真美

事務職ももう十年目。関東の隅っこで事務職として働かせていただいております。 コーヒーと…

真美

事務職ももう十年目。関東の隅っこで事務職として働かせていただいております。 コーヒーと紅茶、物書きを趣味とするASD持ちの女子。 #コーヒー #紅茶 #小説 #エッセイ #恋愛小説

最近の記事

あなたは優しい。だから電話を切る。

あなたは優しい人だ。デートが終わってから私が寂しくて「バイバイ」と言えないときにあなたは「バイバイ、またね」と私よりも先に言ってくれた。そんな男は薄情だと友人に言われても私には薄情だと思えないんだ。楽しくて柔らかな時間の終わりを告げる「バイバイ」がどうしても私には言えない。だから、いずれ終わる楽しい時間の終止符を打つという汚れ役になるあなたは私には勇気のある優しい人だ。しかも、バイバイに「またね」を付けるその柔らかい気持ちがずるさも多少感じながらもまた会いたくなるんだ。 あ

    • 悪魔とワルツを 4.小粋なワナを仕掛けて

      永遠少年症候群(http://jushin.chu.jp/odai/)様から素敵なお題をいただきました。ありがとうございます。 神は私に味方した。 夏希さんが内定をいただいた電話を私のアルバイト先で聞いた。こんな千載一遇のチャンスは逃すわけにはいかない。アルバイト先の名刺の裏に私用の携帯電話番号を書いて渡した。 結果は弾けんばかりの笑顔。小声で「梅本さん、今日は仕事は何時に終わりますか。」女性にしては低い掠れたハスキーボイス。 ああ、下の名前で呼んでほしい。好きだと言

      • 悪魔とワルツを 3.もっとほしいの

        永遠少年症候群(http://jushin.chu.jp/odai/)様から素敵なお題をいただきました。ありがとうございます。 夏が終わり秋が来た。夏の初めに生まれたから夏希と名付けられた私はまた一つ年を取った。誕生日プレゼントといっても過言ではないが初めて正社員での営業職の内定をいただいた。研修を終えてからは一人でひたすら車を運転してお客様に保険の営業をしていく。獣は獲物を逃さない。この会社に食らいついてやるんだ。 休日は電源が落ちたかのように寝ている。そして考えるんだ

        • 悪魔とワルツを 2.睡魔におやすみ

          永遠少年症候群(http://jushin.chu.jp/)様から素敵なお題をいただきました。ありがとうございます。 「お疲れ様です。」梅本鈴花はバイト先のコーヒーチェーン店から退勤した。今日も暑いな。雨上がりのこともあり湿気が高く、ちょっとしんどい。 何がしんどいの? 思わず欲情してしまうからだ。 忘れられないのだ。昼休憩とは少しずれた時間に来店なされたお客様のこちらを見る大きな二重のキッと見開いた獣のような目。 目をそらしたら食べられてしまいそうなその目が頭から

        あなたは優しい。だから電話を切る。

          悪魔とワルツを 1.悪意なき悪事

          永遠少年症候群(http://jushin.chu.jp/)様から素敵なお題をいただきました。ありがとうございます。 暑いなぁ。 ほんとに暑い。 なんでこんなに暑いのに私はYシャツを着てストッキング着用の上のヒール付きのパンプスを履いてなきゃいけないんだろう。 足がむくんで靴の中で行き場を失い熱をもって痛みがほとばしる。 大磯夏希の顔は痛みと悲しみで歪んでいく。 それはマスク越しでもわかる。 地方のいわゆる中小企業の正社員にもなれなかった私には働くことすら許され

          悪魔とワルツを 1.悪意なき悪事

          発達障害者と電子マネーの蜜の関係

          今日も一日お疲れ様です。 ASD持ちの三十路もあと半分に差し掛かる兼業主婦です。 日々の食事の買い物でスーパーのレジで小銭がうまく出せずおたつくのが日常です。 クレジットカードやデビットカードを使えればよいのですが、いくら限度額を下げても管理ができないことが20代の10年間で心身ともに痛い目にあって悟りました。ええ。悟りましたとも。 それは障害の特性と性格から衝動性と計算ができないことによるものだと推測されます。 それでも小銭じゃらじゃらとの戦いは収束させたい。

          発達障害者と電子マネーの蜜の関係

          拝啓 愛しき君へ 5.腕の中にあった温度

          永遠少年症候群さま(http://jushin.chu.jp/)からお題をいただきました。素敵なお題をありがとうございます。 彼氏とか彼女とかで言い合える仲になったね。 いつもよりも長く過ごせる休日。悠人の一人暮らしの部屋に押しかける。そして私の定位置と化したソファーに座り、前日の仕事帰りにTSUTAYAに寄って選んだDVDを観る。 何度も見たミュージカルのDVD。あらすじも歌も覚えてしまった。だけど何回見ても心が揺さぶられ、私は思わず泣いてしまう。 そのたびに悠人

          拝啓 愛しき君へ 5.腕の中にあった温度

          障害者だってお金が欲しいんだ。それは大切な人と笑いあえる日々を過ごしたいから。

          #はたらくってなんだろう 私はASD持ちの障害者です。障害者手帳を取得し、障害者枠で事務補佐員として働いています。 公的年金を受給しているため公的補助を利用すれば生活はできます。 だったらなんで働くの? いくら否定されようとも大切な人と平等な関係下で生活していくためにお金が必要だからです。 お金を起点としてすべてが周っていきます。 生活の安定のため、そして、私の心の安定のためにまずはお金が必要です。 一番大きな理由は大切な人である夫にお金の負担をできるだけかけた

          障害者だってお金が欲しいんだ。それは大切な人と笑いあえる日々を過ごしたいから。

          拝啓 愛しき君へ 4.君を見上げるのが好き

          永遠少年症候群さま(http://jushin.chu.jp/)からお題をいただきました。素敵なお題をありがとうございます。 頭一個分背の高い君を見上げるのが好き。という少女漫画の主人公の気持ちを味わっている今日この頃。 好きな人に好きといってもらって好きな人を見つめて好きな人に見つめられている幸せを君は私にくれたね。 この幸せは痛くもある。なんでだろうね。幸せなんだよ。それはわかっているんだよ。 たぶんね、この幸せが日常になって普通になってちょっとしたひずみで壊れて

          拝啓 愛しき君へ 4.君を見上げるのが好き

          君は生きていていいんだよ 僕が無条件に君の存在を肯定するから

          「私って存在価値ゼロだよね。」 いつの時だっただろうかそれが私の口癖だった。 私は仕事で業務も人間関係も崩壊させるトラブルメーカーである。転職回数は数知れず。 今回こそ大丈夫と思った職場でも”また”やってしまった。 帰宅後は泣きながらトイレで吐き続けた。 次第に吐けなくなり真っ暗な部屋で着替えもせず布団にこもって泣いていた。家事をやらなきゃ。ご飯を作らなきゃ。洗濯機をセットして洗濯物をたたまなきゃ。やらなければならないことは分かっているけど涙が止まらない。 「こんな

          君は生きていていいんだよ 僕が無条件に君の存在を肯定するから

          拝啓 愛しき君へ 3.跪いての告白

          永遠少年症候群さま(http://jushin.chu.jp/)からお題をいただきました。素敵なお題をありがとうございます。 夢の中にいるようだ。泡がゆらん、ゆらんと浮遊しては弾けていく。 静かな夜が次第に更けていく。 そして思考の海に沈んでいく。初めて会った日から君は僕のすべてを奪った。 ありきたりだけどそれが初恋だった。 心が奪われていく。 君にしか見えない世界を僕は欲しかった。狂い惜しいほどの感情。君に触れたいけど拒絶されるのが怖かった。 騒がしい日に俺は

          拝啓 愛しき君へ 3.跪いての告白

          拝啓 愛しき君へ 2.キスしたいときはしゃがんでって言うから

          永遠少年症候群さま(http://jushin.chu.jp/)からお題をいただきました。 素敵なお題をありがとうございます。 全部分かり合いたいって思っているというのは恋人のエゴというものなのだろうか。 この複雑な感情に名前をどのようにつけようか。 気づいたこの思いはもう遅すぎるのかな。だからね、大切な気持ちこそ言語化させなければならない。すれ違う言葉にはもう傷つきたくない。だからこそ鈍感な彼氏に突きつける言葉はド直球でいこう。 未知なる世界に胸を高鳴らせる。私は

          拝啓 愛しき君へ 2.キスしたいときはしゃがんでって言うから

          拝啓 愛しき君へ 低身長からの告白

          永遠少年症候群さま(http://jushin.chu.jp/)からお題をいただきました。 素敵なお題をありがとうございます。 1.本当は首に腕を回したい 貴方が居場所を無くしたとしたら私が貴方の居場所になろう。 いつも一人でいる貴方が気になってしょうがないんだよ。人の輪の中で笑っていてもほんの少しだけ寂し気な貴方。そんな貴方が本当に心の底から笑っていているところが見たいんだ。だからね。だからね。私と一緒の時は作り笑いをしないでよ。困った笑い顔も厳禁だよ。 えっ。

          拝啓 愛しき君へ 低身長からの告白

          Change the World

          貴方は私の世界を変えてくれたね。 貴方は今、幸せですか? 私はずっといじめられて不登校だった中学校を卒業して高専に入学した。 世界が変わると思ったんだよ。 だけど高専でも私はいじめられて独りぼっちだった。 バスの時間待ちでよく寄った古本屋さんでは私は一人でも独りぼっちではなかった。 店内で流れるどこか懐かしい洋楽。 いつもだったら聞き流していたはずの音楽が私の意識を捉えた。 Elic Clapton 『Change the World』 手に星が届いたら

          Change the World

          「他人」ではない。「母」だから苦しいんだ。いまなお「母」の記憶に縛られる

          「私の娘なのになんでできないの」 実の母から繰り返し言われた呪詛。 私は算数が苦手だった。小学校で課された計算ドリルは大っ嫌いだった。 そのドリルやテストがバツ印ばかりで返却されると母は私を嘲った。 バツ印も嫌だったけれどそれ以上に嫌だったのはその母の態度だった。 得意だった国語や社会科でいくら頑張っても母の眉間にはしわが寄る。 「なんで算数を頑張らないの。なんで私の娘なのにそんなにできないの。私はやらなくてもできたのに。」 宿題の計算ドリルに挑もうとしてもでき

          「他人」ではない。「母」だから苦しいんだ。いまなお「母」の記憶に縛られる

          「ゆたかさ」という愛を探す

          #ゆたかさって何だろう 「愛する人と一口のパンがあればいい」 その人にとっては豊かさとは愛情と生命を維持する最低限のエネルギーのことだ。 または、 「世の中、金だ。」 その人にとっては豊かさはお金だ。 愛があっても食べていかねばならない。 そのためにはお金が必要だ。 だが、お金があっても愛を得ることの確約はできない。 また、愛は普遍的なものではない。 人は愛しては憎み、憎んでは愛していく。 それを繰り返しながら、愛をはぐくみ生きていく。 その愛の対象は

          「ゆたかさ」という愛を探す