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(book)人生にみちくさ、よりみちは存在するのか


エッセイ漫画を買いました。

普段読んでいる漫画は、いわゆる王道漫画ではなくて、アプリやネット上に掲載されているものが多く、気がついた時にゆるゆると読んでいます。

今では漫画が連載されている媒体もかなり増えましたが、その中でも特に気に入っているのが「トーチweb」です。掲載されている漫画の雰囲気が何となく独特で、面白いものが多いなぁと感じてます。


そこで出会って衝撃を受けたのが、道草晴子さんの「みちくさ日記」。手書きのふにゃふにゃの枠に、手書きの文字。作画もパッと見は「下書きをそのまま載せたのか…?」という感じ(とても失礼ですが、こう感じたのです)。でも、読み始めるとすごく面白くて、ページをめくる手が止められなかったです。

今日、本屋さんに行ったら完本として発売されていました。「これは、紙で絶対に持っておきたい!」と、即決で購入。私がトーチwebで読んでいた「みちくさ日記」に、他媒体で連載していた「よりみち日記」「よりみち日記2」を合わせたものでした。


かわいい表紙

本の概要
13才の若さで「ちばてつや賞」を受賞するも、ほどなく精神科病院に入院。
「人生もう終わりだ」から始まった苦難の半生を、深い絶望と沢山のユーモアで綴る実録漫画。
生きて、生かされ、転んで、起きて……24年間の全記録。

トーチwebより

もうね、道草晴子さんが送ってきた生活は本当に壮絶で大変なものです。精神科病院で過ごした10代。色んな人と出会って別れる20代、30代。人と関わって生きる元気を得るけど、頑張りすぎて辛くなって人から離れて、うつ病になることを繰り返す。作家となった自分と、精神障害者として扱われ続けてきた自分との乖離に悩む日々。文字に起こすだけでも壮絶です。

壮絶なんですけど、読んでる私は全然重苦しい気持ちにならない。どこかでクスッとなれる感じすらあります。

特に好きなのが、晴子さんが下北沢で出会う沢山の友人の方々。皆さん個性的で魅力的。かなり変わった人だな?と思う人も多いのですが、皆さん共通して優しい。晴子さんが辛くなって一度は少し距離を置いても、何度も迎入れてくれる温かさと懐の深さがとても素敵です。


苦しいし辛いけど、それでもやっぱり人との繋がりの中に飛び込んでいって、生きていく活力を得ている晴子さんの人生はかっこいいなぁと思いした。本人は、自分の辛い10代の出来事は無くしてしまいたいとこぼす場面もあったけど、それを作品に昇華して、ぐるぐる苦しくても、色んな人の力を借ながら書き上げるしぶとさみたいなものが大好きです。

生活していると辛いこともたくさんあって、こんな思いするなら逃げ出してしまいたいと思うことも、思い出すことも嫌になる出来事もあるけれど、それが全部肥やしになって今の自分を作り上げてるんだと思います。


晴子さんは自分の過ごした日々を「みちくさ」や「よりみち」と表現してたけど、そもそも、人生に「みちくさ」や「よりみち」ってあるんですかね?


回り道をしているようでも、始まりと終わりまでは結果的に一本道でしかないし、その日までに生きた過程全てが今日のその人を作り出しているので、あの時別の選択をしていたら、こんなことを考えている自分はそもそもこの世にいないわけです。

死ぬ間際に振り返ってみれば、多少ふにゃふにゃしてるかもしれないけど、どんな選択、人生であっても一本の太い道になっているんだろうなと思います。


作品を読んでいると、色んなことを考えさせてもらえます。これからも漫画を描き続けていてくれる限り、手にとって読んでいきたい作家さんの1人です。

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