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不登校とメタバース


2学期が始まり早2ヶ月、あちこちで運動会が開催されていますね。
全国の、学校に行きたくても行けていない子たちはどんな風に過ごしているんだろう、と顔も知らない子どもたちのことを思って書いています。



いわゆる「不登校」と言われる子どもの数は2021年19万人いると言われています。
病気や経済的理由、新型コロナ感染回避など長期欠席を含めると約29万人だそうです。


昨年度、臨時で担任をやっていた学校の校長先生は、理想ばかり高い私ともていねいに時間をとって教育談義をしてくださり、いくつかおすすめの本も紹介していただきました。

その中でも、不登校を保護者視点で社会に問題提起してきた奥地恵子さん著の『明るい不登校』という本は、「登校拒否(不登校)」の歴史を知ることもでき、親として教育者として社会の一員として考えさせられる内容でした。

奥地恵子さんは不登校の駆け込み寺とも言われた『東京シューレ』設立者で、元小学校の教員であり自身のお子さんが不登校だった経験を持つ方です。

奥地さんが「親の会」を運営している中でよく耳にしたのが、

親が子どもに「休んでいいよ」と言っただけで、子どもが明るくなった

というエピソードでした。

不登校を認めることから明るい人生につながる、という思いが『明るい不登校』というタイトルに込められています。

根強い学校信仰


奥地さんが立ち上げたフリースクールは、不登校で悩む親子や公立の学校に馴染めない子どもたちが集まり、自分の居場所を見つけていました。

しかし、外部からは「子どもたちが成長して出ていく社会もまた、学校的な精神や仕組みを内面化している。やはり学校的なものに馴染んだ人こそが社会でもやっていけるのでは?」とよく指摘されたそうです。

ひと口に「不登校」と言っても、さまざまな生活や家庭の状況、子どもたちの願いがあると思います。

不登校の辛さから引きこもりになり、心の病気になったり、家族が苦しんだりする状態は未然に防ぐべきだと思いますが、
学校に行かない=将来がダメになる、という学校信仰は払拭しなければならないと思います。

むしろ、「学校に行っていないからダメだ」という暗示が子どもたちの自尊心を傷つけ、子どもたちが本来持っている興味・関心やチャレンジする勇気なども奪っている可能性さえあります。


いまだに「義務教育」を勘違いしている人がいる


日本の憲法で子どもに保障されているのは「権利」です。

ーすべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける
  権利を有する。
ー2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさ
   せる義務を負う。義務教育はこれを無償とする。
日本国憲法第26条

憲法第26条の理念を生かすために教育基本法や学校教育法が定められました。
行政はそれを学校設置義務として満たし、親には教育を受けさせる義務を果たす「就学義務」が設定されました。

自分の子どもが学校で教育を受けられるように、親が手続きや環境を整えているが、子どもが行けない(行かない)不登校状態は、親の就学義務違反にはあたりません。


子どもと制度のミスマッチ


現代の公立学校がここから大きな変革を遂げたとしても、色々な状況や個性があり、学校へ行かない子、行けない子は存在して当然だといえます。

不登校数が50年にわたって増加し続けた現実を踏まえると、問題のある子どもや家庭
が増え続けたとも考えにくいし、問題のある学校が増え続けたとも考えにくい。
これは、子どもたちと「子どものため」として作られた学校制度のあいだにミスマッチが
生じていることによる問題であり、それを生じさせている社会の問題なのだと考える
必要があるー
『明るい不登校』

日本もこの先、教育の選択肢が増えて、子どもたちが学ぶ場を選べる時代がやってくるだろうと期待していますが
今現在は、子どもたちが抱えているストレスや社会に出て求められていることと、日本の教育制度が合っていないということは事実だと思います。

メタバース上に学校


NPO法人カタリバが新型コロナウイルスの流行をきっかけに、オンラインの不登校支援を始めていました。
カタリバさんが創った不登校支援プログラム『room-K』はメタバース上に学校を作り、その中で子どもたちが自由に時間を過ごしています。

現在、埼玉県の戸田市と連携して公立学校で導入している『room-K』。
学校と、親と、メタバースを繋ぐコーディネーターがいて、自分のカリキュラムを伴走してくれる年の近いメンターもいるそうです。

自分で時間割を作る子もいれば、room-K内で人と繋がるだけの子もいる。
それぞれのペースで自分のありたい姿に向かって頑張っているそうです。

不登校を支援する民間サービスは数あれど、
カタリバさんがやっているroom-Kは自治体と協力して実施している点が素晴らしいなぁと思います。

どの子どもにどんな手立てやサービスが合うかは分からない。
でも少なくとも親の情報リテラシーの問題など、こういうサービスにたどり着けない親子と出会うために、行政との連携は意義あるものになるなと思います。

どうしたいか、は子どもによって違う


私が個人的に考えていた喫緊の課題は、学校に行っていない子どもたちの居場所づくりでした。
公教育が変わるのを待っていては自分の子どもは大きくなってしまう。子どもの成長は待ってくれないからです。

しかし、居場所を設置しただけでは、外に一歩も出れない子どもや
物理的に居場所が遠くて行けないという子どもにはアプローチできません。

カタリバさんのやっているroom-Kのようなハードルの低い場で、
何がいやでどうしたいか
本当は行きたいのか行きたくないのか
自分の気持ちを確かめることから始めるのが大切だと思います。

コーディネーターさんやメンターさんに相談したり、プログラムをきっかけに親と改めて話をしたり・・ということが可能になるので
子どもの気持ちを丁寧に理解するためにも、オンラインでのアプローチは第一歩としてとても有効だなと思いました。


やっぱり公立学校も改善してほしい


友達とリアルに会えて、体を動かして遊んだり、恋愛したり、バカやったり
オンラインと代替可能ではないところを求めたり、そこに楽しさや充実さを感じる子どもたちも大勢いると思います。

不登校に関しての理解はまだ不十分ではあるかもしれないけど、そろそろ「理解しよう」というところから「行動」に移ってほしいと思います。

多様な学びにも税金を投入してほしいし、
不登校の親子への経済的な支援もほしい。

学校は、教員側の子ども観をもう一度考え直したり、
一斉授業がどうなのかとか
もっと体験を中心とした学習にしていくにはどうするかとか
目的から外れた校則をやめようとか
議論してどんどん改善していってほしいです。

そのためには教員の働く環境の改善も必要だと思います。
先生方はみんな忙しいので、考える時間も議論する時間もないかもしれません。

子どもたちがキラキラした子ども時代を過ごせますように。

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