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舞台「大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫-」 #5 演出・脚本の話

こんにちは。

作・演出の鈴木茉美です。
ろまたん展が始まっていますね。
ご来場いただいている方もいらっしゃると思います。
私は仕込みの時小道具の展示監修を少しと脚本一部の展示をしてきました。

相変わらずゆめりあ素敵な空間です。
エミオが改装中なのは残念でしたが、ロフトもできるみたいだし、次もし展示会があったら行けるかな〜なんて気の早い気持ちにもなったりして。

美味しいお店もたくさんあるので、もし行く予定の人はぜひ調べてみてください^^


さて。
本日は、演出・脚本についてお話できればと思います。



オープニングについて


オープニングは毎回どういうコンセプトにしようか考えます。

ろまたんでは、出演キャラクターが出てきて歩きまわるのを東堂たちが観察するというのが多いです。

今回も、同じように出演キャラクターを歩かせようと思いました。
それを東堂が観察していく・・・ではなく、興味なく通り過ぎていくにしました。
今回は東堂が人との壁を閉じていることから始まるのでオープニングでは観察する意思を無くしました。

そのあと、一人一人のキャラクター紹介が始まります。
これを東堂を絡ませて、東堂が一人一人と出会っていくようにしました。
東堂はオープニング中動き回っている感じになりますね。

余談ですが、この振り付け、通し前にオープニング振付の時間を作ってやったのでですが、最初、東堂の動きだけ東堂役の竹中凌平にバーっと説明しまして、そのあと他のキャストさんに入ってもらいました。
凌平は、他のキャストさんに振付している間に頭を整理し、短時間でオープニングの動きをマスターしてくれました。
覚えるの早くてびっくりしました。


映像さんには、ここでこの文字を入れたいという指示以外お任せしましたが、大正時代っぽさとかっこよさが融合されてとてもおしゃれな映像を作ってくれました。

二重構造

西宮「オペラの魔笛、ご存知ですか?」
東堂「いいえ」
西宮「魔法の笛に導かれた王子タミーノが、数々の試練を乗り越え、夜の女王の
       娘パミーナと結ばれる恋のお話と、夜の世界を支配する女王が昼の世界を
      支配するザラストロに倒されるという二重構造のお話です」
南条「二重構造」

舞台「大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫-」 脚本

このセリフは、東堂探偵事務所に西宮愛里が依頼しに来た時の台詞です。

ここでは、オペラの魔笛は二重構造の脚本になっているという話になっています。
これは、今作の「エデンの歌姫」の脚本も、二重構造になっているという意味でもあります。

①東堂解が自分と向き合いながら事件を解決していく

という話と、

②秘密結社エデンが時間を逆行しながら解体していく

という話です。

今までのろまたん作品では②のような構造をそこまで描いてきませんでした。
今回は、東堂が人と向き合っていくという話を作る際に、それと対になるものを何かやりたいなと思い、エデンの人たちをしっかりと描こうと思いこのようにしました。
時間を逆再生していくことで、一人一人の人物を段々とより深く感じてもらえるといいなと思いました。


木崎が渡したお菓子

木崎「ああそうだ、これを渡そうと思っていたんです」
沼井「なんです?」
木崎「最近入ってきた海外のお菓子です、美味かったのでお裾分けをと。洋菓子、
       お好きでしたよね」

舞台「大正浪漫探偵譚-エデン歌姫-」 脚本

木崎が沼井にお菓子を渡しました。
小さな箱です。
輸入されてきた輸入菓子。

これは一体何だったのか?

これは、中に紙が入っていました。
木崎から沼井へ、しっかりやりなさいよいうような内容です。
以前も話しましたが、同じ思想を持って始まった二人の関係は、時間が経つにつれ変化していきました。
木崎は政府に入り、日本を壊さなければ変えられないという思考に。
沼井は、組織を守ろうとする重圧を抱えると同時に情を捨てきれません。
木崎は、沼井の弱さや脆さがエデンを壊すと危ぶんでいます。
なので、それを注意喚起したわけですね。

実はこれ、稽古が始まる前の脚本では、逆でした。
沼井が木崎にお菓子の箱を渡す設定だったんです。
これは、沼井が木崎に手助けを頼むという意味の流れでした。
稽古が進むにつれて、沼井と木崎の思想が別れていく中で、逆の方がいいなと役者さんたちと話し合って変わったのでした。

通りゃんせ

西宮「♪とおりゃんせ とおりゃんせ ここはどこの ほそみちじゃ
  てんじんさまの ほそみちじゃ ちっととおして くだしゃんせ
  ごようのないもの とおしゃせぬ このこのななつの おいわいに
  おふだをおさめに まいります いきはよいよい かえりはこわい
  こわいながらも とおりゃんせ とおりゃんせ 」

舞台「大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫-」 脚本

昔から、この曲のインパクトすごくなかったですか?
「行きはよいよい 帰りはこわい」
なにそのホラー。私だけかな?

昔から童謡は好きで、好きあらば使いたいなーと思っています。
それで今回この歌を使いたいなーと思って、きちんと調べてみたところ、
「怖い」ではなく「疲れる」っていう方言の説もあると知り、
ああこれはいいかもしれないなと。

子供のことを歌っているし、てんじんさまというフレーズも含め、
今作に合っているなと思い、使わせていただきました。

童謡ってとても奥が深いです。
いつかいろんな童謡の歴史を調べてみたいな。


オペラ

今回、オペラを使っています。
魔笛ですね。
魔笛はあとから考えたもので、オペラを何かしら使いたいと思っていました。

ろまたんでいつかやってみたい中に、パイプオルガンを置いて生演奏で歌に関連する作品をやりたいという壮大な目標があります。
ここだけの話。

なので歌に関連する作品をやりたいはずっとあったんです。
今回やるなら、オペラに挑戦してみたいなと。
大正時代という時代背景と、荘厳な感じを考えたときに、オペラが思いついたんです。
オペラを歌っている中で殺陣がやれたらいいなーと思いやってみることにしました。
まさにゴッドファーザー3の世界のような。
あの空気が少しでも作れたらいいなと。

でも歌合せが難しいかなとずっと懸念事項でした。
魔笛を切り取って、殺陣の秒数に合わせられるように編集したら面白いかもなと何となくは思っていました。
殺陣を曲に合わせると言うよりは、曲の方を、魔笛と殺陣曲とを交互に繋ぎ合わせて編集して殺陣に合わせようと思っていたんです。

稽古で殺陣がついて、では一回魔笛と合わせてみようと。
大殺陣の中、西宮役のあまねにフルバージョンでまずは歌ってもらったんです。

最後東堂の掌底で林を打ち、林が倒れるところ周辺で歌がちょうど終わりました。
これは少し時間調整したらちょうど行けるかもしれないと、早速殺陣振付の横山さん指導の元その場で秒数を調整しました。
役者も感覚としてここでこうしたら行けると感じることができ、
二回目でぴたりと合うことでができました。
東堂の掌底で林が倒れて歌が終わったんですね。
その場にいた皆スタッフ含め思わず拍手。
一体感を感じました。

これはそのまま使おう。と。
魔笛フルバージョンで殺陣をやることになったのでした。


劇場との一体感


アフタートークでお話しさせていただいたりもしましたが、
私は劇場と作品の一体感を本当に大事にしたいと思っております。

劇場見学に行き、細部まで観察します。
使っている色や素材、雰囲気、空気。
お客様がロビーから劇場に入ってきて感じる空気、出ていく時の動線、そのとき目につく可能性のあるもの。

今回はやはり、出ていく時に見えるのサイコロ。
あれを見て、トリックに必ずサイコロを入れようと思いました。
そうして出来上がったのが、沼井がサイコロを振って殺し方を決めるという設定でした。

今後も劇場との一体感を大事にしていきたいと思っています。


今作でやりたかったこと


オペラや二重構造などあらかた話しましたが、今回軸として一番やりたかったことは、出会いと解体です。
その上で重要になったのが、組織の解体を描くことです。


ゴッド・ファーザーを見て、(私は1が一番好きなのですが、)ヴィトー・コルレオーネの最後のシーンが好きで。

あ、見ていない人にネタバレにならない程度に話します。

あの最後のなんとも感傷的な雰囲気が好きで。
あの雰囲気ができないかなと思い、沼井を軸に、(ろまたんなので事件を絡め、)その中で起こる組織の解体を描こうと思いました。


しかし、ただ頭から見せていくのでは脚本のギミックとして足りないなと。
そうだ、イ・チャンドンの「ペパーミント・キャンディー」のようなギミックだったら最後の絵が美しいなと。人物を少しずつ深く見ていけるのではと。
そうして時間軸が巻き戻っていく形になりました。

そして、そうなってくると、犯人が最初からわかっていたほうがいいなと。
東堂との対決を思わせていこうと、「刑事コロンボ」の手法を用いました。
最初に犯人がわかった状態で始まるあれですね。


秘密結社に関してはこれまた書籍以外でも映画などで知識を得たりもしましたが、上記の三作品が今作を書く上でとても影響を受けております。
役者さんたちにも共有しました。


余談ですが、映画は好きです。
父が無類の映画好きで、小さい頃はVHSが家に1000本以上あったり、DVDの時代になってからも山のようにDVDがあり、暇さえあれば映画を見ているような人だったので、映画を見るということが私の中で遠いものではなく、今では私も時間があれば映画を見ています。そんなに多くはないですが。



さて。

演出・脚本の話、どうだったでしょうか?

まだまだ出てきそうですが、思いついたままに話してみました。

次はなにを話せるかな。
まだまだろまたんの世界を楽しんでいただければ幸いです。

お時間あればぜひ展示会も行ってみてください。
30日は2部でトークショー、3部でサイン会にも参加しますので、よろしければぜひお話いたしましょう。

✼ 舞台『大正浪漫探偵譚』展示会 ✼
■日程■
展示日程:2023年8月26日(土)〜31日(木)
 ※30日2部では上野役の林田麻里さんとトークショー
     3部ではサイン会をやらせていただきます
展示時間:10:00~19:20
入場時間:(1部)10:00~13:00  
     (2部)13:20~16:20
     (3部)16:20~19:20
 ※31日のみ展示時間が10:00~16:00になっております。
■会場■
大泉学園ゆめりあホール7階 ギャラリー
■チケット■
前売り/当日券:1,000円(税込)
■特設サイト■


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