頚椎症の枕選びについて教えて!Part3|整形外科医山田朱織

今から2つのレントゲン写真をお見せします。AさんとBさんのレントゲン写真です。
Aさんは75歳の女性、Bさんは50歳の女性です。皆さん、この2つのレントゲンを見てどちらが症状が重いと思いますか?
感覚的にはどうしてもレントゲン写真で変形が強い、形が悪い、そういった骨の方が症状が強いのではないかと思うのではないでしょうか。
50歳のBさんの方のレントゲンはあまり形も悪くないし、変形が強くない、もしかして症状が軽くではないかと思うものではないでしょうか。実は逆なんです。
このレントゲンを撮った時にはBさんの方がレントゲンはきれいでも症状はとても重かったんです。首の痛み、手のしびれ、動作がしにくい、こんな症状がありました。
一方、Aさんの方は軽い肩こりだけです。何が言いたいかというとレントゲン上で症状が重そうに見えても、実際にはその症状とは直接の関係はないんです。
もちろんそれが逆の場合もありますけれども症状とレントゲンが一致しない、これは多くの整形外科医が認識していることです。
では、なぜ症状が重くなるのでしょうか。その大きな一つの原因として「姿勢」があります。
首の姿勢が悪くなってしまうと首の中の変化がそんなに強くなくても強い症状が出ます。逆に言えば姿勢を良くしておくことで、たとえ首の中に強い変形があったとしても症状を出さずに済むんです。
そこで首の姿勢の管理がとても重要になってきます。これを2つのタイミングに分けて考えてください。
この2つのタイミング、これは姿勢の管理という意味では大きく異なってきます。皆さん、姿勢管理という言葉を聞いたときに一体何のことだろうと思うかもしれません。
姿勢を良くすること。正しい姿勢でいること。それが姿勢管理です。姿勢管理を「寝ている時」と「起きている時」に分けて考えなければならない理由は意識があるかどうかの違いです。
起きている時は自分の意識で良い姿勢を取ろう、正しい姿勢でいようと思うしそれをすることができます。
でも、寝ている時は意識がないのでその姿勢管理を自分で意識的にすることはできないわけです。
では寝ているときどうすればいいか。それは正しい自分の体に合った寝具を選ぶこと。
今晩体を預ける寝具を適切な状態に整えること。これができれば夜間の姿勢管理が正しく行うことができます。
姿勢を決定してしまう最も大きなアイテム。それは枕とベッドや布団です。
この2つの条件を整えることで正しい夜間の姿勢管理を行いましょう。
私と父は約50年も前からこの夜間の姿勢管理、すなわち枕を一人一人の患者様に適切に調節ということをやってきました。
そこで分かったことは夜間の姿勢を首の姿勢を整えることによって、この脊髄神経と神経の枝である神経根、この部分を安静を保ち悪い刺激が加わらないようにうまく眠ることができる。
そのためには枕の高さ調節が重要だということがわかってきました。では、実際に寝た時に首の骨や椎間板神経がどのような状態になるのか実際に枕を持ってきてもらって実験してみましょう。お願いします。
枕の上に頭がこのように乗ったとき、模型としてはこんな状態になっていますね。
首の前側と首の後ろ側、このすぐ上には気道といって呼吸するための大事な器官があります。後ろ側には脊髄と神経の本管と枝の細い神経があるわけです。
すなわち枕の高さが変わることによって、低かったり高かったりすることによって首の角度が容易に変わってしまう。
この角度が変われば当然神経の状態が曲がったり、いい状態になったり悪い状態になったりが変化してしまうのです。
先ほど(PART2で)申し上げたように首の角度が約15度ぐらいになるように一人一人の体格に合った高さに調節する。
それは実際にはこのようにたった5ミリの高さの違いで首の角度が変化してしまうんです。
5ミリの高さを足すのか引くのか、これだけで首の角度が容易に代わって首の神経を圧迫するのか首の神経が楽になるのか、大きな2つの分かれ道となるわけです。
適切な高さに上向き、横向き、そして寝返り。この3つの条件に合うように高さを決定することがすなわち首の神経を楽にすることであるということをわかっていただけましたでしょうか。
この神経が楽になるとどうなるかというと、首の緊張がとれて神経の圧迫されていた部分の痛みやしびれを改善します。
一方でスムーズに寝返りが打てることによって筋肉の緊張がほぐれ、血流が促されて神経にも血管から栄養が行き、一晩寝ている間に神経が回復するような条件を整えることができるわけです。
寝ている時間をただのスキマ時間、ただのオフタイムと思わずに積極的に体をリセットする大事な時間と考えてください。
今晩から枕を合わせ頚椎症の方でも楽な姿勢、自分の神経にとって良い姿勢で眠ることを心がけてください。

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