見出し画像

【感想と考察】The Family by BROCKHAMPTON

人生で初めてアルバムを全曲和訳しました。
BROCKHAMPTONのThe Familyのことです。

本当に素晴らしいアルバムだと思ってて、どうしても全ての内容を知りたかったから。

知らない方のために簡単に説明すると、BROCKHAMPTONは2014年に結成された総勢14名のボーイバンドです。
ただ、ボーイバンドはあくまで自称で、ラップスタイルの曲の多さからラップ集団(Rap Collective)と呼ばれるケースもあります。
彼らはビート作成、レコーディング、MV撮影、グッズのデザインなどグループの運営にまつわるほぼ全てのことをグループ内で完結させていました。

それぞれのメンバーについてはこちらのnoteにとても分かりやすくまとめられているので、ここでの紹介は割愛させて頂きます。(勝手にリンク失礼します…)

このアルバムは全曲をリーダーのKevin Abstractが歌っています。
まるで、彼のソロアルバムのように。

細かいことですが、今までにリリースされたBROCKHAMPTONの曲はほぼ全てが大文字表記だったのに対しこのアルバムではその統一性がありません。(例: SATURATIONのHEAT、IridescenceのNEW ORLEANS…)

このアルバムはKevin AbstractがBROCKHAMPTONというグループに向けたラブレターだと思う。
海外のレビューサイトにそう書いてあってかなり腑に落ちました。

確かに、Kevin Abstractがこれまでに配信したアルバム2枚はどちらもラブソングのような内容でした。American Boyfriend: A Suburban Love StoryARIZONA BabyはどちらもKevinの恋愛事情について歌われています。

個人的には13曲目のThe Familyにある”God bring me a different band, man”という一節が愛情の裏返しを感じさせるようで好きです。(公式もこのタイトルがつけられた服を販売してます)

SATURATIONシリーズの三部作を発表し、勢いづいたかと思いきやメンバーの除名処分があり、レコード契約後にはIridescence、GINGER、ROADRUNNERとアルバムをリリースしてきたBROCKHAMPTON。

リーダーのKevinによるリリックは、それら全ての軌跡のようなものでした。

一日違いで発表されたもう1枚のラストアルバム"TM"は比較的大衆受けしそうな作りの曲が多いのに対して、この"The Family"では随所に渡るまでKevin Abstractを始めとする制作陣の拘りが感じ取られます。
(Kevinは曲中で「契約満了のために作った」とは言っていましたが・・・)

TMが商標権を表す™️のことだとしたら、その違いも頷けます。

何にせよ、グループはRCA Recordsと結んだ契約により、計6枚のアルバムを出さないことには報酬の1500万ドルを受け取れない状況にありました。作品を出さないと解散も出来ません。

ですが、アルバムの中で何度も歌われているようにメンバー間の不仲は深まるばかりで、とても作曲が出来る環境ではなかったのだと思います。

その打開策として作られたのがこのThe Family。
Kevin AbstractがBROCKHAMPTONの名前を借りて歌うということです。

アルバムの内容を対比しても、TMには過去の未公開アルバム"Technical Difficulties"から2曲がリメイクで使われているのに対し、こちらではかなりタイムリーなことが歌われています。(2022年4月のCoachellaでの出来事など)

ちなみに、The Familyの情報が発表されるのと同時期(2022年10月末)にグループのアーティスト写真も変わりました。

紙袋を被った男の絵です。

紙袋にはBH(= BROCKHAMPTON)のスタンプが押されていて、被っている男はKevin Abstractに酷似しています。

世間から見たBROCKHAMPTONというグループは張りぼてで、実際に活動していたのはリーダーだけだった、ともとれる一枚です。

このアーティスト写真に変更された後、Kevin Abstractは自身のInstagramにて「紙袋を被っている」ことの夢占いの意味をストーリーに載せていました。(以下意訳)

夢としては、紙袋を頭からかぶるのは、あなたが誰かの助けを借りずに、人生のいくつかの欠点を乗り越えなければならないことを表しています。それは、あなたが誰かに導かれることなく、不快に感じたら頭から紙袋を取り除かなければならないのと同じように、あなたの問題を解決するのはあなた次第なのです。

そして、The Familyのジャケットもアーティスト写真と同じテイストで公開されました。


スクラップブックのようなスタイル。ちぐはぐに散りばめられたそれぞれのピースが印象的な一枚です。

このジャケットはChris Alboというアートワーカーによって制作されました。BROCKHAMPTONのメンバーではありません。

一見すると意味不明なこのジャケットも、よく見ていくとグループにまつわるものだらけです。

右上で干されている服は過去のツアーで実際に着ていた衣装だったり、左上の青いゴリラは彼らのライブ時背景に度々登場していたり、真ん中下の車は"SATURATION II"のジャケットに使われていたり・・・
(追記:このジャケットについての解説動画がファンによりTikTokにアップロードされていました。)

このアルバム内で何度もメンバーと過ごしてきた日々について歌っているKevin Abstract。ただのスクラップブックというより、まるで彼が見た夢のようであるとも取れます。

個人的に、音楽は背景を知っている方がより楽しめると思っています。

この和訳noteが誰かの理解の手助けとなれば幸いです。

最後に、それぞれの曲へのリンクを下にまとめておきます。

Take It Back
RZA
Gold Teeth
Big Pussy
All That
(Back From The) Road
Basement
Southside
Good Time
37th
Boyband
Any Way You Want Me
The Family
Prayer
My American Life
The Ending
Brockhampton

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?