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~booked vol.9『持続可能な資本主義』開催後記~


本を読まずに参加できる読書会「booked」は1周年を迎えました。今回は初めての平日開催。参加者の皆さん、ありがとうございました。

第9回の本、新井和宏さんの著書『持続可能な資本主義』は、この見出しで始まります。

世界中で資本主義が「息切れ」している

何が本当の問題なのか?
どう変わらなければならないのか?

鎌倉投信の創業メンバーの新井和宏さんが、現在の資本主義社会への疑問と来るべき新しい価値観の社会を提唱する一冊です。


▼ いい会社とは?

彼が10年前に出した答えは鎌倉投信の創業でした。経済の根本問題は、株主利益ばかりを企業が目指すこと、そのために短期的利益に専心すること。一方で鎌倉投信が掲げる「八方よし」とは、株主以外にも、社員や取引先、国や地球などすべてのステークホルダーに共通価値を齎す経営理念です。そのような企業を「いい会社」と呼び長期にわたって投資をしてきました。「いい会社」とは、例えば実際に鎌倉投信が投資先に選んでいる企業です。

 ほぼ日
 マザーハウス
 養命酒製造
 サイボウズ
 カヤック


大企業では

 カゴメ
 小林製薬
 ヤマトHD


など。鎌倉投信では投資判断の基準が「八方よし」なのです。これは近江商人の三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)を現代に置きかえてステークホルダーを捉え直したもの。社員、取引先、株主、顧客、地域、社会、国、経営者の8つの要素を挙げています。

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また「安いから」ではなく「いい会社だから」という理由で購入し応援する消費者と企業の良好な関係を目指します。個人と企業が共感によって結ばれる関係は、安定していて強いのだ、というのが金融畑でずっと企業を見てきた新井さんの、強い確信です。キーワードは「ファン経済」

この意味で卓越した企業は、パタゴニアとアップルでしょうか。

▼ 消費者が目覚めるとき

「日本企業よ、ファンを作るのだ」というメッセージの本なのですが、最後にはこのように終わります。

資本主義の行き先の決定権はいつも消費者の側にある

新井さんは読者に「いい会社のファンになれ!」と訴えかけるのです。安い値段は、その裏で不条理な労働を強いているかもしれない。地球環境にダメージを与えているかもしれない。本書では、高い値段に対して「誰かの給料に分配されている」「環境保護に充てられている」などと発想を転換することを説きます。利益相反から利益分配へ。安いから買うとか、儲かるから沢山作るなどといった短期利益重視の考え方からの脱却です。具体的な企業をいくつも挙げて、「八方よし」の理念が力強く書かれています。

▼ ゲストのマリコさん(Social Innovation Japan)

今回は、Social Innovation Japan代表のマリコさんがゲストで来てくれました。マリコさんは参加者の皆さんにこのように問いかけました。

消費者の行動で、社会は変わると本気で思っていますか?

あまり手が上がりませんでした。これは皆さんの正直な反応だったと感じます。そしてまだまだ余地はあるとも思えました。消費者として何かできるのではないか、しかしそれがまだつかめていない---僕も含めて多くの人がそう思っているのではないでしょうか。

グループディスカッション、そして全体の意見交換では、さまざまなコメントや疑問が飛び交いました。

・持続可能っていう言葉は、人間目線では?

・動物はお金の心配などしていないが、ヒトより幸せそう

・本当にフェアトレードでエシカルな商品しか世の中になくなったら、不便や不幸が生まれると思うが、ちゃんと考えてる??(→モヤモヤして帰ってね)

他にも「資本主義の弊害」とか「これからの企業の役割」そして「NPOの課題」なども話題に上がりました。

※ちなみにSocial Innovation Japanは最近、MyMizuという給水アプリをローンチしました。水を汲めることが目的なのではなく、マイボトルを持ち歩く人を増やすこと。それによって飲料メーカーの考えを前に進めることが本当の目的だそうです。ロンドンから日本へ渡ってきたマリコさんが、ロンドンでは当たり前のマイボトル利用が東京ではまったくできないことへの疑問を抱いたお話などを熱くお話してくださいました。

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▼ 寄付という古くて新しい行いを見直す

この本を読み、自分や今の資本主義社会のゆがみを考え直しました。そして今、僕は”寄付文化”が気になっています。

寄付ツールはすでに多々あります----寄付を送る(与える)ツールでなく、寄付をもらう(集める)ほうのツールのことです。好例がクラウドファンディング。またWEBを介した寄付プラットフォームは山のように出てきています。しかし、いかに優れたしくみやツールがあっても使われなければ意味がありません。

アメリカ人の年間寄付額は、日本人の100倍だと言われています。ざっくり、一年間に

  ・アメリカ人が20万円
  ・日本人が2千円

リターンを求めずお金を送ること。それは資本主義の考えとは真逆の行為。善意からなる寄付はとても尊い行いではないでしょうか。

本書のいう良い消費者であるばかりでなく、良い社会の一員でなければならないと思うのです。

最大のネックはマインドにあるのです。

▼ マインドを変えるためには

マインドというのはいたって個人的なもののように思われがちです。しかし、僕が希望を持つのはいわゆる個人の内なる自問自答ではない、対話の力です。

いろいろな価値観を浴びること。自分の考えや気持ちを言葉で話すこと。たくさんの価値観が交わり合い、膨らむこと。それを日々くりかえすことでクリアに見えてくるものが必ずあるはずです。

それが対話の力です。

マインドが変わった経験はありますか?きっと誰にでもあると思います。

人の言葉に影響を受けたり、ある映画や写真を観て胸を痛めたり、または勇気が湧いたり。

今回のbookedのような意味のある対話の場を、もっともっと充実させたい。そう強く思いました。その先にあるのは、決して答えを見つけることではない。

想像力を膨らませること。
大きな問題に胸を痛めること。
希望に気づくこと。希望を抱くこと。

ディスカッションで、僕たち人間の力はここにある、そう思えました。これからも楽しく、価値ある読書会を目指します。これからもよろしくお願いします。

2019.10.18 Urano, a good citizen.

20191018「持続可能な資本主義」



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