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フランス大使館でコニャック地方のウイスキーを知る!!

 9月5日の火曜日に南麻布にあるフランス大使館に行ってきた。フランス・コニャック地方でウイスキー造りをしているフォンダガード蒸留所の創立者2人がやってきていて、日本のウイスキー市場について話を聞きたいということであった。以前TWSCの際にお世話になったこともあり、さらにフランスにはすでにウイスキーを造る蒸留所が100か所近くあると聞いていたので、フレンチウイスキーについても、機会があるたびに話を聞いたり、取材をするようにしている。

 フォンダガードは初めて聞く蒸留所で、『モルトウイスキーイヤーブック』にも載っていない蒸留所だったので、事前知識がまったくない。リチャードさんとエイドリアンさんに会うのも初めて。しかし話を聞くにつれ、非常に興味深いことが分かってきた。まずエイドリアンさんはコニャック地方で5代続くコニャックの造り手、グランシェール家の人間で、父からメゾンを継いだ時に、コニャック造りの傍ら、ウイスキー造りをすることを考えたという。

 リチャードさんは元レミーマルタンにいた人間で、2人はニューヨークで出会ったという。グランシェール家はプティットシャンパーニュ地方に畑を持つ農家兼コニャックの造り手で、自分のところで発酵、蒸留を行い、シェ(熟成庫)で独自に熟成も行っている。ただし、製品として出しているのではなく、オードヴィーの状態(3年以下)でクルボワジェ、レミーマルタン、そしてヘネシーといった5大メゾンに原酒を提供しているのだ。

 コニャックを前に取材したことがあるが、それは2016年10月のことだった。その時にグランシェール家のような農家がコニャック地方に2000以上あることを知った。ブドウの栽培だけだったら5000を超えるという。とにかく、そういう農家は自分たちで製品化はしない。今は5大メゾンと契約を結び、そこの専属になったりしているのだ。コニャックはもちろんAOCで、蒸留は昔ながらのシャラント型スチルで2回蒸留と定められている。それも初留も再留もたしか容量2500リットル以下と決められていたはずで(初留はその後1万リットルが上限になっている)、しかもどちらもガスの直火蒸留が義務づけられている。さらに蒸留してよいのはブドウの収穫から翌年の3月31日まで。つまり、それを過ぎたら、AOCコニャックは造れないことになる。

 グランシェール家はシャラント型スチルを初留・再留合計10基保有しているというからこの手の農家としてはかなり大きいほう。おそらく最大級かもしれない。樽詰めしてから3年まではフレンチオークを使って熟成させるが、製品となるわけではない。4月以降、サイレントとなってしまうスチルを使って、他のスピリッツ、ウイスキーを蒸留したとしても、なんら不思議はない。ところが、このグランシェール家のフォンタガードがコニャック地方でウイスキーを造る唯一の蒸留所だという。

 もちろんコニャックはブドウを収穫してそれを家に運び、そして発酵させて、蒸留すればよい。しかしウイスキーは穀物が原料。フォンダガードで使うのは、もちろん二条大麦だ。それはなんとコニャック地方産だという。実はコニャック地方はフランスでも有名な大麦どころだという。大麦は冬大麦で夏は菜の花やヒマワリ畑になるそうだ。それを地元の製麦業者に麦芽にしてもらい、蒸留所に持っていく。その仕込み用のマッシュタン、ロイタータンはドイツのビールメーカーの中古を買ってきたという。銅製の古めかしいタンクで、こんな物を使うところは、他にはないだろう。同じようなものをアイルランドのグレートノーザン蒸留所で見たことがあるが、そこではそれをスチルに改造していた。

 それはともかく、フォンタガードではそれを使って糖化・濾過を行い、コニャックを造るシャラント型アランビックスチルで2回蒸留をして、ニューポットを造るのだ。ニューポットの原酒は72%。まずはフレンチオークの樽にそのまま詰め、その後4~5か月かけて徐々に加水をして度数を落としてゆく。それがコニャックの伝統手法で、それをフォンダガードではウイスキーにも応用しているのだ。

 フォンダガードの定番シングルモルトは3種。コニャック樽、ピノデシャラント樽、そしてソーテルヌ樽だ。コニャック樽、ソーテルヌ樽は分かるが、ピノデシャラント樽は、よほどのフランス好き、コニャック好きでいないと馴染みがないかもしれない。これは甘口の酒精強化ワインで、コニャックで酒精強化していて、コニャックではポピュラーなお酒である。それに使っていた樽で寝かせたものが、フォンダガードのピノデシャラント樽なのだ。

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