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おいかけて 初恋③

ⅲ.バラードコレクション

年末に、埼玉に行った。
どうしても辛抱たまらなくなって、
彼の大学や、住んでいたところを見てみたくなったのだ。

大宮駅に着いた時からもう泣く。

大学までの電車や、バス乗り場にも胸がドキドキした。

背の高い彼が、すぅーっと立って
バスを待つ姿の幻影が、ほんとに見えた

緑の多い街を、大学までのこの道を、彼は何百回往復したのかな。

美しい楽曲は、彼の日常の延長上にあるわけで。
その青春を思う時、胸がギュッとなってしまう。

その街で私はずっと バラードコレクションを抱きしめていた。
 
夜は別の街へ。彼が最後まで住んでいた街。

普通の住宅街に、突然でっかい建物が現れるところが好き、と言っていたお気に入りの街。

彼が居た場所に時間に身を浸して
感激と寂しさで 私は眠れなかった。

帰りの新幹線に間に合うように 早めにホテルを出て駅に向かう

通路のお洒落なタイルがスーツケースのタイヤにいちいち引っ掛かる

名残惜しい私みたいに なかなか前に進めない

その時 ラインが入る
「何時の新幹線ですか?
 まだ〇〇の建物はありますか?」

神戸の、彼のお母さんからだった。

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