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コンピュータで動くおもちゃづくり

コンピュータで動くおもちゃづくりワークショップを続けて、18年になります。
大学の授業でワークショップの話をしたときに、「あっ、子どもの時にやりました」という学生さんに出会うと感激ともに、長く続けてきたんだなあと実感します。

私自身がこのワークショップが好きなのが、何よりこのワークショップを続けている理由です。最近はmicro:bitや、より低年齢の子どもにもコンピュータで動くおもちゃづくりワークショップを体験してもらえるように開発したProgrammable Batteryを使うこともありますが、マサチューセッツ工科大学メディアラボが開発した「Cricket」をずっと使っています。CricketはLEGO®から発売されているMINDSTORMSシリーズの原型になったProgramable Bricksのあとに、MITメディアラボが開発したものです。Cricketのあとに開発されたのが、Scratchになります。

どうしても男の子がロボットを好んでつくることが多かったProgrammable BricksとLEGO MINDSTORMSをみて、女の子にも楽しんでもらえるように、小型で色々なものと組み合わせることができるようにCricketは開発されています。Cricketを使ったコンピュータで動くおもちゃづくりワークショップは、Cricketにモータやセンサをつないで、ブロックや工作材料と組み合わせて、コンピュータでプログラムをつくって動かしてみる、こんなワークショップです。

子どもの頃に大好きだったテレビ番組「できるかな」のなかで、ノッポさんが身の回りにある空き箱や材料を使ってつくる作品に憧れて、おもちゃをつくっていたこと、ブロック玩具で戦隊シリーズのロボットをつくっていたこと、そんな子ども時代の楽しかったつくる思い出が、私にとっての、このワークショップの原風景です。身近で簡単な手作りおもちゃづくりに、コンピュータというテクノロジを埋め込んで、おもちゃづくりをより面白いものにしていきます。

コンピュータでアイデアを飛躍させる

パーソナルコンピュータの父と呼ばれているAlan Kay博士は、コンピュータをメタメディアと表現します。コンピュータはメディアであると同時に、メディアを作り出すことができるメディアでもあることを意味しています。またLogoの研究開発に長く携わり、Cricketの開発者でもあるBrian Silvermanさんは、コンピュータを使ったものづくりについて「少しのプログラミングで遠い場所にたどり着けるのです。ちょうどジェットエンジンに助けられるように(引用:Martinez,S.L., Stagger, G.著、阿部和広監訳:つくることで学ぶ)」 と表現しています。手作りおもちゃにコンピュータを載せることで、子どもたちの作品は飛躍的に面白いものになっていきます。コンピュータを載せたおもちゃは、単なるおもちゃではなく、おもちゃの形をしてはいますが、子どもたちは何かを伝えるための媒介(メディア)としてつくっているのかもしれません。

身近な存在、あって当たり前の存在としてのコンピュータ

コンピュータで動くおもちゃづくりは、名前だけ聞くと「何をつくるのだろう?」と思われる方も多いと思いますが、ワークショップに参加する子どもにとってはイメージがしやすいようです。確かに子どもたちが遊んでいるおもちゃの多くは、電池をつかって動き、光り、そして音が鳴ります。そして、多くの場合それらを埋め込まれたコンピュータで制御しています。さらにゲーム機もタブレットもスマホも身近にあって、そのなかで育ってきた子どもたちとって、コンピュータで動くものはあって当たり前の存在かもしれません。Alan Kay博士は、本当の意味でのコンピュータ革命はコンピュータがあるなかで育ってきた子どもたちにしか起こせないといっています。既存のコンピュータの使い方の多くは、従来あったものの延長でしかなく(私は今、コンピュータを使ってこの文章を書いていますが、紙とペンが便利になっただけとも考えることができます)、まったく新しいコンピュータの持つ可能性をコンピュータに囲まれて育った子どもたちが生み出すというものです。

そんな子どもたちのお手伝いができればなあと思いつつ、ワークショップで生み出される子どもたちのコンピュータで動く不思議なおもちゃを見るのが私の密かな楽しみです。

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