2023/11/25放送 多田慎也 project 「Apple Pop」(エフエム青森)のKANさん特集 シンガーソングライターであり、作詞家・作曲家、音楽プロデューサーとして、多くのミュージシャンやアイドルに楽曲を提供されている多田慎也さん。 2018年より青森県弘前市に移住し、青森で暮らしながら音楽活動を行っています。
ピアノマンの多田慎也さんにとって、KANさんはファンであるとともに、とても大きな影響を受けた存在だったそう。 青森でレギュラーを担当されているラジオ番組「多田慎也 project Apple Pop」(エフエム青森)、金曜「らじすく!エア」(RAB青森放送ラジオ)で、それぞれKANさんの特集をなさっていました。
2023年11月25日放送「多田慎也 project Apple Pop」では、 「KANさんにお会いすることは叶わなかったものの、KANさんの音楽から、作曲のイロハを教えていただいた」「これからもKANさんの背中を追い続けていきたい」と、KANさんへの多大なリスペクトを込めて、特集をなさっていました。 KANさんのファンである多田さんは、皆さんにあまり知られていない名曲を取り上げたい気持ちをグッとこらえて、皆さんになじみのある曲の中から「言えずの I LOVE YOU」「Songwriter」「愛は勝つ」 の3曲をピックアップし、曲の構成やコード進行について、ピアノを弾きながら解説されていました。 以下、番組でお話されていたことを抜粋します。 (読みやすいようにリライトしております。音楽の専門性の高いお話でしたので、私の解釈が誤っているところがあるかもしれません。ご了承ください)
●「言えずの I LOVE YOU」 ・初めて聞いたとき、サビの流れるようなメロディがなんて美しい曲だろうと思った。 ・この曲について特筆すべきはベースライン。KANさんの曲は、べースラインが美しいのが特長だと思っている。この曲のベースは半音進行(半音ずつ下がっていく)。ベースラインが安定し規則的だと、メロディと歌に集中できる。 ・トップライン(メロディ、歌や歌詞)を大事にされてきたKANさんの気持ちが何よりも表れているんじゃないかと推測される。●「Songwriter」 ・多田さんにとって「すごく勇気を与えてくれた曲」。 ・確か夜中の番組だったと思う。あるテレビ番組で、KANさんがつかつかと現れて、ピアノを弾き倒して、歌い倒して帰っていった番組があった。その日は、とても攻撃的に豪快にピアノを弾いているように見えた。 ・自分(多田さん)が音楽を続けていくか迷っているときだった。 「♪I'm a songwiter ピアノをたたき 繰り返す表現のみが唯一存在の意義です」という歌詞に心を打たれた。 「これしかないんだから 僕はこれをやるんだよ みんなはどう?」と言っているように感じた。 ・振り切った男の姿、漢気、潔さを感じて涙が止まらなかった。こういう生き方をしたいと思った。さわやかに聞こえるが、とてもロックなスピリットに満ちた歌だと思う。●「愛は勝つ」 ・昔からこの曲を「自分のバイブル」だと公言しているという多田さん。 ・雑誌や番組などで、コード進行や音楽理論がすばらしい曲として、必ず「愛は勝つ」をピックアップしていた。 ・まずはイントロ。「言えずの…」同様、ベースラインは半音進行。半音進行によって美しさと壮大さが表現され、大きな物語を想起させるイントロになっている。 そしてトップラインの正直すぎるフレーズ。インパクトがすごい。 「ライブで何度も体感しているけど、このイントロが流れた時の会場の盛り上がりはロックフェスのようだった」 ・歌に入ると、今度はベースラインが1音ずつ下がっていく。コード進行はカノン進行。曲を通じてカノン進行がずっと繰り返されている。 ・ところがBメロ「♪Carry on Carry out」のところで転調になる。この転調は聞いていてとても自然に感じると思う。 ・曲の中で調が変わるということは、世界観が変わるということ。しかし「愛は勝つ」の転調は自然で、強いインパクトを持たせずに世界観を変えている。その原因のひとつは、ベース進行がほとんど同じであることだと思う。Aメロに引き続きBメロもカノン進行で、調(キー)だけが変わっている。世界観が少しずれたかな?くらいに思わせる転調。KANさんはあくまでも効果として転調を使っていると思う。 ・「♪ Oh… もう一度夢見よう 愛されるよろこびを知っているのなら Oh…」この最後のOh…でまた転調する。とても丁寧に。 ・この曲の構成はAメロ→Bメロ→サビ(Aメロの派生なのでA’とする)として、AからB、Bからサビ(A’)に行く度に転調をしている。さらに大サビでも転調と、曲中にものすごくたくさん転調をしている(全部で5回)。このくらい世界が変わっているのに変に感じるところがなく、統一感を持たせながら、キーだけを変えている。ここがKANさんのすごいところ。
2023/11/25放送「多田慎也 project Apple Pop」 (エフエム青森)より 多田さんは、 「KANさんの残してくれた曲はずっとある。本当はもっと聞きたかったけど…勝手に先生としてお手本にさせていただきました。これからもKANさんの背中を追いかけていきたい」と、KANさんへの思いを述べて番組を締めくくりました。
KANさん特集に対する感想 多田さんの、KANさんへの大きな愛情と尊敬が伝わった放送でした。 中でも、「言えずの I LOVE YOU」「愛は勝つ」へのかなり詳細な音楽分析に対し、「Songwriter」に関しては、KANさんの曲に込めた生き様に共感していて、そのことに自分もとても共感しました。
多田慎也さんにも、「Songwriter」という楽曲があります。 この曲を初めて聞いたとき、KANさんの「Songwriter」と通じるところがある曲だなと感じていました。 今回の放送で、多田さんがKANさんのファンであったこと、そしてKANさんの曲を愛し、助けられ、KANさんの楽曲を教科書として曲作りをされていることがわかり、KANさんと多田さんの「Songwriter」が一本の線でつながった気がして、自分の中でとても腑に落ちました。
後日、この特集への感想を番組にメールを送ったところ、12月16日放送回で、多田さんに「僕と同じ意見だったので…」とメールを読んでいただきました。 2つの「Songwriter」について、自分の思いをまとめることができたと思うので、送ったメールを以下に掲載します。
(以下、2023年12月16日放送「Apple pop」(エフエム青森)で読んでいただいたメール) こんにちは。 多田さんの番組に、初めてメールします。 (私は坂本サトルさんの番組のリスナーで、サトルさんの番組以外にメールを送るのは初めてです) 2023年11月25日放送の、KANさんの特集を聞きました。 KANさんは自分にとって、とても大切なミュージシャンで、アルバムは全部持っていて、ライブも見に行っていました。 多田さんの、KANさんへの多大なリスペクトが伝わる放送を聞いて、気持ちが救われたような気がしました。 ありがとうございました。 なかでも、多田さんが「大切な曲」といってくださった「Songwriter」、私もKANさんの曲の中で一番好きな曲です。 多田さんの同名の曲「Songwriter」をラジオで聞いたとき(イベント「HOMETOWN MUSIC LIFE」でも聞きました)、 KANさんの曲に込めた思いと同じものを感じていたので、多田さんのこの曲に対する思いが聞けて、良かったです。 「Songwriter」が収録された「アイノウタ」のCDは、通販で購入しました。 KANさんの「Songwriter」は、詞曲ともにビリージョエルの「The Entertainer」の影響を受けていると公言されており、 KANさん曰く「ソングライターの苦悩、的なものを描いた」曲、とのことです。 力強いピアノのイントロから始まり、後半はストリングスが広がりを感じさせるアレンジで、一見壮大でさわやかな世界を歌っているように聞こえますが、過去の恋や純情など自分の過去をすべて掘り起こして「歌」にするという、ソングライターの性(さが)や、ソングライターとしての生きざま、覚悟を歌っているように感じます。 KANさんがこの曲をテレビで紹介しているとき、「これから同業を目指す人たちにとっては、きつい事をかいてしまった」と仰っていた記憶があります。 多田さんも仰っていましたが、最後のフレーズ 「♪I'm a songwiter ピアノをたたき 繰り返す表現のみが唯一存在の意義です」 に、私も特に心をつかまれ、何度も繰り返し聞きました。 そして聞くたびにいつも胸が熱くなります。 多田さんの「Songwriter」も、冒頭 「♪希望を探しているSongwriter 何だって歌に書いていく 終わった恋も ケンカした友達も」と、 人生の経験をなんでも歌にしてしまうというソングライターのエゴを赤裸々に明かし、また、 「♪寂しくて泣いて 追いかけた坂道 またメロディー”だけ”が浮かんだ」 「♪哀れなSongwriter」と、 ソングライターとして生きていくというのはこういうことだという、ヘビィな一面や、多田さんの覚悟、正直さ、生き様が感じられるようです。 しかし、多田さんの楽曲は、ラスト、哀れなSongwriterは 「坂道をのぼった」 と、それでもこの道を進んでいくという決意、一筋の光、希望に向かって歩んでいるようにも思え、この一行に私は救いを感じます。 私にとって、多田さんの「Songwriter」も大好きな曲で、とても大切な曲です。 これからも、機会があれば、KANさんの楽曲を紹介してください。 待ってます。 ラジオネーム まめきち43号
多田さんは、メールを読んでくださったあと、KANさんの「Songwriter」をかけてくださいました。 多田慎也さんによるKANさんの楽曲特集、これからもぜひ聞いてみたいです。
■KAN/Songwriter(1997年)
■多田慎也/Songwriter(2023年EP「アイノウタ」c/w)