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雑誌『ダ・ヴィンチ』 が創刊30周年

2024年もGWに入り、もうすの6月号が発売される時期になってしまったが、4月は母の死去や葬儀やらで心身に堪える出来事が多く、活動らしい活動が滞らざるをえなかった。今こうしてnoteの文章を書いたり、本を読むことができるのも、健康な体に産んでくれた母のおかげだ。自分の容姿、能力、才能など、自分特有の遺伝的な形質の半分は母から遺伝したものだと考えると、実に不思議なものである。

母は、僕に好きなことを自由にやらせてくれたものだ。その中の一つが本を読むことである。年が離れた兄のおかげで、実家には漫画や雑誌もたくさんあった。本にかんしては、特に制限がなく、何を読んでも小言を言われることがなかった。今思うと、それは大変ありがたい環境であった。

『ダ・ヴィンチ』との出会いとバックナンバーを読みあさった日々

自分が本格的に『ダ・ヴィンチ』を読むようになったのは大学時代だ。入学して間もない頃、何かの集まりで、友人のN君が時自己紹介で「『ダ・ヴィンチ』を読みたければ僕に言ってください。毎月買ってますので」みたいなことを話していて、「へぇ~」と思って、興味をそそられた。そして自分も『ダ・ヴィンチ』を買うようになった。

初めて購入したのは1997年9月号で、場所は地元のTSUTAYAだったのを今でも覚えている。以来、すっかり夢中になったものだ。当時はまだインターネットは黎明期で、ダイヤルアップ回線で接続するのも一苦労で、知識や情報を得ることができる最も濃密なメディアが雑誌だった。

あるとき、自分が買い始めた以前の『ダ・ヴィンチ』バックナンバーが実家の兄の部屋に十冊近くあるのを発見し、勝手に奪い取るように読み漁ったものだ。振り返ってみると、自分の本の知識のバックボーンはかなり『ダ・ヴィンチ』に負っているところが大きい。

いつの間にか27年間読み続けていた

そうして、私が読み始めてから27年くらいが経過し、いつの間にやら創刊30周年を迎えた。以前は創刊○○年、という節目で、必ず本木雅弘の創刊号の写真と本人がよく登場していたが、いつの間にか、本木雅弘も出番が少なくなってしまった。

肝心の雑誌も、部屋のスペースが圧迫されたので、『ダ・ヴィンチ』も面白い記事をすべてテーマごとにファイリングして収納したため、雑誌の形態としてまるごと残っているのは2013年以降に限っている。

懐かしいバックナンバーを発見

つい先日、実家の兄の部屋で『だ・ヴィンチ』1998年3月号と同年9月号を発見した。なぜこの2冊が現存しているのかわからないが、実に懐かしい。表紙も覚えている。

気になる特集は、
「新しいエロスを身につける五つの扉」
「あなたと異界をつなぐ、真夏のホラー体験」だ。

連載記事は、コミック・ダヴィンチ、○○が選ぶ10冊、宮台真司の世紀末相談室、百人書評、ミステリー作家交遊録、解体全書、銀座八丁目探偵社、原田宗典の「おまえは世界の王様か!」、大條充能力「男・大條の人生講座愛と怒りの中間点」、呉智英「マンガ狂につける薬」、レオナルドのお告げ、などなど、今も名前が変わって続く連載もあれば、期間限定で復活した連載、終わって久しい懐かしい連載もある。

「読者が選ぶ私の一冊」やオススメ漫画を紹介する「私のとっておき」のような読者投稿コーナーも今よりはるかに多く掲載されている。特集と連動してブックフェアも全国の書店とタイアップしている。

とにかくすごい内容の濃さと充実度だ。何より登場する作家のキャラが立っているのだ。

挑発的な特集のバックナンバー

バックナンバーのページを見ると、特集のタイトルがまたスゴい。

「言葉の王様が恋の天才」
「『教科書人間(つまらないひと)』にならない7つの方法」
「今年は、恋愛も文学も理科系の男に期待します」
「宣言。本も世じゃない男に明日はないっ!」
「個性的なヒトになる方法」
「恋愛の「義務と演技」Q&A」
「まっとうなマンガ読者はどこへ行った」
「12月24日の夜、あなたが幸福でありますように!」
などなど、実に挑発的でそそられる内容が盛りだくさんだ。
令和で特集しても、売れそうな内容である。

いつの頃からかコンプライアンスの問題が優先されて、雑誌が社会に一石を投ずるような挑発的な特集を組むことが少なり(論壇誌が炎上することはあるが)、グルメのような無難な内容ばかりになってしまった。

それに、単なるヒットコンテンツを後追いで紹介しているだけになってしまった感が否めない、というのが正直な実感である。

雑誌に厳しい時代でも期待する

現在の『ダ・ヴィンチ』は総ページ数も減った。宮台真司、福田和也、呉智英といった個性的で勉強量が豊富な知識人も連載から姿を消した。地元のジュンク堂では、雑誌コーナーの売り場面積が縮小して、大いにがっかりさせられた。雑誌にとって大変厳しい時代である。

それでも創刊30周年特集を見ると、編集長の意気込みは感じられるのは伝わってくる。かつての『ダ・ヴィンチ』ように、ヒットしているコンテンツに囚われず、読者の心に知的なフックをかけるような、知的好奇心をくすぐる挑発的なコンテンツを願わずにはいられない。
昔のバックナンバーをめくって、そんなことを思った。

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