Latin Music Night@ちゃま珈琲 Vol.10 「DJから見たJazz」 講義録(簡易版)

Latin Music Night@ちゃま珈琲
Vol.10 DJから見たJazz
2022/07/23
By まんぼばか

7/23に横浜は黄金町のちゃま珈琲にて開催させていただいた
「DJから見たJazz」 の簡易版の講義録です。
Latin Music Nightというのはもともと野毛の老舗ジャズ喫茶ちぐさで開催していたラテンレコード視聴会&講義&DJのイベント名です。

(読みやすくするため、当日の流れとは若干変更してあります)

ー論旨概要ーーーーー

①ジャズの歴史の中でいくつか変革があった。
そのうち一つは1940年ごろの「BeBopの発生」である。
この結果、ジャズは「ダンスミュージック」→「表現芸術」になった。

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②「Bebop以降のジャズは表現芸術である」と多くの演者も観客もすっかり認識しだしていた頃、ジャズで踊りだした連中がいる。1970年代最後期のイギリスのダンスシーンだ。

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③視点を広げて世界をみてみるとUK-JazzDanceに似た、高速ステップを踏むダンスのシーンがある。
コロンビアのサルサ「Cali-Salsa」とハウスミュージックの突然変異体と言われるシカゴの「Juke/Footwork」だ。

おそらくこの3つのシーンの担い手は若い黒人であるとおもわれる。
若い黒人には「高速細分ビートに乗りダンスをする事がカッコいい」という共通意識があるのではないか?と予想したくなる。
そのようなシーンで使われているダンストラックをそのまま現在の日本で流してもDJとしては成立しないだろう。
HardBopを流しているだけでは、普通の人(ダンスの訓練をしていない)は踊れないので、DJとして片手落ちではないかと思う。

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④まんぼばかとして長くラテン系のレコードを掘ってDJしてきたが、 
自分からの提案としては「サンバのリズムの影響の強いジャズ」を勧める。
サンバはスルドという低音の太鼓が2拍子を刻む。
2拍子であれば普通の人でもリズムに親和性を感じるのではないか?という理由からだ。(クラブジャズクラッシックとされている曲にもサンバのリズムを持つものが多い)
また長らくこの難題(「踊りが難しいジャズをフロアで流す」と「万人に受けるダンストラックを提供」の落としどころを見つける)について苦悶と努力をしてきたクラブジャズのトラックも今見直されるべきかも知れない。

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タイトル

講師の自己紹介
まんぼばかこんな事してるよ

本講義の概要を一枚の絵で説明
(上の講義論旨①②を図解)

講義論旨①ーーーーー 


Swingの楽団の写真
人数多い。音楽は楽譜に書かれたもの。個人のアドリブはあまりなし。
「ダンスミュージックを提供する」ということが第一義。
(講義では動画も視聴)

BeBopの楽団の写真
人数すくない。楽譜はコードのみ書かれたもの。個人のアドリブが主体。
個人のアドリブ(表現)を鑑賞する。
おそらく演者も観客もダンスミュージックとしてはとらえてない。
(講義では動画も視聴)

BeBop以降「ジャズとは表現芸術である。鑑賞するものである。ダンスに
は適してない」という共通意識が多くの人の中にあったと思われる。
Bebop以降に色々発生したが、Bebopからの派生系(CoolJazz / ModeJazz / HardBop)・アンチ系( FreeJazz)の双方で「ダンス」は志向していなかったと思われる。

なお、レコオタの耳的にはハードバップの音は大変魅力的でここいらあたりのレコードは欲しい! 何枚でも欲しい!

講義論旨②ーーーーー

 

「ジャズは表現芸術だ!ダンスできるものではない!」という意識が大方の共通認識であるなかジャズで踊りだしたシーンがあった。
UKのダンスシーンである。


●IDJ ( I Dance Jazz )- UK Jazz Dance

「ロンドンがジャズで踊ってる」
というニュースをうけて本邦でもジャズをクラブでかける動きがでてきた。
その先鋒となったDJユニットU.F.O
Loud Minority - United Future Organization


猛烈な速さの曲でそれに負けないような高速ステップを踏む。
体の各部が分断して踊っているかのような錯覚すら起こすダンスだ。
当然、このようなダンスは訓練しなければ踊れないだろう。

講義論旨③ーーーーー 

世界をみてみるとUK-JazzDanceに似た、高速ステップを踏むダンスのシーンがある。


例としていくつか挙げる。
まずはコロンビアのサルサの「Cali Salsa」だ。

コロンビアの若い警察官がカリサルサを踊る動画
曲はAlfredito LinaresのTiahuanaco
(多分CDかデータでピッチを変えずテンポだけをめっちゃくちゃ速くしてる)


もう一つはシカゴのJuke/Footworkだ。


当時のUK-JazzDanceの現場の映像は殆ど残っていないが、
若い黒人が主体、トライブ(ダンスチーム)が多数存在、純粋にダンススキルを競いあっていたところからJuke/FootWorkのこの映像はUK-JazzDanceの全盛当時の雰囲気に結構近いのではないかと想像する。


講義論旨④ーーーーー

ジャズをDJで使うとき高速すぎたりリズムが難しいという問題があると思う。馴染みのあるリズムを使っているジャズをつかうことで解決の糸口がつかめるかもしれない。

自分からの提案としては「サンバのリズムの影響の強いジャズ/フュージョン」を勧める。
サンバはスルドという低音の太鼓が2拍子を刻む。
2拍子は単純なので多くの人になじみやすいのでは無いかと思う。




ラテンジャズとあるが、多くは曖昧なくくりで使われていると思う。
以下にラテンとサンバの影響を受けた音源を示すのでどちらが踊りやすいかを判断してみて欲しい。

ラテンの影響が強い曲

Dizzy Gillespie - Manteca

サンバの影響が強い曲

Jeff Lorber Fusion - The Samba

DJ例ーーーーー




マトメーーーーー

・ジャズは「Bebop」で表現芸術になった。(と同時にダンスを意識しなくなった)

・ダンスを意識しないジャズで踊るシーンが出てきた。UKのダンスシーンだ。

・UK-JazzDance、また類似性があると思われるCali SalsaやJuke/FootWorkをみると「難しいビートを乗りこなすのが粋である」というような感覚があるのではないか?と予想できる。

・そのようなシーンで使われている音をそのまま日本でDJで使っても受け入れられるのは難しいいのでは?

・ジャズやフュージョンに限っては「サンバ」のリズムの影響が強いものを選択すると普通の人(ダンスの訓練をしていない)にも受け入れられやすいかもしれない。


参考文献ーーーーー


以上。

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