した場合には、経営者等に適切な対応を求めるとともに、その財務諸表への影響について評価することを求めることとした。
なお、違法行為については、それ自体を発見することが監査人の責任ではなく、その判断には法律の専門的な知識が必要となることも多い。/また、違法行為は必ずしも財務諸表の重要な虚偽の表示の原因となるものではないが、/監査人が重要な虚偽の表示につながる虞のある違法行為を発見した場合には、不正等を発見した場合に準じて適切な対応をとることになる。


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