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氷雨

(約1,500文字)

朝から冷たい雨が降る、
1月中旬、昼下がり。

家族で珍しく都心に赴いた。

ある場所へ行くために。


予約時間には、だいぶ余裕があった。

降りつづく氷のような雨は止みそうにない。

先にどこかで温かい飲み物を、ということになった。

夫が近くを検索したところ、すぐに何十件とヒット。

一番近くのカフェへ向かった。

こじんまりとした、落ち着いた佇まい、、、。

子供の手が氷のように冷え切っている。

とにかく即入ろう!ということになった。


キョロキョロ見回し、席に座るやいなや、

かき氷食べる

と子供が言った。


???

冬ですが!?

寒くないの?

8歳児の発想は、ぶっとんでいる、、、



メニューにあれば、頼む?

などと、適当に答えて荷物を整えている間に、

夫は奥のトイレへと消えた。


さて温かい飲み物は、とメニューを見る。

ほうじ茶、紅茶、抹茶など

全て、セットでの提供、、、。


どれどれ、スイーツは何があるのだろう?
メニューには写真がなかった。

ちょっと珍しい和菓子を発見。

これはね、中にごぼうが入ってるんだよ。 
京都のお菓子なの。

まだ人生8年ほどの新米に教える。

他には、甘酒、抹茶、季節のフルーツなどなど、トッピングらしき説明が並ぶ。


、、、トッピング?


ふと、他のテーブルを見てみる。

深いグリーンのこんもりとした形態のスイーツを崩しながら、食べていた。

あれは、もしや、抹茶、、、


慌てて、店内をよくよく見まわしてみると、壁には定番メニューが貼ってあった。

涼し気な感じの、、、。




やばっ(-_-;)

ここ、かき氷のお店だ!!





焦って夫を待つが、







全っ然、

トイレから戻らん!!






うーむ




長い、、、







、、、撤退を断念した。




仕方がない。

とにかく温かい飲み物が飲みたい。

一番安く、ダメージ ボリュームが少なそうなセットで頼むことにした。

子供はすっかり和菓子にロックオン状態だったので、仕方なく奴だけ高級セットに。

夫がやっとトイレから戻ったので、すぐさま失態事態をそっと知らせた。

夫はゲッと目を剥き、恐怖の表情を浮かべた。

時、既に遅し、、、大人しく私の選出したセットに頷く。


こうして真冬に

かき氷

3セットを注文。


念の為、私はコートを着たままで、凍る思いで楽しみに出来上がりを待つ。

やがて素敵なかき氷がこんもりとしたボリュームで運ばれてきた。

わーい
ボリューム、、、


子供は映える景色に大喜びだ。

そして、2、3口食べると、

冷たい

と言い出した。



そりゃ、


かき氷



ですから、、、。



ほどなく私達のセットも運ばれてきた。


美しくふんわりとシェイブされた


こんもり氷スイーツ、、、


ふんわりと素晴らしいかき氷でした✨


無言で身構える二人。


しかし、前進あるのみ。
退路はとうの昔に断ったのだ。



猛然とかき込むアラフィフ夫婦。



ふぅ〜


チベタイ、、、



そのうち夫が咳き込み始めた。


が、こっちも気遣う余裕はない。


半分位で腹の底から冷えてきて、手が進まなくなっていた。

セットのお茶は、口の中をやや常温に戻してくれるだけで、

全っ然、
身体を温めてはくれない。

夫はまるで何かから逃げるかのように、すごい勢いで、自分の氷を食べ切った。


そして、苦行を終えた高僧のごとく目を瞑り、少しでも硬直した身体をお茶で解そうとしている。

そこへすかさず子供が、つつき回して
ドロドロになったかき氷をパスした。



、、、はい、はい

食べますよ、、、



苦悶に満ちた表情で、夫は引き受けた。
心なしか顔色も悪い。


変な咳をしながらも、見事夫は完食した。




、、、そこで、
あと少しだった私の分もお願いした、、、 





こうして心身ともに冷え切ったところで、ちょうど良い時間になり、店を後にした。

氷雨が降り頻る中、カクカクとした足取りで
カリンシアのショールームへと向かうのだった。




※「愛しのカリンシア」前日譚でした。



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