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「希望通りにしない」ことが、プロの仕事だった[92/100]

子どもを産んだ後から、美容室難民だった。
我が家の周りにも素敵な美容室があるにも関わらず、なぜだかしっくりくるところが見つかない。すごく悪いわけではないのだけど…何でだろう、私の髪質がわるいのかな、などと考えて、半ば諦めていた。

同僚から「美容室難民なら、ここ行ってみて」と勧められて行った美容室に通いはじめてもう2年経った。
それで、これまで通い続けられなかった理由が分かった。

何だかしっくりこない美容師の人たちは、「私が言ったとおりやりすぎていた」のだった。
「こんな感じで」と見せたイメージ画像や、「これくらい」と伝えた髪の長さ。
でもそれは、切った瞬間は良いのだけれど、自分では再現できない。朝、めちゃくちゃ時間がかかる。しかも、1ヶ月もするとどうしても崩れてくる。

ただ、子育て&仕事をしている身としては、朝に自分の髪型にかけられる時間は3分ほどが理想だ。
5分も10分もかけるのはつらすぎる。美容室だって、できれば3ヶ月に1回くらいが理想だ。
私はとても癖毛だから、それも加味して髪型を決めて欲しい。
それを叶えてくれたのが、今の美容師さんだった。

私が「こうしたい」と言った時の、その先にある本当の「負」を解決してくれた。私の好みも理解してくれているので、見せたはずの理想の画像とは乖離していても、私にとってはベストな髪型にしてくれた。

その美容室が家から遠いので、1度だけ浮気して家の近くの美容室に行った。そしてイメージ画像を見せたところ、その通りにしてくれた。ただ、そのおかげで、そのあと半年ほど髪型が気に入らなくて、伸びるまでがつらかった。セットの時間もかかってしまった。

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私が勤めている転職支援会社は、広告費を一切かけていない。口コミで来てくれるご相談者が途切れないからだ。

「転職がしたい」というご相談者に対して、まずやることは、「どんな人生にしたいのか」「楽しいと感じる時はどんな時か」とか「大切にしている事は」などの深掘りだ。それらを聞いて、言語化を手伝ったうえで、転職の希望を聞いていく。
だから、ご相談にきた方が最初に言った希望の方向性とは違う方向の転職先に、最後は落ち着く事もある。
でも「希望通りになった」と言って、知り合いに広めてくださる。自分がまた転職を考えた時にも、キャリアの相談に来てくれる。
結果、広告費がいらないビジネスモデルが構築できている。

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自分のことは自分が一番分かっている…というのは半分本当だけど、半分は嘘だ。

だから、目の前の希望を聞きつつも、その先にある「本当に叶えたいこと」を汲んでくれて、プロとして接してくれることが満足に繋がるのだ。

口に出している言葉だけでなく、その先にあるその人の言いたいことを汲んで、その人の言いたかったことを表現できるプロのライターに、私はなりたい。

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