見出し画像

マミの東京上京物語#6「鳥のフルコース」

まくら売り場に案内してもらい、ふと横を見ると相変わらず眩しい笑顔の店員さん。
売り場に案内してもらったので、店員さんはもうどこかへいってしまう。

だけど、もう少しだけ話していたい・・・・・・!
まくらだけでも一緒に選んでほしい。
一緒に選んだまくらを毎晩抱きしめながら、店員さんの笑顔を思い出させていただきたい・・・・・・!

そのときの私は、完全によこしまな気持ちで満ち溢れていました。
冷静を装い「どんなまくらがオススメですか?」と聞く私。

すると「羽根まくらがおすすめですよ」と店員さん。
よし、店員さんをこの場にうまく引き止めることができたぞ。

ん、ちょっとまてよ・・・・・・。
羽根まくら?

私の頭の中では、一瞬ハトの姿が思い浮かびました。
「羽って、むしり取られた鳥の羽がたくさん入っているのですか・・・?」
と思わず声にしてしまい、またもや店員さんを驚かせる始末。

「そんな意見をはじめて聞きました。先ほどお客様が購入されたのも羽毛布団ですよ・・・?」

なんと・・・・・・!
今まで考えたこともなかったけど、むしり取られた羽がたくさん入っているなんて。
考えれば考えるほど恐ろしい。

この思いを共感してもらいたかったけど、これ以上おかしな人と思われたくない。
もう言わないでおこうと心に決めました。

まくらだけでも、むしり取られた羽がつまっているのは避けよう。
そう思い、辺りを見渡したところ「羽」という文字ばかり。
すべて羽まくらじゃないか・・・・・・。

「店員さん、羽じゃないのは置いていないのですか・・・・・・」

「そうですね、ここには羽しかありませんね・・・・・・」

何か言いたそうな私に、店員さんはまくらを手にとって渡してくれました。

「羽根まくらは気持ちが良いですよ!僕もこれと同じのを使っているのですが、最高の寝心地ですよ!」

単純な私。
店員さんの一言で購入を決めました。

さっきまでのハトのイメージが、店員さんの背中についている天使のような羽のイメージに変わったのでした。
これで幸せな眠りにつける・・・・・・・。
でも、こんなに世の中に羽を使っているものが多いなんて知らなかった。
鳥が何羽いても足りないのでは・・・・・・?

そんなことを考えながらお会計を済ませ、店員さんに別れをつげました。
またどこかで会えたらいいな。

寂しい気持ちを抑えて歩く帰り道。
たくさんベッドで転がりまわったせいかお腹が空いていました。

なにか食べて帰ろう。

そういえば、家の近くに気になるお店があったな。
ふらっと立ち寄って気づいたのですが、ここは焼き鳥屋さんじゃないか・・・・・・。

いい香りにまけてついつい寄ってしまった。
羽の次はお肉か・・・・・・。

そんなことを考えながら、鶏肉を美味しく頬張ったのでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?