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"Less is more." 〜簡素さの中に豊かさを見出す感性の涵養〜

今日は私にとってとても大切なアーティストのお二方の弾き語りに足を運びました。

ピアノと歌声、ギターと歌声。

様々な音が数多く重ねられた音楽と等しく、必要最低限(=必要十分)な音で紡がれる音楽にもまた、簡素さの中に豊かさが、簡素がゆえの豊かさに満ちています。

声には無限のグラデーションがあります。しっとりした声、やわらかい声、力強い声、澄んだ声、かすんだ声、伸びやかな声…。

声と楽器の重なりあい全体が簡素であるからこそ、特別な意識を向けなくとも、声の多元性、固有性が自然と照らし出されて浮かび上がってくる。

あれこれ考えずに、ただただシンプルなものをシンプルなままに。

"Less is more." という言葉がありますが、これは価値観を表しているのではないと思います。むしろ、簡素さの中に豊かさを見出すことのできる人間の感性、精神性の涵養を表すことに他ならないのではないでしょうか。

けれども、簡素さは、経済的・社会的状況に左右されるわけではありません。簡素とは、多種多様な生き方を活気づけ、変えていくことのできる精神です。簡素とはまた、しおたれた後悔の気持ちで追いかけるものではありません。簡素とは、私たちが決意し、目的として努力すれば実現できるものなのです。簡素な生き方にあこがれるとは、「人として、最高に気高い理想を実現したいう」というあこがれでもあります。

シャルル・ヴァグネル『簡素な生き方』

人間の内面の簡素さ。この考え方を読者のみなさんと分かち合えたなら、私の努力も無駄ではなかったことになります。この世界では、あまりに多くの「複雑でためにならないもの」が幅を利かせています。その結果、心を温めて生き生きとさせてくれる「真理」や「正義」や「善意」から、私たちは遠ざかってしまいます。

シャルル・ヴァグネル『簡素な生き方』

良いランプとはどんなものでしょうか?それは、豪華な飾りのあるランプでも、手のこんだ彫刻が施されたランプでも、高価な金属でできたランプでもありません。良いランプとは、明るく照らすランプです。同じように、財の大きさや楽しみの数、芸術的教養や名誉や自立性といったものが、善き人間をつくるわけではありません。精神的な強さが人間をつくるのです。このことは現代に限らず、どんな時代においても真実です。

シャルル・ヴァグネル『簡素な生き方』


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