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【プレイオフを振り返る】#5 ティロンルーのアジャストメント(Game3)


こんにちは。
だーいぶ間が空いてしまいましたが、今回はシリーズの転換点であるGame3を見ていきます。盛りだくさんの内容になりそうなので、あらかじめご了承ください!
是非#0~#4もご覧いただけると幸いです。

まずは結果から。

表1 試合結果
表2 DALスタッツ

DALの3P%こそ50%超えで高いですが、FG%はここ3試合で、50.0%→58.5%→44.2%と大きく下げることに成功しています。

選手起用の変化も確認していきます。

表3 出場時間の推移

Game3で8分以上の増減があったのは、
(増加)モリス、バトゥム、ロンド
(現象)ズバッチ、ケナード
であり、スモールボールの時間帯も15分も増加しています。



試合の概観と選手起用


表4 選手起用

選手起用はこんな感じです。スモールボールセンターが紫、PG/SGを3名以上起用するマイクロボールの時間帯が緑です。
特徴としては、

  • モリスのスモールボールの時間が増加している

  • ロンドorレジーが出るときは、マンorベバリーを出し、クラッチはオフェンス重視でレジーとロンドを並べている

  • カワイとポジョを同時に下げており、レジーのクリエイターとして信頼度の増加が伺える

  • Game1~3を通して初めてスタメンと3Q頭のメンツが変更
    ※スモールボールへ本格的に舵を切った様子が伺えます

でしょうか。

この試合の走り出しは最悪でした。。。
1Q頭はこれまで同様ズバッチを出した上でスイッチDFを採用しますが(懲りない…)、ドンチッチがズバッチ相手に3/3でシュートを沈め、0-8でLACがタイムアウト取得。9:47にズバッチを下げバトゥムを出しスモールボールを開始しますが、勢いそのままに6-20と離され、2回目のタイムアウトとなります。

その後、1Q4:38の時点で11-30となりドンチッチが下がった後、何とか盛り返し、1:31時点で25-32まで追いつきます。

1Qこそ大きな変化のない様子でしたが、Game3では大きな変化があり、それは「レジー・ロンドはショーディフェンス」が定着したことです。

詳細を見ていきます。


ショーDFへの変更


ショーDFへの変更は大きな影響をもたらしました。

トラップDFを展開したGame1のワンシーン(下の画像1)を見てみると、ドンチッチをモリスがマークしているところにバトゥムがトラップしていきますが、①完全な4対3を作られており、②LACは誰でもトラップするのでロールする相手(ポルチンギス)を選べないことになります。以下の場面では、ポルチンギスがペイントエリア内でパスを受けられ、ダンクを決めることに成功しています。カワイがタグに行ってもいい場面ですが、間に合わず。

画像1 トラップDF

これに対して、レジーのショーDFでは、①レジーが全力で戻り始めていることで4対3.5程度には抑えつつ、②パスを受けるのは必ずレジーのマークマン(ここではクリバーとマキシー)となります。
以下の画像のような、誰もマキシーをカバーできないようにポル以下3人とも逆サイドに寄せるセットは何度か展開されていましたが、LACとしてもドンチッチ以外がミドルレンジでフリーでもらうことは許容しており、ポジョがカバーに動くことはしませんでした。逆に、レジーがカウンタードライブで抜かれた場合、逆サイドはポジョとカワイを含む3名が待ち構えており、鬼のローテーションを展開できる準備ができています。

画像2 ショーDF-1
画像3 ショーDF-2

画像4を見ていただくと、画像1と同様コートの中央でも展開されますが、トラップに行かずレジーが中央付近に走ることでクリバーへのパスは通りにくく、この場面では右コーナーのポルチンギスにパスが行くのですが、カワイがクローズアウトに成功します。

画像4 ショーDF-3

従って、ショーDFでギャップを最小限に抑えつつ、ドンチッチを簡単にミスマッチはせず、ただアイソは許し(トラップせず)、鬼ローテーションでSpotupシューターに簡単にスリーを打たせない、という体制を取っています。ローテーションについてはスモールボールの効用はもちろん、カワイとポジョという最高峰のウィングディフェンダーがなせる業なのかなと思います。



マッチアップの変化(ショーDFとのシナジー)


マッチアップを確認すると、前半こそこれまでと似たようなマッチアップですが、Game2のようにカワイ・ポジョをびったりとつけるということはせず、また4Qはずっとロンドというびっくり采配です。

表5 マッチアップの変化

これらのマークマンに対して、ドンチッチがどのように攻めたかというと、

表6 マッチアップ別・Q別の集計

マークマン(青)と非マークマン(黄色)を攻めている割合は、ほぼ五分五分に落ち着いています。そしてLACのマークマンが固まった後半は、特に4Qでは攻撃の起点の9割はロンド相手であり、LACもそれを許容していました。

ですが、ドンチッチが「ミスマッチだ」と感じているはずのこのロンドを相手にした4Qが、得点ではGame3までのQ別で最低の22点(結果的に4Qは29-22でLAC勝利)となります。ここにLACによるドンチッチ対策の1つの集大成が見えている気がします。

核心に迫る前に、各マッチアップ別のルカの攻撃成功率を確認します。

表7 マークマン別の集計

LACの選手別でみると、レジーを攻める回数とカワイ・ポジョを攻める回数はいずれも変わらず5回。
また、IsoではなくPickを使う確率はこの3試合で、29%→27%→41%と増加し、レジーのショーを起点に攻めていた様子もうかがえます。

ドンチッチはこの時点のシリーズハイ44Pを叩き出し、ある意味もっとも活躍した試合です。MM-M%で見ても、Pickで81%、Isoで61%と効率性は落ちていません。ちなみに、MM-A39回(Pick16回+Iso23回)と、彼が放ったR-FGA:34回を比較すると、大半はルカが自己完結しシュートしたことが推察されます(C&SなどはMM-Aに含まれないので、純粋に39回中34回ルカが打った、ということにはなりませんが)

ルカへの依存度に注目すると、以下のような推移も見て取れます。


表8 ルカへの依存度

Game1の「トラップでルカからボールを話す作戦」を止め、Game2の「ルカに強力なディフェンダーを付ける作戦」も止めたので、当然の結果ではありますが、ルカが自身で打開し、シュートを打ち切る頻度は増えています。ルカもMM-M%(Iso):61%とチームの期待に十分に応えています。

ちなみに、ショーDF採用により先の画像2のように「ルカ以外の選手にボールが回るシチュエーション」が増えましたが、LACのローテーションによりDAL側が打開できず、ルカのアイソレーションに戻ることも多く、ルカ以外の選手のR-FGAは59→57と微減しているのも面白いです。

ただ前述の通り、ルカ自体は非常に効率的なオフェンスを遂行できていたので、ではなぜLACが勝てたのかといえば、ルカ以外のシュートが入っていなかったことになりますが、詳細に見ていきます。



ルカとルカ以外のバランス


これまでと同様に、R-FGA/R-FGMの水準を見ていきます。
※筆者が作ったスタッツの詳細は、#2をご参照ください

表9 ルカとルカ以外のR-FGA/R-FGM

2Q~4Qはルカ以外のR-FG%が40%以下となっており、これはGame1~2の8Qの内7Qで66.7%を超えていたところからすると、とてつもなく低い水準です。

特に4Qは、ドンチッチがロンド相手に攻めまくったわけですが、ルカ以外のR-FG%はシリーズ最低の36%を記録しています。


ここで1つ、ティロン・ルーのアジャストメントの背景には、「オフェンスをルカで完結させるとルカ以外のシュートタッチが悪くなる」という思想がないかと考え、それを確認していこうと思います。

名付けて、「ルカばっかりシュート打つと、ルカ以外の体が冷える説」とでも言いましょうか。笑
タイムアウト明けのフリースローは入りにくいなどと聞いたこともありますし、検証する価値はありそうです!



ルカばかり攻めるとルカ以外のシュートタッチが悪くなる?


表9の要領で、これまでGame1からGame3までQ毎のシュートタッチを集計してきました。

これを下に、単純にQ毎の「ルカのR-USG%」と「ルカ以外のR-FGM%」で相関係数を求めると、▲0.058となり相関関係があるとは言い難い結果でした。。。うーん。
当然、シュートは水物ですし、R-FGMは必ずしもC&Sだけではなく速攻のイージーレイアップも含まれますし、12Q分のスモールサンプルでもあります(シュートが80%とか入っちゃうQもありますしね)。

ただ諦めきれないので、相関性を図にして傾向を探ってみました。

表10 ルカのUSGとルカ以外のシュート効率の相関

縦軸にルカのR-USG%(TO含む)、横軸にルカ以外のR-FG%を取って、相関図を作成してみました。筆者の想像通りなら、上に行くほどルカがボールを持っているので周りの選手がシュートタッチが悪くなり、右に行くほどルカがパスを供給するのでルカ以外のシュートが入っているはずです。

ピンク色の帯は筆者が手動で付けたものですが、相関関係はない…?ありそう…?

非常に難しいところです。
ただ、先ほどもスモールサンプルだと述べましたが、プレイオフではそのスモールサンプルを基にアジャストメントを考えているのも事実だと思います。完全な相関関係がなくとも、想像で補って、仮説を立てているんじゃないかと思います。
当時、Youtubeなどでルカに関する様々な考察がある中で、「ルカのUSGrが高いほうがDALは強い」というデータも紹介されていましたが、おそらくGame2までを通じて、カワイを付けてもルカを止められなかったことから、ルカ以外を抑える方向にシフトした、というのが個人的な結論です。
※カワイファンとしては、「止められるにしても体力を温存したいから」と信じたいところです

これが本当にDAL対策として正解かは別として、この時点では正解だとティロン・ルーが考えた可能性が高いのかな~と思ってます。

このデータはGame7まで集計しており、正解かどうかはまた別の機会に記載したいと思います。


終わりに


もともとはこのGame3で、0-2をひっくり返すアジャストメントが知りたくてプレイオフの検証を始めたこともあり、放置せず書けてよかったなと。

今回の「ルカばっかりシュート打つとルカ以外の体が冷える説」は、Game7まで見ると、Game3まででは見えてこなかった、もう1つ面白い傾向が見えます。Game4~7を記事にするかは悩み中ですが(いやもう新シーズン始まるて)、書いた際にはチラ見いただけると幸いです。

と、ここまで4500文字・・・笑
お読み頂いた方、本当にありがとうございました!!!
是非「スキ」やシェアしていただけると幸いです!!!

ではでは!

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