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舞台「HIDEYOSHI」 #7 脚本制作裏話

こんにちは。
作・演出鈴木茉美です。


舞台「HIDEYOSHI」、12月10日、無事全ての公演終えることができました。
ご来場・ご視聴ありがとうございました。


展示会まで、裏話や何か話したいなと思ったことを書いてけたらと思います。

今回は、脚本上にあるセリフなどから脚本制作過程での思いつくままをいくつかお話しできたらと思います。


歴史との距離感

藤吉「歴史って何?勉強する意味あんの?」

舞台「HIDEYOSHI」脚本

日本の歴史が関係する脚本書いといてなんですが、私は長い間歴史に興味が持てなくて。
どうしても、学校の教科書の範囲を出れなかったんですね。
文系だったので受験の一科目でしかなかったですし、侍とか刀とかどうしても物騒な感じが好きじゃなかった。
なんで戦ってんの?話し合いじゃ解決しないの?よくわかんないよって感じでした。
人間そんなんしないといけませんかね?とひねくれた向き合い方をしていたので、その中で年号や単語だけを覚える作業が意味がわかんなくて。
本当かどうかわからないことは勿論教科書に載せられないのでしょうし、全ての歴史を入れることも踏まえると、事実だけ、事件だけ、名前だけ、年号と単語とかになるのはしょうがないとは思うんですが。
当時私にはそこからドラマを想像する力とモチベーションがなかったんですね。

大河ドラマも少し前まではどうしても馴染めなくて。
正しいかもわからない想像の人間ドラマ見せられましても・・・と、まあかなりひねくれてますね。苦笑

こういう仕事をするようになって、歴史も勉強しなきゃだよなーと少しずつ調べ、色々な書籍や資料を読み進めていくうちに、ようやく年号や単語が人間の心や生活になって、人として見られるようになりました。
大河ドラマも楽しめるようになりました。笑
なるほどその解釈ねーっと。

なのでこの藤吉の台詞は、私の学生時代のまんまの感想でした。


源内と玄白の哲学

玄白「時間の無駄は困るな」
源内「ああ何事も効率的にいきたいものだ。時間を味方につけること、さすれば 
  我々はいくらでも新しい発見をすることができるのだ」
玄白「全くもってその通りだ。何事も極めようとすれば限界なんてないのだからな」

舞台「HIDEYOSHI」脚本

脚本の台詞というのは、作家の哲学である箇所も多いと思いますが、今回脚色するにあたって、その部分を加筆したこともいくつかあります。
いくつかありますが、最初に目についたのでこちらを。
こちらは加筆した箇所ですね。
再演前は、玄白の「時間の無駄は困るな」まででした。

源内と玄白の知的好奇心には、私の哲学がふんだんに入っている気がします。
好奇心旺盛で知りたい気持ちが強い、そのために効率よく情報をインプットしまくる。
この効率よくというのは難しいところで、彼らや私は効率よくと思っているのですが、実際一つの事柄を調べるのに効率よくとはなかなかいかないもので。
書籍を一冊読み情報をインプットすることのために一日費やすことが効率良いと思っているわけです。
効率いいんだかわからないです。
ですが寄り道をしていないという点では効率が良いという解釈ですね。
何事も極めようとすれば限界はないわけです。
自分が納得するまで情報をインプットする、彼らには私のそういう部分を膨らませた役割を担ってもらいました。

同じく津山もそういうわけですが・・・津山に関しては今までの台詞とあまり変更していません。


時空間装置の移動

玄白「時空間移動装置は人の細胞を細分化する」

舞台「HIDEYOSHI」脚本

これは、私の好きな映画の一つ、「タイムライン」の構造をいただきました。
タイムラインも同じく過去に行く話です。
興味があったらぜひ見てみてください。

おねの哲学

おね「今その偉い人を、決めるため皆戦っているのです」
藤吉「……」
おね「その戦いに、勝利をおさめた者が、天下を取った者が、これからの日本
  の未来を決めるのです」
藤吉「天下を取った者が、未来を決める」
おね「私がただ願うのは、戦のない世。いつまでも、桜を見ることのできる平
  和な国」
 桜吹雪
藤吉「……」
おね「人は生まれ、死ぬ。短い命もありましょう。桜のように、あっとゆう間
  に散りゆくこともありましょう。されど、立派に、立派に生きるのです」

舞台「HIDEYOSHI」


おねの哲学は、源内・玄白と違って、その時代の、この立場の、女性の哲学を想像しました。
戦国時代のこの立場の女性の覚悟はどれほどのものなのでしょう。
たくさんの人を背負い、命を背負い、国を背負っている。
その背負っている覚悟をこの言葉の裏に見せたいんだと、あっこさん(おね役原田章子さん)にお話しさせていただき、表現してもらいました。


信長とおねのセリフの中に

おね「大義のために尽くすのです。一歩一歩着実に積み重ねれば、予想以上の
  結果が得られましょう」

信長「良いかサル。負けると思えば負ける。勝つと思えば勝つ。例え負けが見
  える戦でも、勝つと申せば勝機は見えるものよ」

舞台「HIDEYOSHI」脚本

時代考証を調べる中で、秀吉の言葉というのがいくつか残っていました。
上記二つはそのうちの一部です。
今回加筆するにあたって、彼の言葉を入れたいなと思いました。
ただ、藤吉が自分で導き出すというよりも、戦国時代の人たちに与えてもらいたいなと、おねと信長にその役割を担ってもらいました。

他にも、他の戦国時代の人物が実際に言ったとされる台詞も使わせていただいています。

佐奈の手袋

村井「あ、そうだこれ」
藤吉「これ、佐奈の」
村井「置いていけるもの、他にないから」
藤吉「ありがとう。……てかこれ、指が六本になってんだけど」
村井「佐奈らしいな(笑)」

舞台「HIDEYOSHI」脚本

佐奈が何ヶ月も掛けて制作した手袋。
6本指になっていたという佐奈のドジっ子的要素が垣間見えるシーンです。

この6本指にしたのには理由があります。

歴史に詳しい方でしたら知っている方もいると思います。
秀吉が、実は指が6本あったという説ですね。

その説を何か使えないかなと思い、佐奈のドジっ子という形で表現させていただきました。
おそらくHIDEYOSHIの秀吉は、あれからあの手袋を何度もはめて、それを誰かが見て、6本指説を伝えていったのでしょう。

ちなみに源内・玄白は、村井が藤吉に手袋を渡すシーンで「ああだから6本指説ができたのか」という表情をしてもらっていました。



いかがでしたでしょうか。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

次回もまた何か話したいなと思います。
よろしくお願い致します。



舞台「HIDEYOSHI」展示会

公式HP:http://allen-co.com/hideyoshi2023-exhibition/

舞台上でのパネル、衣装や小道具、私の脚本一部など展示予定です。
パネルは販売もします。

■日程
展示日程:2024年1月23日(火)〜28日(日)
展示時間:10:00~19:00
入場時間:(1部)10:00~13:00
     (2部)13:20~16:00
(3部)16:20~19:00
※28日のみ展示時間が10:00~16:00になっております。
※本展示会は時間入れ替え制で行わせていただきます。

■会場
大泉学園ゆめりあホール7階 ギャラリー
〒178-0063 東京都練馬区東大泉1-29-1

(アクセス)
西武池袋線の大泉学園駅北口から徒歩1分


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