あなたの人生が良い旅でありますように
お財布が空っぽで、それを見つめながら祈ることもあるわけだけれど。。。
でも、クリスチャンたちのなかには、祈れば祈るほどお金持ちになれるという教えを信じる人もいるんだよね。
「繁栄の福音」と呼ばれている教えだ。
英語では Prosperity Gospel で、どこまでお金持ちになれるかというと、プール付きの家とプライベートジェット機を持てるぐらいまで。すごくない?
「繁栄の福音」の Prosperity という言葉がどこからきているかというと、直接的には新約聖書のヨハネの第三の手紙の2節の言葉からなんだ。
今日の聖書の言葉。
日本語の聖書では「恵まれているように」って訳されているんだけど、そこは古い英語の聖書であるキング・ジェームズ訳では「prosper」という言葉が使われているんだ。で、prosper ⇒ prosperity というわけ。
問題は、じゃあ「prosper」って言葉に、プール付きの家とプライベートジェットという含意があるのか、ってことなんだけど。
辞書的な意味としては、子どもがすこやかに育つ、繁殖する、ものごとが成功する、栄える、ということ。語源的には、ラテン語の prosperus から来ていて、「doing well」(うまくやる)という意味なのだそうだ。。。うーむ。。。うまくやる、って、漠然としてるよなあ。。。
新約聖書の原語であるコイネーギリシャ語では、どうなってるんだろう? ビザンチン写本では「prosper」のところには「εὐοδοῦσθαι」という動詞が使われている。この動詞の原格は「εὐοδόω」で、εὐ(良い)οδόω(旅をする・道をゆく)ということ。つまり「あなたの人生が良い旅となりますように! 」ということだ。
「あなたの人生が良い旅となりますように!」って。。。自分の魂には、いちばんしっくりくる感じの表現だ。
そしてね。。。旅といえば、まっさきに思い出すのはビルボ・バギンズ氏の「はなれ山」への旅。そして、その甥のフロド・バギンズ氏の「滅びの山」への旅のことだ *。
ああいう旅が良い旅であると言えるのかどうか。。。
彼らの旅の結末をみるならば、それはたしかに大団円であって、よろこびと輝きに満ちている。でも、その結末までに至る旅の過程においては、柳じじい、ゴブリン、トロール、オーク鬼、空腹、投獄、炎の矢、シェロブのばあさん、サウロンの目、その他もろもろの試練で満ちている。
プールに浸ってジェットでひとっとび、という旅ではないんだよね。
「あなたの人生が良い旅でありますように!」って言われるとき、自分はどういう旅を「良い旅」だと感じるんだろうか。
旅の過程のド真ん中にいるときは、ひとっとびしたい、と感じるけど、輝かしい結末が来ることがわかっていれば、きっと、ビルボをえらび、フロドをえらぶんだろうな、と思う。
問題は、その輝かしい結末は、偉大な物語の作者である「神」にしか見えていないということなんだ。。。
註)
* J.R.R.トールキン『ホビット ゆきてかえりし物語』及び『指輪物語』
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?