第六夜

ゲームの新作を考えていた。使い慣らされたキャラクター、配色、設定、内容を打破するべく頭を悩ませていたが中々思いつかない。どれだけアイディアを練っても、あり物になってしまいそうで気後れしてしまう。無くなっていく創造性に恐れている。

今日は連休の真ん中、人通りが多く忙しそうな駅を横目に手元のメモに目を通す。電車が忙しそうに動く。発車の際に鳴る音は金切り声だったとしたら大層心が痛む。

思い切ったアイディアを出すべきか、今までのシリーズを踏襲したものが良いのか分からない。大好きなはずのゲームがこんなに難しいものなんて。

来世はスーパーキノコに生まれ変わりたいと思っていた。決められた人生、決められた役目。果たせば終わる、その人生。キノコに人生とは遣わないかもしれない。しかし、羨ましい。創造性が無くても生きていかれるのだから。

なんて、思いながらスーパーキノコが創造性を爆発させてしまったらと想像を膨らます。


のこのこ キノコ どんなキノコ?
ぽーんとでてきた  スーパーキノコ
大きくなれるよ どんどこと

のこのこ キノコ どんなキノコ?
ぽーんとでてきた トンデモキノコ
紫だから どくっぽいよね

のこのこ キノコ どんなキノコ?
ぽーんとでてきた フワフワキノコ
わたあめみたいな 味はしないよ

のこのこ キノコ どんなキノコ?
ぽーんとでてきた ピコピコキノコ
きんきゅうじには サイレンもならすよ

のこのこ キノコ どんなキノコ?
ぽーんとでてきた パンパカキノコ
いつでもパーティ ばっちこい

のこのこ キノコ どんなキノコ?
ぽーんとでてきた シマシマキノコ
サバンナだって へっちゃらさ

そうだ、キノコをブロックにセットしよう。そんなゲームを作り出そう。きっと楽しいぞ、大発明。


最初にスーパーキノコを考えた人は、世界的なモチーフになることを考えていたのだろうか。そんなものが生まれる瞬間とはどんな時だろう。思いを馳せると少しだけ寂しくなった。

1人ではこの発明に勝てない。1人ではきっと、僕から離れられない。手元のメモと頭を抱えて、ミーティングボタンを押した。少し困惑した同僚の顔が出てくる。話していたら、きっとこの先残る大発明になる。確信できる。

散々話し込んだ後、眠りについた。深い深い呼吸をすると落ち着く。秒針が五月蝿くて堪らない。秒針を掴みながら眠ったら、深く深く眠れた。

翌朝、僕は狭い狭い箱に入っていた。ああ、短き人生。