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黒沢明とロス・プリモス『ヒット・ハイライト』(ビクター SJV-483)


みなさん腕組みポーズで一点を見つめております

 最近ようやくムード歌謡というものが沁みてくるようになりました。「ラブユー東京」でおなじみの黒沢明とロス・プリモスのアルバムです。1966年のデビュー以来所属していたクラウンレコードを離れ、移籍したビクターからおそらく1970年ごろに出たアルバムになります。この「ヒット・ハイライト」というタイトルがクセ者で、なんだただのベストアルバムかと思ってスルーしていると、その時期の音源がまとまって収録されたオリジナル・アルバムだったりします。ビクターだとほかに「ベスト・ヒット」というタイトルがつけられがち。これもオリジナル・アルバムであることが多いので注意が必要です。当時はアルバムの扱いなんてそんなもの。シングル曲がまとめて聴ければそれでいいという認識だったのでしょう。

 内容ですが、ビクター移籍第1弾シングル「夜霧のインペリアル・ロード/恋のにがさも知りました」から、(この間に古巣のクラウンからのシングル2枚のリリースを挟んで、)橋本淳&筒美京平コンビによる2枚目「ヘッド・ライト/女みずいろ」、3枚目「夜のブルース/悲しみは雨のように」、4枚目「ばかなわたし/恋は秘めごと」、5枚目「うたがわないで/アカシヤ並木に雨が降る」までのAB面10曲と、「銀座物語」「恋のイロいろ」の2曲を加えた12曲入り。筒美京平から鈴木道明渡久地政信彩木雅夫、そして珍しく作曲もしているなかにし礼など、作家陣は多岐にわたっておりますが、すべてまったりとしたムード歌謡で統一されています。心地よいので飽きるというよりはずっと浸っていたくなる感じ。逆に言うと1曲1曲の印象が薄くなってしまうわけなんですが……

やけにアバンギャルドな裏ジャケットのデザイン

 ただ、「夜のブルース」の歌詞カードには「ドゥビドゥビドゥビ シャバダバァ」と都合4回も歌詞カードに書かれていて、ひときわ異質なムードを醸し出しておりました。どんだけ異質かって、歌詞カードを拡大した写真をアップしようと思いましたが、1曲丸ごとはマズかろうということでやめました。それからおそらくこの盤にしか入っていないシングル未収録曲の「恋のイロいろ」は橋本淳&筒美京平コンビのソフトロックで、それだけでも良い収穫になりました。ちなみに最近レコードも置くようになったブックオフで350円。普通の中古レコード屋には並ばなそうなレコードが二束三文で置いてあるからいいですね。おかげでムード歌謡や演歌、歌謡インストものなど、普段はあえて沼すぎて手を出さずにいたジャンルに飲み込まれてしまいそうです。

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