音にふれる心地よさ

今日は『触楽入門 -はじめて世界に触れるときのように-』(著:テクタイル)から「鳥肌が立つような魅惑的な音を聴いてみよう」を読みました。

昨日は「視覚と触覚は未分化である」ということ、つまり「目で見て物の質感が分かるとき、あたかも触れているかのように感ている」ということに触れました。

今回読んだ範囲では「触感を思い起こさせる音」というテーマが展開されています。触感を思い起こさせる音とは一体どのような音なのでしょうか?

聞くと心地よくなる音?

著者は「触感を思い起こさせる音」について次のように紹介しています。

 音の中には、妙に触感を思い起こさせるようなものがあります。例えば、パラパラと紙をめくる音、紙を破くときの音、紙袋に手を入れてガサゴソと中を探る音。紙が立てる音は、こそばかゆいような、時に官能的でさえあるような感覚をもたらします。

紙をパラパラめくる音、紙袋に手を入れてガサゴソと中を探る音。たしかに想像しただけでも何だか耳の奥がくすぐったくなるような感覚を覚えます。

他にはどのようなな音があるでしょうか?

傘にあたる雨音、川の水が流れる音。実際にはふれていないのに水に触れているかのような、心地よい感覚を覚えます。

木々が風で揺れて葉が擦れあう音。箒で床を掃く時のササッとこすれる音。耳の奥がくすぐったい感覚を覚えます。

音を聞くことでなんとも心地よい感覚になる現象はAutonomous Sensory Meridian Response(ASMR、感覚的な喜びの自発的応答)と呼ばれています。先に述べた紙の立てる音は、ASMRの代表例です。

ASMRという現象は知りませんでした。「感覚的な喜びの自発的応答」とは何とも難しそうに聞こえますが、「音を聞いて自然と心地よい感覚になる」と捉えればイメージがつきやすいですね。

ASMRという現象はどのような原理で起こるのでしょうか?

心地よさの鍵は音の聞こえてくる位置?

ASMRの鍵となる「バイノーラル録音」という手法が紹介されています。

 ASMRを引き起こす作品の多くは、バイノーラル録音と呼ばれる方法で記録されています。録音するときに2つマイクロフォンを使い、人間の両耳と同じ距離に離して録音します。このようにすると、人間の2つの耳に届いている音を忠実に記録できるので、ヘッドフォンで再生したときに、音の聞こえてくる位置がリアルに表現されるのです。

バイノーラル録音という言葉も初めて知りました。YouTubeで「バイノーラル」と検索するとバイノーラル録音された音源を聞くことができます。実際に聞いてみると「音が生々しい」というか、人の気配を感じました。

「音質がよい」と聞くと「ノイズがなくクリアに聞こえる」ことをイメージしてしまうのですが「音が聞こえてくる音の位置も音質に含まれる」のだと思いました。

音の聞こえてくる感覚が変わる。音に触れているように聞こえる。聴覚も触覚と深くつながっていて分かれていないんですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?