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三つ首輪の犬と戦斧 序章~00790305~

第1号コロニーが建設されるよりも遥か昔、ペテン師みたいな予言者が
『空から恐怖の大王が降ってくる! 地球が終わる!』
だなんて口にしたそうだけど、まさか人類が宇宙に住めるくらい科学が発展した時代になったのに、まさかその宇宙人たちの居住場所がそのまま降ってくるなんて誰も思ってなかっただろう。

宇宙世紀0079、つまりは宇宙移民が始まって79年の新年早々、ジオン公国が地球から独立して、ついでに宣戦布告して、おまけにコロニー【アイランド・イフッシュ】まで叩き落して、地球人の半数を死に追いやってわずか2ヶ月、思い切った奴らはいつの時代も行動が早い。まあ、いつの時代もぼんやりしてたら負けるのだから、戦争は勢いと行動力が大事なのは否定しない。
我らがジオン軍はすでに地球への第1次降下作戦を開始、1週間もすれば第2次降下作戦で大量の軍人と兵器が送られてくるわけだ。
送られてくる面子は錚々たるもので、根っからの正規軍人から犯罪者まで重用した部隊まで立場も人種も思想も様々、とにかく戦える連中を片っ端から集めてみました、とでもいわんばかりだ。
よっぽど人材不足なのか余裕がないのか、まあそもそも地球と宇宙では人口は倍も違うし、資源の数はそれこそ桁違い。勢いと技術と覚悟で優位に立ててはいるものの、この広大な地球を攻めている間にどれだけ差を縮められてしまうことか、案外逆転だって十分にあり得るんじゃないか、なんてのは思っても口に出せないわけだけど。

しかし古今東西、窮鼠だって猫を噛むし、当て馬が下馬評を引っ繰り返すし、噛ませ犬が喉笛に食らいつくことはよくあることなのだ。
ジャイアントキリングは起こる時は起こる。それが今この時代であって欲しいものだ。


どうやら頼みの綱のジャイアントキリングは、私には起きてくれなさそうだ。

私の配属された部隊は、いわゆるならず者の寄せ集め部隊。恩赦と減刑と牢屋よりはマシな状況を求めて、蜘蛛の糸に縋るようにHLVという揺り篭に詰め込まれて、地球に降りてきたゴロツキ山のクソタレ共。
軍隊は規律正しいけど、軍隊を構成するのは人間だ。人間は感情と理性を併せ持った動物なので、カスでもそれなりの支度で地球へと降ろしてくれる。でも所詮それなりなので、正規部隊と比べたら扱いは雑そのもの。降下地点が大いにズレて、それこそ禿げたジジイのウィッグくらいズレて、右も左もわからない荒野のど真ん中に放り出されて、そうなったらならず者の本領発揮。
あっという間に、リードを引っ張る警官上がりの上官殿を鉛玉で見通し良くしてやって、逃げる奴は逃げて、酷い奴は戦車をかっぱらって逃げて、もっと酷い奴は規律を失った途端に殺し合いなんて初めて、気が付けば私は荒野でひとりぼっち。
地球くんだりまで来て何やってんだか、って呆れてたところに、同じく本隊と合流出来ないハラペコなはぐれ部隊と遭遇して、今はしっかりと、落下物の調査に来た連邦の部隊に追いかけられてる。

「ハンス中尉、どうするんです? 向こうの方が足が速いですよ」
こっちは物資運搬用のトレーラー、足回りは悪くないけれど荷物が重いのかスピードには乗れない。
一方、奴らは荒野を走り慣れた戦車たち。距離は徐々に、しかし確実に縮まっている。
「いっそ投降するってのも手だが、そしたら文字通り犬死にだな」
ハンス・グレイロック中尉。彼の部隊はヘルハウンド複合空挺部隊、複合というのは、宇宙でちょっとした事故で新兵が8人も死んで、部隊は他の部隊と共に再編し直されて、いまいち連携が取れないまま地球に降下。直後に周辺への哨戒に出たところを襲撃に遭い、中尉以下少数の兵たちは本隊と逸れたまま現在に至る。
そして私と、余計なおまけと遭遇を果たしたわけだ。
「うまいこと言ってないで、なんか無いんですか? そうだ、このトレーラー、あれってモビルスーツ運搬用ですよね!?」
モビルスーツ、MS-06、通称ザク。地上に降り立った一つ目の機械の巨人。現状のジオン軍が、ハラペコな上に攻めている側にもかかわらず優位に立てる最大の理由が、これだ。人間に近い動きの出来るが故の汎用性、巨大が故の威圧感、人なんて簡単に吹き飛ばせる口径の銃火器、高熱を発するヒートホークの破壊力、あらゆる点に於いて戦車と比べて圧倒的。
とはいえ、それを差っ引いてもこちらは重力に不慣れな宇宙人。戦車相手でも馬鹿には出来ない、数で劣れば簡単に形勢は不利になる。しかしこのまま逃げ続けて、不利な状況に陥り続けるくらいなら、いっそ戦った方が幾らかマシだともいえる。

「確かにザクは積んである、2機ほどな。でも1機は俺用にカスタマイズされた、要するに物陰からこそこそ狙うようなスナイパー仕様だ、ドッグファイトには向いてねえ」
「部隊名が泣きますね」
「黙ってろ。もう1機は調整中の試作機で、とんでもねえじゃじゃ馬仕様だ。訓練無しで乗れるような代物じゃないし、乗るはずだったパイロットは、ついさっき天に召された」
そう言い捨ててちらりと後方を振り向き、胸元で十字を切る。
視線の先には何も見えないけれど、そのずっと向こうには数分前に戦車砲の直撃を受けたジープの残骸が転がっていることを私は知ってる。合流直後に吹き飛ばされたから。
「でも、じゃじゃ馬仕様つってもザクはザクでしょ! 私も何度か乗ったことあるんで!」
ザクには何度か乗った、といっても本当に動かしてみた程度だけど。ならず者共とはいえ公国の兵士だ、モビルスーツに乗れませんでは話にならない。まあ、大半がならず者でしかなかったため、適性のない者も多く、結局は戦車しか宛がわれなかったわけだけど。
「こう見えても実力は部隊で1番なんで!」
これも嘘ではない。ものすごく出来のいい中での1番とカスのゴミ捨て場での1番では、天と地の差があるのもまた事実ではあるけれど。

「やるだけやらせてみるか。いいか、お前が失敗したら、俺はそれを囮にして逃げる」
「上手くいったら?」
「その時は、とっておきのウィスキーで乾杯だ!」

座席の後ろのドアを開き、トレーラーの荷台へと移り渡る。
そこに寝転んでいたのは確かにザクだ。でも中尉の言った通り、妙な仕上がりになった見た目からしてキワモノじみたじゃじゃ馬だ。
背中に積んだ馬鹿でかい推進器、さらに背面両端に外付けされた巨大な筒のような1対の、おそらく推進器の類。そして腰にぶら下げた、戦車相手には大振り過ぎる巨大な戦斧。
なるほど、確かにじゃじゃ馬だ。
装備からしてこの歪な一つ目は、限界まで加速させて弾丸のように放たれ、敵陣に真っ先に単騎で突っ込んで、一気に敵機、出来れば司令塔を戦斧で両断する特攻仕様。
「で、ぶった切れるだけぶった切ったら、急いで帰ってくると……」
どうやら中尉の部隊は実験部隊らしい。地上での兵器の試験、それを進行がてらやってしまえ、ということなのだろう。ほんと、思い切りのいい奴は、いつだってやることが早い。マルチタスクもお手の物だ。
「どうだ、やれるか?」
「やるしかないんでしょ! やりますよ、やったろうじゃないのさ」
ここで噛み殺されるくらいなら一か八かでも戦ってみせるしかない。いつだってそうしてきたし、これからもきっとそうするしかないのだ。
緊張で流れる額の汗を拭いながらハッチを開き、操縦桿を握り、一つ目の瞳を光らせた。


じゃじゃ馬は文字通りのじゃじゃ馬だった。いや、じゃじゃ馬どころか、凶暴な猟犬、そんな感じだ。
ボディーブローみたいな加速で戦車の射程外から砲弾が放たれる前に飛び込み、体当たりの要領でヒートホークを擦り抜け様に振るって力づくで斬り倒す。
その後はどうにか体勢を立て直して、再びバーニアとブースドポッドに火を入れて突撃を繰り返す。
戦う姿はイカレた狂犬そのもの。一つ目の自慢の銃器も持ってはいるが、原始的で野蛮な戦いが似合ってるし、妙にしっくりくる。

対照的に銃器に特化した、実に文明的な機体がハンス中尉のMS‐05。中尉曰く、試験段階の狙撃銃型の指向性のビーム兵器を地上に持ち込んで、無理矢理モビルスーツに搭載したもの。実弾に比べて発射間隔が長く、しかも結構な大食いで、機能のほとんどを狙撃に費やしているせいで、明日明後日の方向に頻繁に向き直らなきゃいけない近距離戦には向いてない。
けれど今みたいに誰かの後ろに陣取れば、私の撃ち漏らした敵を掃除する賢い猟犬に早変わりだ。


「ジーナ軍曹! 3時方向、小型の地上艦、いや、陸戦艇か!? よくわからんが1隻!」
「マジかよ、もうちょっとなのに……」
荒野の向こうから砂煙を上げて近づいてくる小型の陸戦艇。ビッグトレーと名付けられた連邦軍ご自慢の陸戦艇、それをそのままサイズダウンさせたような形状のそれは、私たちを大砲の射程圏内に捕らえたと思いきや、次々と生き残りの戦車の上半分を吹き飛ばした。
「おやおや、こんなところでザクが2機、さてはお前ら、はぐれ部隊だな?」
ミニトレーとでも呼ぶべき陸戦艇から降りてきたのは、ジオンの上級将校用の軍服を身の纏った女だった。服装からして尉官ではなく佐官クラス、階級はわからないけど、少なくともこの場では最も偉いのは確かだ。
「まあ、俺たちもそうなんですがね」
「ちょうど連邦の陸戦艇奪ってきたところで、こうやって出くわしたってわけよ」
ミニトレーの装甲の隙間から複数の一つ目の巨人が姿を覗かせる。どうやら彼らがジオンの軍人で、どこかの部隊で、連邦に鹵獲されでもしてない限りは事実のようだ。
「よし、お前ら、とりあえず私の部隊に加われ。ザク2機にパイロットがふたり、収穫としては充分過ぎるくらいだ」
佐官の女がギロリとした目を光らせる。さっきまで犬のように敵に噛みついておいて、こう例えるのもどうかと思うけど、なんていうか躾の悪い猛犬みたいな眼だ。

「了解しました! 自分はヘルハウンド複合空挺部隊のハンス・グレイロック中尉、こっちはケーナイン隊のジーナ軍曹! これより貴下の部隊に編入致します!」
「私はダリア・ブラッドレー少佐である。臨時編成部隊、そうだな、ケルベロス隊でもと名付けようか。ケルベロス隊の指揮を執らせてもらう」

こうして私、ジーナ・マスティフは、馴染みのない地球の、当てのない荒野のど真ん中で、それぞれ訳ありのはぐれ者の3部隊を合わせた臨時編成部隊の一員となったのだった。


(続く、ただし気が向けば)


ガンダムです。ガンダムの二次創作です。
ちょうど今、なぜか無限の時間を持て余してるので今更ながらGジェネレーションジェネシスをやってるのですが、せっかくなんでプレイ記でも書いてみようかな等と思い、でもこうこうこんな感じで攻略しましたなんて書いても正直細かく覚えてないし、メモ取りながら遊ぶのもなんか違うし、ということで思い切ってifストーリー的な小説にしてしまおうとですね。
私、小説ちょっとだけ書けちゃうもので。

というわけで、まずは初期編成としてマイキャラたちの紹介がてら、こんなの出ましたけど。

Gジェネシリーズは難易度がかなり低いので、普通に遊ぶと作業になって飽きがきてしまうので、ちょっと縛りプレイ的な要素を入れようと思いまして、

・ザク縛り
まず使えるユニットはザク系のみ、ただしザクⅢとか明らかに強いのは無しで。あとライノサラスやアプサラスみたいな頭部はザクですけど、という機体はどうしようか考え中。でも使うにしてもマスターユニットにはしないで出撃枠を喰らう感じで、ちょうどいいバランスになるかなあと。

・主人公(ジーナ)とハンスは乗り換え禁止
ジーナはザクⅡ(ドズル・ザビ専用機)に小説でも記したハイパー・ブースターとユニバーサルブースドポッドを装備した特別機、ハンスはザクⅠ・スナイパータイプに基本ずっと搭乗してもらおうかなと。
2番艦を購入後はハンスを2番隊のマスターにするので、それも割と縛りになるかなあと。
ジーナ機も当初普通にただのザクで進めようかなと思ったけど、それだと乗り換えない理由がないので、こんな風にしてみました。

・戦艦はミニトレーとジオン系戦艦のみ
ジオン系戦艦縛りにするといきなり詰んじゃうのでミニトレーで。ミニトレーちっちゃくて好きなので。
宇宙以外は基本ミニトレー+ジオン系陸上艦ないし空中艦みたいな感じにしようかなと。
どうしても空中じゃないと駄目なマップは裏でさらっと進めます。
(基本的にジオン視点のマップだけ書こうかなと)

みたいな感じで、ぬるめの縛りを入れつつやっていこうかなーと。

ただ私も飽きる時があるので、そもそもゲームが作業になったら途中でやめたりするかもしれないです。あと就職して忙しくなったらとかでも。
あまり続きは期待せずにお付き合いくださいませ。


飽きたら飽きたって言いますので!


現在の進捗状況
※最初に4人分のザクを揃えるためにガンダムの第1ステージを、お金とオプションパーツ入手とジーナ機設計のための百式を入手するためにDLCの稼ぎを2マップ、あと時系列的にイグルーの1話をクリアしてます。

黒が攻略済み。DLCは残り3つ含めてもうやらないかなあ、公式チートみたいなものだし。