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一度死んだから言えること!

◎そして処置室へ

特化型病院に着くなり、全身白ずくめの医者と思われる男性6名が、玄関前にずらりと列をなして出迎えました。私はストレッチャーに乗ったまま車を降ろされ、その人たちに丁重に引き渡されました。

そのまま処置室へ直行し、血中酸素濃度を測るや否や、ドラマのワンシーンのように身に着けていた服をハサミでチョキチョキと切り裂かれ、術着のようなものを上からかけられました。

「やばい!これからどうなるの!?」と心の中で叫びました。

怖いけれど、興味津々な私は、頭を起こして周りを眺めると、先ほどのドクターたちが声を掛けながら忙しく動いていました。何とも言えない緊張感が場を支配していきます。そして、突如として全員が一斉に消え、処置室に静寂が漂いました。

そこで一人の医師が戻ってきて、私にこう告げました。
医者「今から気管挿管をしますね。」
私「痛いのは嫌です」
医者「大丈夫です、麻酔を掛けますからね」
私「・・・・・・」

少し躊躇いましたが、有無を言わさず、白衣の医療スタッフたちは気管挿管の準備と麻酔の準備に取り掛かりました。そして、あっという間に準備が整い、麻酔のマスクが私の口に当てられ、麻酔医のカウントダウンが始まりました。

麻酔医「5,4,3・・・・・」

私の覚えていたのは、ここまででした。以前にも麻酔を受けて鼠経ヘルニアの緊急手術を経験したことがあるのですが、このような全身麻酔は驚くほど強力です。今回も試しに抵抗してみようと思い待ち構えましたが、意識が保たれたのはたったの3秒でした。今回もあっけなく負けたのです(笑)

さあ、ここからがこの物語の本題です。この時点で医師たちが血中酸素濃度の低下を把握していたものの、詳細情報は私や家族に一切伝えられなかったことです。まして付き添いも認められず最初の病院で自宅に帰されていたのです。

確かに命に係わる状態であったため仕方ない部分もありましたが、ゆあんさんにも「今から気管挿管しますので、しばらく話ができないと思います。何か伝えたいことはありますか?」とタブレットを通じて尋ねられた程度でした。

彼女曰く「しばらくって言ったけど一か月半にもなるなんて~」

こうして、私の"生死をかけた治療"が始まりました。そして、これは家族との絆に満ちた物語の始まりでもあるのです。

次回は"深い水の底から"です。







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