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和菓子といえば練り切りですが…

和菓子屋で10年の修行を経て、お店を開いて6年目になります。

最近練り切りアート的なものが流行ってるのか、私が和菓子バカすぎてそれしか目に入ってないのかはわかりませんが、練り切りの講師みたいな資格とかあったりして今こんなのあるんだ!!と驚きなんですけど…

練り切りとは?

練り切りとは餅粉を水で練って湯がいてあんこ(主に白あん)と混ぜ合わせるとできます。餅粉はつなぎなのであんこを細工できるようにするために入れるという感じです。

最近はこの練り切り生地も売ってるのかな?あんこと餅粉さえあればできます。

あとは色つけて中にあんこ(またあんこ!?主にこしあんです)を包んで細工すれば色んな形を楽しむことができます。

↓こんなのとか

ふぐですよ

初めて見た時は京都だったんで、上のふぐのような実写的でなく抽象的なデザインでなにこれ?と思ってしまうようなものばかりでした。

職人さんにこれは?と聞くと線一本で色んなものを表現している。これは枝で木全体を表しているんだよみたいな説明を受けて「うわああああ素敵!!なんて芸術的なんだろう!!」と感動しました。

ただ線一本だけなのに!!こういう風に見れるようになるのかなぁ!?とやっぱり練り切りは特別感がありました。

左のようなイメージ

ちなみにこの上のはお干菓子なんですけど左のようなイメージの練り切りでした。これは雪景色をイメージして作りました。わかるかな?

ついでに真ん中はゆず、右は薄氷をイメージしてます。想像してみてください。

茶道とかやってると割とこういうの出てくるので知ってる人はわかるんだけど、知らない人だとなにこれ?ってなります。

私もなにこれ?でしたから最初は。だんだんと定型な形があったり、職人独自の創造性だったり、実写化だったり色んな表現方法があるんですけど、個人的にはこういうシンプルな抽象的なものが1番好きです。

なにこれ!?って言われるやつ。

お客さんにはやっぱりふぐのような実写的なやつがわかりやすいので喜ばれます。

ちゃんとわかってもらった方が美味しさも上がるしかわいいーってなる方が気分も良くなりますから。

トラウマな品評会

全国あちこちに職人さんが集ってお菓子の研究会的なものがあるんですよ。

そこでベテラン職人さんが修行中の子のお菓子の作品とか見て点数つけたりするんです。

私もやってたんですけど5つ盛りといって素材の違うお菓子を5個作るんですけど、色とか形とか全体のバランスをみて点数つけるんです。

5つってたとえば練り切り、外郎、羊羹、雪平、錦玉など組み合わせるんです。

練り切りは必須でしたね。

これ初めて出したやつ…

上のような感じです。お店から行かせてもらえるので、下手なものを作らせるわけにはいかない!!と先輩達にこういうのはどうでしょう?みたいな感じで見てもらうんです。

先輩達は賞をもらったりした人もいてすごく熱く教えてくれるんですけど、点数とか興味ない私は自由に作りたいなあと思ってました。

点数つけてたんだ?と後で知ったくらい。

仕事終わると作品作りするんですけど夜まで。先輩達も私に賞を取らせようと仕事終わったあとでも教えてくれたりダメ出ししてくれたりするんですけど、当日になって全部やり直し!とか言われたりと下手なものを出させないために厳しかったですね。

一年は頑張ろうと思ってやってたんですけど、日中ハードな仕事してる時でも作品何作るか考えてたり、くたくたで早く寝たいけど頑張って夜まで作っては次の日ダメと却下されたりで、なんか作るのやだな…って思ってきて。

9ヶ月目で挫折しました笑

もう無理です…って言って先輩もまたやりたくなったら言ってね!って熱心に教えてくれたのに申し訳ない。

点数付けてる職人さんもいいとこまでいってるのに!!なんで辞めるんだ!?もったいない!!って言ってたけど、これ以上やってたら夜逃げしますよ…。(当時住み込みでした)

唯一最後まで頑張れなかったことでしたけどもう当時はほんとに逃げたかった。

いや結局逃げたんですけど。

逃げたら追いかけてきた?

まあこんなこともありつつ、大福屋さんやるし上生菓子(練り切りなどのお菓子)なんて作る事もないなーと思ってお店オープンする時に茶道の活動してる方から上生菓子作れない?って話があって…えっ?

いや、大福屋なんで。と断ったんですよ一回。

そこを何とか〜と言われ、まあきっとそのうちやっぱりいいわってなるかもしれないし…とはや6年になってしまいました笑

逃げたからなの?追いかけてきたの?やっぱり逃げたらダメだったの!?

ということで今もこの方の注文作ってます…

ちなみにお店では練り切りなどの上生菓子の販売はありません。

クリスマスとか年末年始とかイベントの時だけ販売してます。

逃げたと思わないために

茶道の上生菓子もほぼお任せなので自由にやらせてもらえてます。

年に一回小学校でお菓子教室みたいなのにも駆り出されてます。

いや、もう解放してぇーと言いたいんですけど、逃げたんで一回。また追いかけてくるかもしれないんで頑張ってやってます。

今は自由なんで楽しく作らせてもらってますけど、たまにふとトラウマが蘇ることもあり逃げたっていうのはやっぱり後々引きずるものなんだな…と。

なので逃げるのは悪くないけど納得して辞めるのとはまた違うので、自分で逃げたと思ってる限りずっと付きまとうからできるだけ向き合ってから解放するようにした方がいいなと思います。

タイトル回収すると和菓子といえば練り切りなんですけど、芸術的で可愛くて、美味しい。唯一和菓子の中で華やかさが表現できるものでもある。

そんな和菓子の代表選手的な練り切りもわたしにはほろ苦い思い出の甘くないお菓子なんです…。

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